パタンにおけるシーケンスの近接3条件
ランゲージとは一連の操作のシーケンス
個々のパタンは空間分化の操作者(オペレーター)である。つまり、差異のないところに差異を生じさせるのである。(中略)
ランゲージ内では、この操作は一連のシーケンスをもっているので、一つずつ順をおって行けば、じょじょに完全なものが生まれてくる。(中略)
ランゲージとは、このような一連の操作のシーケンスである。それぞれの操作が、それ以前の分化の産物であるイメージを、そらに分化していくのである。
パタンは形態的な重要度の順に配列されているから、ランゲージを用いれば、全体が系列的に分化されることになり、そこに設定それた区分の結果として入れ子のように順々により小さな全体が出現してくるのである。
p299
パタンを用いて、頭の中に一貫性のある住宅像を形成できるのは、パタンを正しい順序で一つずつ採用し、じょじょに設計像を組み立てていける場合だけである。
しかもそれが可能なのは、各パタンが、それ以前に出現したすべてのパタンによって作り上げられた全体像と整合している場合だけである。
それには、一連のパタンのシーケンスが、次のようなごく単純な条件に適合せねばならない。
パタンにおけるシーケンスの近接3条件
1.パタンAがパタンBより上位にあったら、Bの前にAを取り上げる
2.パタンAのすぐ上位にある全パタンは、シーケンス上の近くで取り上げる
3.パタンAのすぐ下位にある全パタンも、シーケンス上の近くで取り上げる
第1に、あるランゲージのネットワーク内で、パタンAがパタンBより上位にあるとすれば、Bの前にAを取り上げねばならない。これが最も基本的なルールである。
第2に、パタンAのすぐ上位にあるすべてのパタンは、できる限りシーケンス上で接近して取り上げねばならない。段階的な動線領域と車との接続が正面玄関のすぐ上位にあるとすれば、両者とも正面玄関の創出のお膳立てを整えてくれるのである。それらのパタンが近接していて融合できる場合だけ、入り口についての一貫性のある枠組を頭でイメージできるのである。
第3に、パタンAのすぐ下位にあるすべてのパタンも、できる限りシーケンス上で近接して取り上げねばならない。したがって、たとえば複合建設のすぐ下位にある正の屋外空間と光の入る棟は、近接させる必要がある。敷地に家を配置する場合、庭を形成し家を形づくる空地も同時に作り出しているのである。一方が他方を定義し合うから、そうせざるを得ない。建物が空地の輪郭を定めると同時に、空地が建物の輪郭を定めるのである。したがって、できる限り二つのパタンを近接して用いなくてはならない。
以上のように、一連のパタンのシーケンスがこの3条件を満たしていれば、それだけ、人の抱くイメージの一貫性が増すということを実験的に示すことができる。
パタンのシーケンスがこれらの条件を完全に満たしていれば、誰でも——いわゆる「素人」でも——一つずつパタン2耳を傾けていくにつれ、一貫性のある完全な建物像を頭の中にごく自然に描くことができよう。すべてのパタンを聞き終わったときには、全設計を明確に説明できるし、そこを他人に「たどらせる」こともでき、あらゆる角度からどう見えるかも述べることができる・・・要するに、そのようにして出来上がった設計は一貫性があり、完璧なのである。
他方では、一連のパタンのシーケンスがこの3条件に反していれば、それだけ、人の抱くイメージは支離滅裂になる。
ランゲージから得られるシーケンスが有効に働くのは、どの段階においても建物を一つの全体として扱うからこそである。