心理距離
自分の振る舞いを見直すのは難しいのに、他人の行動はよく気づくという現象。
自分のことを直接扱おうとするとうまく考えられないが、自分のことでも外在化したり、他人についてはよく考えられる。 例えば自分で書いた文章があります。その善し悪しを自分で的確に判断するのは難しいでしょう。けれど、他人の文章の善し悪しはよく気づきます。この認識解像度の非対称性があります。
心の距離が遠いほどよく見えるようになります。上記の他人が一例です。この距離には時間、社会的距離など様々なものがあり、一人でも行う方法があります。
様々な心理距離
・時間という心の距離
・役職という心の距離
・他人という心の距離
・異なる状況という心の距離
時間という心の距離
私の文章よりも情感豊かに書かれた読み物があるので引用します。
昔見て感動したものは、人の記憶の中に「感動」としてしか残らない。その映画全体がたいしたものでなくても、ある部分に、その当時の自分の求めるものが強く存在していれば、そこでだけ感動して、「自分の心の名作」にしてしまう。自分の中でだけ「心の名作」になっていて、必要とあれば、その「感動の記憶」だけを取り出して、何度も 反芻 する――人に「いいから見ろ」とすすめたりもする。
すすめられた人間は、すすめた人間とはまた別種の人間なのだから、言われた通りに感動するとは限らない。年の離れた人間に「青春時代の話」を聞かされて、それがただ「ふーん……」という無感動にしかつながらないのは、背景となる時代が違っているからだが、「名作」というものだって同じである。
十代の頃に見た映画をもう一度三十代になって見直して、私は、「そういや、昔の映画評論家の言っていた〝映画史に残る名作〟ってたいしたことなかったな」とも思った。
「昔見た映画を、〝いい〟と思った記憶で反芻だけしていると、それが〝古くなる〟ということに気がつけなくなるのか」と思ったのである。
十代の頃の記憶は記憶として、それがその後になってもまだ「感動」として通用するものかどうかはわからない。十代の頃にはよくわからなかったものが、その後になって「わかる」というのは、十分にありえる。 話は映画に限らない。
本だって同じである。しかし、そのことがあまり理解されないのは、人が「若い時の記憶」だけを頼りにしてうっかり生きてしまうからである。
もう一度読み直せばいいものを、その「感動の記憶」が健在であれば、人は「読み直して点検しよう」などという気にはならない。そうして、時代からずれて行くのである。
私はその危険に気がついて、そうなりたくはないと思った。ビデオで昔の映画の点検をし始めたのはそのためである。
それは、かつての感動を消滅させることにもなりかねない、危険な作業でもある。しかし私には、「過去の感動」より「現在の感動」の方が重要だった。作家の感受性が「現在の感動」とシンクロせず、「過去の感動」とだけシンクロしていてもしょうがないからである。
それは「老いた」ということであって、三十代の私は「過去に生きる老人」になんかなりたくなかった。だから私は、「昔見ておもしろいと思った映画は、今でもまだおもしろいのか?」という作業に没頭し始めた。
私は、ある意味で徹底した人間なので、「このおもしろさや感動は現在でもまだ通用するか」を確信するために、見るとなったら、しつこく何度でも見る。その結果わかったことは、「おもしろい」と思わせるものには、明確なるパターン認識があるということである。輸入版で字幕のないビデオでは、セリフに寄りかかれない――つまり、理屈でごまかせない。
「言葉なしでもわかる」ということは、構成がしっかりしているということで、それはすなわち、明確なるパターン認識があるということなのである。作り手と受け手は、そのパターンを共有することによって、「感動」という理解を得る。”
『「分からない」という方法』橋本治
役職という心の距離
役職が変われば視座が変わり、視座が変われば見方が変わります。
社長の立場でみる、新入社員の立場で見る。よく言われることですが効果があります。頭で考えるより、なりきってロールプレイしてみると気持ちが入ります。
他人という心の距離
他人の視点になって見直してみるということです。
オススメなのは尊敬するメンターになりきってみたり、ものまねしてみたりすることです。ただの他人よりも尊敬する人からの意見であれば受け入れやすいですから。
なりきれそう、ものまねできそうという案配がよいと思います。
名言からふりかえるのもよいかもしれません。
「テスト書いてないとかお前それ t_wada の前でも同じ事言えんの?」
異なる状況という心の距離
Unlearnしたいことがらが行われている状況から離れた状況で考えてみることです。
他社見学がよく行われるようになりました。状況も場所も変わるので見直ししやすいと思います。
普段、真剣な面持ちで仕事をしているなら、楽しげに仕事をしてみたり、ふざけながら仕事をしてみることも効果的です。今まで繰り返してきた「いつもの状況と自分の対応」を変えてみると新しい刺激になります。
関連