肩越しの視線
その時代から、宮本さんは
なんにも知らない人をつかまえてきて、
ポンとコントローラー渡すんですよ。
で、「さあ、やってみ」って言ってね、
なんにも言わないで後ろから見てるんですよ。
わたしは、それを
「宮本さんの肩越しの視線」と呼んでたんですけど。
その重要性というのは、
いっしょに仕事するまでわからなかったんです。
いっしょに仕事してはじめて、
「あ、これだ」って思うんです。
つまり、ゲームをつくった人は、
ゲームを買ってくれる
ひとりひとりのお客さんに対して
「このようにして作りました。
こう楽しんでください」
とは、説明に行けないんですね。当然ですけど。
だから、仕方ないので、
すべてを、ものに託すわけです。
ところが、ものというのは、
そういうことを伝えるうえでは、
きわめて不完全にできている。
だから、伝わらないんですね。
製作者が、想像もしないところで、
予想外の戸惑いを感じたりする。