状態記述と過程記述
状態記述 知覚の表現
「円は、任意の1点から等距離にある点の軌跡である」
写真、図形、インセプションデッキ
過程記述 行動の表現
「円を描くには、コンパスの一方の脚を固定して、他方を1回転させるとよい」
手続き、手順、計算
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「円は、任意の1点から等距離にある点の軌跡である」。「円を描くには、コンパスの一方の脚を固定して、他方を1回転させるとよい」。この第2の文章で定義された過程を実行すれば、最初の文章の定義を満足する図形を描くことができるということが、ユークリッド幾何学では暗黙のうちにみられる。最初の文章は円の状態記述であり、第2の文章は円の過程記述である。
これら2つの構造理解の仕方は、われわれの日常経験の縦糸と横糸をなしている。絵画、青写真、ほとんどの図形、化学構造式は、状態記述であり、薬の処方、微分方程式、化学反応式は、過程記述である。前者は、知覚の対象としての世界の特性を記述する。しばしば対象そのものの模型をつくることによって、事物を明らかにする規準を定めるのである。後者は、行動の対象としての世界の特性を記述し、のぞましい特徴を備えた事物をつくったり、生み出したりする方法を提供するのである。
知覚の対象としての世界と、行動の対象としての世界を区別することによって、適応的有機体の生存の基本的条件が明らかとなる。有機体は、知覚された世界における目標と、過程の世界における行動との間に、相関関係をつくりださなければならない。それらの相関関係が知覚され、言葉で表現されると、それらは、われわれがふつう目的―手段分析とよんでいるものに相当するようになる。のぞましい状態と現在の状態とがわかれば、この2つの状態の差異を見出し、つぎにその差異を解消する相関的過程を発見することが、適応的有機体に課せられた仕事であるといえる。
したがって、問題解決には、1つの複雑な事態について、状態記述を与えたり、過程記述を与えたりして、この2つの記述の仕方の間でたえず変換作業を行なうことが必要である。
われわれは、パラドックスの原因と解答によって、2元的にこの世界とかかわっている。われわれは、その解の状態記述をあたえることによって、問題を提示する。そして、そのつぎにわれわれのなすべきことは、最初の状態から目標の状態に至る一連の過程を発見することである。いつそれを探しあてることに成功したかは、過程記述から状態記述への変換によって知ることができる。その解は、われわれにとってはまったく新しいものである。
さて、人間の問題解決とよばれる活動が、基本的には、のぞましい目標に至る経路の過程記述の発見をめざす目的―手段分析の1つの型であることを示す研究結果が、かなり集められている。一般的な範例をあげると、たとえば青写真があるとすると、人間の問題解決とは、そこに描かれているものを実現する適切な方法を見出すことである。科学の活動の多くは、この範例を適用したものである。たとえば、ある自然現象の記述が与えられた場合、科学のなすべきことは、その現象を生じる過程を表現する微分方程式を発見することである。