価格転嫁率
電気代、燃料費、材料費などが高騰し、プロダクトのコストが増えています。もしコスト増を価格に反映できなければ、利益は簡単に消えてしまいます。
これらのコスト増をどれくらいマネジメントできているでしょうか。いくら価格に反映できているでしょうか。ここでは、このコスト増の価格への反映を説明します。
電気代や材料費などのコスト増を価格に反映することを価格転嫁といいます。
また、この転嫁した割合を価格転嫁率といいます。
例
コストが増えて利益がなくなってしまった。
売価1000円 コスト800円 利益200円
↓
売価1000円 コスト1000円 利益0円
もしコストが増えた分だけそのまま価格に転嫁したら、1200円になります。
売価1200円 コスト1000円 利益200円
ところが20%の値上げを顧客は許してくれないかもしれません。しかしこのままではやっていけません。
価格転嫁に段階を設けて、いくつかパターンを考えるかもしれません。
1200円 100%転嫁 利益200円
1150円 75%転嫁 利益150円
1100円 50%転嫁 利益100円
1050円 25%転嫁 利益50円
1000円 転嫁無し 利益0円
この価格転嫁の割合は、多くの場合、顧客との力関係によって決まります。たとえば相手が値上げを受け入れざるを得ないときは価格転嫁に応じますが、他の製品に簡単に乗り換えることができれば価格転嫁を拒否したり、競合に乗り換えることができます。
顧客との継続的な取引をするために、いざとなったら値上げを受け入れてもらえるように日頃から関係作りをしていく必要があります。
table:値上げの力関係
代替可能 代替困難
価格に鈍感 ○取引継続 ◎取引継続
価格に敏感 ×取引停止 △(敵対的関係)
自社のプロダクトはどこに該当するだろう? 値上げを切り出したら、どのような反応が返ってくるだろう?
table:代替製品へのスイッチ
スイッチングコストが安い スイッチングコストが高い
実際の企業はどのくらい価格転嫁しているの?
帝国データバンクの2022年の1万1,680社へのアンケートでは、約7割の企業が価格転嫁を実施し、価格転嫁率は約4割との回答でした。
100円のコスト増が起きたとき、価格に反映できたのは10社に7社、価格への転嫁も40円で、60円が自社負担となったわけです。多くの企業が価格転嫁できずに苦しんでいることになります。
価格転嫁と低い転嫁率は、利益率の低い業界や、電気代や燃料費のコスト割合が大きい企業では命とりになります。
https://gyazo.com/42958a8bb19e12d5f6c0d25e87630c1e
価格転嫁に強いプロダクトと、弱いプロダクト
そもそも価格転嫁に強いプロダクトと、弱いプロダクトがあります。価格転嫁が容易に可能であれば、電気代や材料費の高騰といった変化にも強いプロダクトと言えます。
たとえばゲームセンターは価格転嫁に非常に弱いサービス業です。1コイン100円といったコイン単位でサービスしており、+10円+20円が非常に困難だからです。以下は価格転嫁に強いプロダクトの性質の一例です。
価格転嫁に強いプロダクト
売り手が独占している
価格が不確定(たとえば時価が受け入れられている)
顧客は価格に鈍感
提供する内容を変えることで調整できる
価格転嫁に弱いプロダクト
コモディティであり、顧客は簡単に乗り換えられる
価格が固定
ゲームセンター
100円ショップ
顧客は価格に敏感
プロダクトマネジメントの観点から価格転嫁を考えると、いかに転嫁を早く行い、転嫁率を高くするかが鍵となります。自社の利益に対する影響力は多大なものです。
一週間で価格転嫁ができ、価格転嫁率が75%
→コスト増の影響はあったが、その直撃は1週間であり、また25%の自社負担で済んだ
半年かかって価格転嫁ができ、価格転嫁率が25%
→コスト増の影響は甚大で、半年間は100%の自社負担、価格転嫁後も75%も自社負担が続いた
自社のプロダクトは、下記の4つのエリアのどこに該当するでしょう。コストが増えてから慌てて対応していてはなかなか難しいです。いざとなったらすぐに反応できるようにしていきましょう。
table:価格転嫁につよいプロダクトだろうか?
転嫁タイミングが不明、遅い 転嫁タイミングが早い
転嫁率が高い コスト変化に強い
転嫁率が低い コスト変化に弱い
自社のプロダクトはどこに該当するだろう?
記事
横浜の小松菜農家 コスト増に限界寸前 脳裏よぎる離農
価格転嫁、下請け15万社調査へ 経産省
https://gyazo.com/2ec4c1c8d263b660f347db15eabe7028
https://gyazo.com/42958a8bb19e12d5f6c0d25e87630c1e
自社の主な商品・サービスにおいて、コストの上昇分を販売価格やサービス料金にどの程度転嫁できているかと尋ねたところ、コストの上昇分に対して『多少なりとも価格転嫁できている』企業は69.2%となった。その内訳をみると「すべて転嫁できている」企業は4.1%にとどまっており、「8割以上」は12.7%、「5割以上8割未満」は17.1%、「2割以上5割未満」は15.2%、「2割未満」は20.1%となった。一方、「全く価格転嫁できていない」企業は15.9%だった。
価格転嫁をしたいと考えている企業の販売価格への転嫁割合を示す「価格転嫁率」は39.9%と4割を下回った。これはコストが100円上昇した場合に39.9円しか販売価格に反映できていないことを示している。
コスト100円上昇、転嫁は39.9円上昇分の6割は企業負担の現状
~ 経費やムダの削減など自助努力でコスト上昇に対応~
https://youtu.be/a1u4zHiuOeI
価格転嫁性が著しく悪いゲームセンターの値上げ
原材料高騰の価格転嫁率は39.9%。消費者や取引企業からの“理解の得られにくさ”がネックに