イノベーションのジレンマ 2020.01.25
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本書は1997年に出版された後、むしろ年とともに評価が高まっている稀有なビジネス書だ。
本書の特色は、企業の成功ではなく失敗を分析した点にある。特に印象的なのは、著者がくわしい実証研究を行ったハードディスク業界のケースだ。大型コンピュータ用の14インチ・ディスクのトップ・メーカーは、ミニ・コンピュータ用の8インチ・ディスクの開発に遅れをとってすべて姿を消し、8インチの主要メーカーのうちパソコン用の5インチで生き残ったのは一社だけ、そして3.5インチでもというように、ディスクの世代が変わる毎に主要メーカーがすっかり入れ替わってしまった。
それは、決して経営者が怠慢だったからでもなければ、技術が劣っていたからでもない。むしろ、すぐれた経営と高い技術を持った企業ほど、こうした落とし穴に落ちやすい。その原因は、新たに登場する破壊的技術が単価が安く、技術的にも劣ったものだからである。
高品質・高価格の製品は開発意欲をかきたて、経営者にも通りやすいが、低品質・低価格の技術を提案する技術者は少ない。それを開発するのは、新しいベンチャー企業だ。
今、インターネットは、電話会社が軽蔑しているうちに低品質・低コストの通信によって電話を飲み込み、情報通信のあらゆるモデルを破壊しつつある。次の犠牲者は放送局だろう。HDTV(高精細度テレビ)は時代錯誤の持続的技術の典型であり、それを破壊するのはモバイルとインターネットだ。
かつての日本製品は肥大化した米国企業を倒す破壊的技術の役割を果たしたが、今では倒される側に回ってしまった。残念ながら、既存企業が自己改革によって危機を乗り越えた例はきわめて稀だ。日本経済が復活する道は、新しい世代の企業による「創造的破壊」しかないだろう。
5年後、メディアは稼げるか key person クレイトン・クリステンセン
いまや日本の出版界のみならず、新聞・雑誌・テレビのメディア業界全体が、電子ネットワークによって、ぐらぐらに揺らいでいる。いったいどうすればいいのか。
デジタルメディアは紙メディア以上に「目利き」の獲得と選抜が重要になるのだが、そこにはそれなりの“報酬体系”が機能するべきなのだ。
本書は「週刊東洋経済」という現場でビジネスの最前線を追いながら、自身が所属するメディア業界やジャーナリズムが日に日に古色蒼然となっていくのを渦中に実感していて、なんとかこの変革期を首尾よく脱出突破するにはどうすればいいのかという「やむにやまれぬ事情」から書いた。
新世界では、競争力はコンテンツだけでは決まらない。それなのに単行本や雑誌や新聞をつくってきた連中は、この新たな戦場のことが理解できないでいる。
新世界ではユーザビリティをよくするためのテクノロジーとクリエイティブが要求され、PDCA(計画→実行→評価→改善)をのべつ繰り返さなければならない。
すべてのデータはウェブ・ネットワーク上に開陳され、1秒単位でアクセスの動向がわかっていく。どの記事が読まれたか、どのページに離脱がおこったか、すべてはデータにのこるのだ。そのデータの起伏こそコンテクスチュアルなのだ。
ということは、そのビッグデータから読者(ユーザー)の動向が分析できるのに、旧世界の連中はこのことを面倒くさがって、対処しようとはしないのだ。