認知の対称性
対称性とは、二つの対象、事象の間に双方向の結合があることを言う。もし「AならばB」という関係を学習したのならば、「BならばA」という関係も成り立つことを対称性と言う。ここで重要なことは、二つの対象の間に物理的な類似性が存在しないこと、および関係(BならばA)は全く学習しなくても成り立つということである。
これは外国語の単語の学習を例に取るとわかりやすい。たとえば「本」はフランス語で"libre"であると学習する。すると"libre"が「本」であることは、教わらなくてもわかる。また、日本語の「本」という文字、あるいは音声は、フランス語の"libre"とは全く物理的な類似性を有していない。
こうした双方向の結合は、人間の日常生活の中によく存在しており、ごくごく自然なことではないかと考えたくなる。しかしながら、動物を用いた実験において対称性が確認されることはきわめて例外的で、訓練された特定のチンパンジーとアシカ以外では見られない。
動物において形成されるのは方向つきの関係であり、人間においては少なからぬ関係が方向なしとなるという。もし話を論理的推論という場面に限れば、動物は論理的であり、人間は非論理的となる。そして人間は厳しい教育を受け、双方向結合を抑制し、動物が難なく達成している方向つき推論を後から身につける
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