講演.困難な意思決定のためのTOC
How to make impossible dicisions?
講演.困難な意思決定のためのTOC How to make impossible dicisions?
アラン・バーナード博士は、故エリヤフ・ゴールドラット博士の右腕としてABB、TATA等の大規模かつ困難なプロジェクトを完遂してこられた世界を代表するTOCのスペシャリストです。2017年には直近の重要な成果であるマイクロソフト社での事例をご紹介いただきました。
今回は、アラン博士が長年取り組んできた「意思決定」に関して講演をいただきます。
昨年のTOCシンポジウムのプレセミナー「思考プロセス『クラウド』基礎」で、通常のクラウドは、「目標を共有しているにもかかわらず解決が困難な『持続的なジレンマ』『意見の対立』の解消」に極めて有効であるものの、困難かつ一回限りの意思決定には十分ではないことをご紹介しました。
アラン博士は、この困難かつ一回限りの意思決定のための思考プロセス「プロコン・クラウド」を開発されました。詳しく解説していただきます。
ある選択肢は非常に大きな効果があるが、一方で大きなデメリットも懸念される状態。
意思決定に興味を持ったきっかけ
ゴールドラットリサーチラボでは優れた人たちが誤った意思決定をしまうのかを研究している。よく起こるのが誰かの責任にすること。悪い意思決定は、悪い仮定によって引き起こされている。
プロコンクラウドを用いて、厳しい意思決定のしかたを解説する。
人は一日に35000回意思決定される。ほとんどは無意識に意思決定している。無自覚に意思決定されている。
意思決定していると思っていても、半自動モードな意思決定している。
ほとんどの意思決定は重要ではないが、いちぶの意思決定は非常に重要である。
成功と失敗を左右するような意思決定がある。
プロコンクラウドを用いて適切な意思決定ができることを紹介していきたい。
アランのストーリー
小学生のころ幸せだった。IQテストを受けら、親友とともにギフテッドと言われ、新しい学校に転校することになった。その後、成績が上がり始めた。親友はある日、校長に呼ばれ、IQテストが間違いであったと言われた。親友の成績は下がっていった。
私は非常に興味をもった。天才と言われると成績があがり、天才でないと言われると成績が下がる。首席で学校を卒業し、エンジニアリングの学校に入った。自信があったのでA+の成績が取れるだろうと考えたし、親も先生にも期待された。ところが最低の成績、最低のDクラスだった。
高い期待をもたれたのに、実際はそうでなかった。嫌な気持ちで、落ち込んだ。この後、成績は急激に落ち始めた。祖父は私を信じていて。ヘンリーフォードの本を渡された。本には「あなたができると信じていても、あなたができないと信じていても、あなたは正しい」という一文が書いてあった。
親友に起きたことを思い出した。優秀だと思われれば成績が上がり、そうでないと思われたら成績が下がった。
信じるときは、勇気が引き起こり、行動が伴った。
できないと思ったとき、できなくなる。
もう一度自分を信じることを始めた。そうしたらDクラスだった私は首席で卒業することができた。大学でも首席で卒業することができた。そしてゴールドラット博士と出会った(1992年)。
ゴールドラット博士とかちかえた目標:
人々の潜在能力を見出し、引き出すのを手助けする。自分達を制限する仮定または信念を見つけて、克服するのを手助けする。
シンプルな道具で思い込みを明らかにし、能力を開花させていきたいと思った。
固定観念を乗り越えることでどのような価値が生まれるか
固定観念を乗り越えた組織は大きな成果を上げることができる
マイクロソフトの事例
サプライチェーンの改善が必要だった。品切れによる機会損失が生まれると恐れていた。
間違いを解決するためにプロコンクラウドを開発し実行した。
在庫250億円分削減できた。サービスレベルでは5%、100億円以上の伸び実現できた。
制約理論とは何か
マネジメント理論としてのTOCは、なぜ「制約」が重要かつ有用であるかについての良い説明である。特により迅速な決定を下す必要がある人々にとって。
制約とは何か
リソース
仕事量をみたとき、あるものより求められるのほうが多いとき、制約がかかる。
複雑なシステムを見たとき、キャパシティより需要が高いとき、カオスな状況が引き起こされる。相互作用が起きている。
5つの意思決定
1.ゴール Goal 野心的かつ達成可能なゴールをどうやって設定するか
2.焦点 Forcus できることと背伸びをすることを同時に行う際、フォーカスが重要。どこに限られたリソースを集中して改善、投資をするのか。
3.インパクト impact ローカルな変更が、システムにどのようなインパクトを与えるのか? インパクトを見ることで、リソースの無駄遣いや利用効率性を見ることができる。
4.ルール Rule 全体最適のルールはどのようにすれば作れるのか。この意思決定は非常に難しい。局所的には悪い意思決定のように見えることが多い。
5.変更 change システムの中で制約が動いたら、ルールを変更する必要がある。制約が動いていないことの確認や、動いていることの確認が必要。ルールを変更するのはいつか、いつまでは変更してはならないか。
リサーチクエスチョン
・固定観念と幸福との関係は何か? (幸福 will-being)
・固定観念や思い込みをどのように身につけるか?
・どうすれば、これらに立ち向かって克服できるか?
科学は間違いを証明することはできるが、正しさを証明することはできない。
何が自分の助けになっているか、そうでないかを見極め始めた。
人前で話すこと
恥をかく
難しい
できると思えば試せばよい。
うまくいけば自分の助けになる。
失敗すれば自分には得意ではないことが分かる。
できないと思えばそもそも試そうとしない。
自分の思い込みが助けになるのか、損になるのかを考える必要がある。
幸福(will-being) vs 意思決定
幸福(well-beeng)
前向きな感情 P ポジティブエモーション 気分が良い
没頭 E エンゲージメント 仕事に没頭するほどフロー状態になり、幸福になる。没頭できない状態は退屈な状態。
関係性 R リレーション 自分や他人との関係性。
意義 M Mean 意義。意義ある仕事をする。他人を助ける仕事をする。
達成 A アチーブメント 達成感があると幸福を感じる。
自分達の限られた時間を何に用いるか。もし上記に関係しないことに投入すれば、損なわれてしまう。
私たちはどのように意思決定するか
システム1 95%
早く考える
システム2 5%
ゆっくりと考える
ほとんどの意思決定はシステム1で行われている。
自分が怒りに忘れたときを思い出すと、誰かの行動がきっかけではないか。ここで考えるスピードを落としてみる。
考えるスピードを落とすことが、難しい意思決定をする上で不可欠である。ただし意思決定が数日かかるようでは遅すぎる。
早く、的確な意思決定が私たちには必要である。
私たちの意思決定のボトルネックは何か。
ビンのボトルネックは常に上にある。
何が制約か
何が足りないのか
お金?
しかしお金があることで行動できないときもある
知恵?
情報がありすぎて行動できないことがある
時間?
勇気?
多くのことについて私たちの限られた注意を必要とする。
私たちの利用可能な注意力キャパシティは、重要よりもはるかに少ない。
私たちのボトルネックは限られた注意力である。
私たちは限られた注意力をどのように無駄遣いしているのか? なぜこのようなミスをしてしまうのか?
1.間違ったことをする -> 事前に分からない避けられない
2.正しいことをしない
3.正しいことを間違った方法で行う
4.上記を繰り返す(経験から学ばない)
2.3.4共通で避けられないこと
無知 私たちは知らなかった
別の人は知っているが、私は知らない->学べば良い
無知での失敗かを確かめる方法
教育する
行動が変わるかを観察する
教育で行動が変わらないのであれば下記2つの理由になる
惰性 私たちは知っていたが行動しなかった
惰性の克服
変える利益ではなく、変わることによる損失の恐れから変われない
不適切 私たちは行動したが、妥協した
不適切の克服
私たちは多くのことをする必要があり、気が散っている。
スマホをよく覗いたり…
ミスの多くは避けられるし、事前に分からないものは限られている。
無知、惰性、不適切を克服できる意思決定方法でなければならない。
多くの場合、知っていても悪いことが起きることがある。
悪いことが起きると分かっていても行動しなかった。または妥協した。
情報処理システムである現代の世界は、非常に多くのデータと情報の海の中を泳いでいるようなものです。このような世界では、稀少なリソースはデータでも情報でもありません。情報に対する処理能力です。組織が活動する場合、主なボトルネックは、注意力です。そして、そのボトルネックは組織の上層部へ行くほど、どんどん細くなります。
経営陣の限られた注意力が、会社の業績にどのような影響を与えるのでしょうか?
注意力の危機がもたらすもの
業務完了までの時間(生産性/信頼性)xリソースの忙しさ
1日分の仕事は1日で終わる。
100%の稼働率の場合、新たな仕事はいつまでも終わらない。
指数関数的に完了までの時間がかかるようになる。
50%の稼働率のとき、1日分の仕事は2日かかる。
75%の稼働率のとき、1日分の仕事は4日かかる。
75%程度であれば一週間以内に終わる。
80%は5日
90%は10日
95%は20日
99%は100日かかる
上記の状態であれば、納期の信頼性は非常に落ちる。
80~90%以上はカオス状態
80%~90%はカオスの境界
生産性はカオスの境界から大きく下がる
なぜ私たちの限られた注意力がボトルネックになるのか
ボトルネックは未処理(バックログ)を生む
未処理
↑
ボトルネック
↑
間違った判断
約束をしすぎる
仕事しすぎ
↑
間違った仮定
優先順位操作はバックログの長さを減らさない。
意思決定
すべきではないと分かっていることをする -> やめる
ずべきと分かっていることをしない -> する
多くの避けられる意思決定ミスの原因は、無知ではなく惰性と不適切。
これらを引き起こす仮定や思い込みをどのように見つけて対処できるのでしょうか。
要因
変わることによって得られるメリットとデメリット
メリットは小さいかもしれない
デメリットは大きいかもしれない
変わらないことによって得られるメリットとデメリット
メリットを失うことは大きいかもしれない
デメリットは脅威ではないかもしれない
Goal2を一枚にした(2回の思考プロセス)
早く
マイナス
表象の的確さの必要性が高く、難易度が高い
多属性効用分析(Multiattribute Utility Analysis)は多くの人はまともに活用できない。重み付けができないし、つけた重み付けに納得を得られない。
webapp
巨人の肩の上にたって
多くの意思決定は、直感的な意思決定後に、意思決定が正しかった証拠集めをしてしまっている。ProConは自分が意識を向けにくいメリット、またはデメリットに光を当てる。
ゴールドラット博士はProConの弱点を指摘した。変えるメリットデメリットは光を当てるが、変えないメリットデメリットは光が当たっていなかった。
クラウドに欠けること
変えることのマイナス面
変えないことのメリット
ProConCloud=Pro/Conリスト+チェンジマトリックス+クラウド
ProConCloudの5ステップ
・プロスペクト理論への対応策?
ステップ1.問題とその重要性を定義する
ステップ2.自分と相手の対立を定義する
多くの場合、一方の立場によりすぎている
誰かのせいにする(自責・他責)
ステップ3.4つのwinwinオプションで対立を解決する
一つの解決策に焦点を合わせる一般的な誤り
実行可能な4つの選択肢に気づかず、妥協するのを防ぐ
1.変える
変化しないメリットと、変化する短所を考える
2.変えない
変化するメリットと、変化しないデメリットを考える
3.いつ変わり、いつまで変わらないのか
意思決定が簡単になる条件をあげる
システムのサポート期限が切れる
iPhoneが壊れた
4.別の変化
金を手に入れるか入れないかではなく、別の欲しいものが得られないかを考える
機会の最大化を考える
機会のリスク最小化やリスク顕在化の対応を考える
ステップ4.YES-BUT
よい変化だけど、全員にとってよい変化ではない
他の関係者にとっても良い変化にするにはどうすれば良いか
関係者にとっての障害と、副作用に対処する
ステップ5.良い実験のための検証をする
ステップ6.プロジェクトとしてマネージする
先延ばし、気晴らし、バットマルチタスクに気をつけて実行する
NS-IP-F-C-A
Not Started
In Progress
Frozen
Completed
Achieved
まとめ
思い込みをどのように乗り越えるか
希望の方は日本語トレーニングがあるよ。JTOC事務局に連絡してね。