アドバイスの構造的問題
「上から目線」を口にするとき、その人はどんな目線で相手をみているのだろうか。
拒否的な態度をとるくらいであるから、相手の親切に感謝する思いなど微塵もないと見なすべきだろう。むしろ、アドバイスしてくる相手がこちらより優位に立ってもの言うところが許せないといった感じだろうか。
つまり、こういうことだ。相手が親切で言ってくれたという解釈よりも、相手が優位に立ってものを言ってくるという姿勢が、こちらに対する優位を誇示しているように感じられてならない。
そこには、親切心から言ってくれた相手の思いに対する共感がない。そもそも相手の方が経験も知識もはるかに豊かで、こちらにアドバイスできる立場にあるといった認識や敬意が欠けている。
※アドバイスできる立場という、立場という概念に重きを置いている点に注目
あえて上位・下位、優位・劣位といった図式を用いるとしたら、アドバイスをしてくれた上司や先輩の方が上位・優位に立っているのは、否定しようのない客観的現実である。その現実に基づいて、親切心からアドバイスをしてくれた相手に対して、「こちらに対して優位を誇示している」ように感じる。そこに見え隠れしているのは、「見下され不安」である。
見下されるのではないかといった不安が強いために、本来は役に立つアドバイスも、こちらに対して優位を誇示する材料と受けとめてしまうのだ。見下され不安の強い心の目には、親切な態度が見下す態度に映る。その結果ね感謝どころか、「その上から目線はやめてください」となる。
ここで疑問に思うのは、「上から目線」を指摘し批判する側と、いわゆる上の立場からアドバイスした側と、どちらが「上から」なのかということである。経験豊かな者がアドバイスするとき、「経験者としての上から目線」に立ってものを言っているというのは確かだろう。だが、アドバイスしてくれた相手を上から目線と非難するときの、「あなたのその上からの物言いはよくありませんよ」とでも言いたげな態度は、まさに「相手を見下す上から目線」に立ったものとは言えないだろうか。