極意
隙が自殺を呼ぶ
もちろん、真剣勝負は人間の殺し合いに違いないけれども、大拙博士は、剣の殺し合いについて、「自分の事を考えていると、そこにそれだけの隙が出てくる。ちょっとの隙でも、隙が出れば、そこに相手の剣を招くことになり、それで命を落せば、事実は自殺したことになるのである。剣刃上の試合は、電光石火で、私を容れる余裕がない……」のだと語り、次いで、「きわどい間際に自分をどう忘れるか? ここに人間心理の極微が窺われるのである。事実=捨ててこそ、浮かぶ瀬もあれ=というのである。ここを悟るのが、剣の極意であり、剣の妙である。人間万事の上において、悉くこう言えるのである……」
悉く(ことごとく)
隙は自分が作るものであって、相手が作るものではない。要するに剣に倒されるのではなく、スキを作ったことによって、自ら死ぬのである。