交換様式DとRadicalxChangeについて
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RadicalxChange (RxC)は、台湾デジタル担当大臣Audrey Tangや経済学者Glen Weylらが中心とした次世代の組織、社会運動。この名前の由来には、日本の哲学者である柄谷行人の交換様式Dの議論が関わっている。
ここでは、RadicalxChange (RxC)という運動が、交換様式Dが成立するXを目指す運動であることに言及する。
また彼らが取り上げるPlurality概念は、Glen Weylの独自のものではなく歴史的にもHannah Arendtで知られているように政治概念として歴史がある。もちろんHannah ArendtがPlurality概念の最後の人物でもない。
Glen Weylも言及している。
RxCにおけるPluralityとは、Glen Weylによれば
Technology for cooperation across difference by Glen Weyl
違いを超えて協力する技術
https://youtu.be/MsMsL5v2-Ls?si=0POBJYh1i6jBR1bD&t=315
もしくは、
Plurality: Technology for collaborative diversity and democracry
Plurality: 協働可能な多様性と民主主義のためのテクノロジー
https://youtu.be/fpbEbcHyxPg?si=SSwKhX96Z01LxAWs&t=135
つまり、彼らにおけるPluralityとは、協働を促し多様性や民主主義を実現する技術であり、政治概念を支える技術として読み替えを行なっている。
交換様式Dについて
交換様式D (mode of exchange D)とは、日本の哲学者の柄谷行人による概念。2軸(『他者との関係』と『報酬の有無』)の観点から交換様式を分類している。元々は、人間の活動における交換の様式と国家の形態について議論していた。つまり、柄谷は交換の様式と国家の形態には対応関係があると考えていた。その対応関係の議論の元としてヘーゲル批判がある。
交換様式Dに対応する名称がないことから、柄谷はそれをXと呼んだ。Dは高次元によるAの回復によってなされるというのが柄谷の主張だが、具体的にそれがいかになされるのかは不明である。
A=互酬: 知り合いと見返りの関係になって交換する様式
B=再分配: 知り合いと見返りの関係にならずに交換する様式
C=市場、商品交換: 見知らぬ人と見返りの関係になって交換する様式
D=X: 見知らぬ人と見返りの関係にならずに交換する様式
https://scrapbox.io/files/65104e58ac0f25001b2df88e.png
さらに言及すると、社会的構成との対応関係においては以下のようになる。
A: 共同体
B: 国家
C: 市場
D: X
文献
柄谷行人『トランスクリティーク』
柄谷行人『世界史の構造』
柄谷行人『力と交換様式』
交換様式DとRadicalxChange
Audrey Tangが柄谷行人より強い影響を受けたという言及は何度もある。
RadicalxChangeのxは交換様式DのXから着想したものという言及がある。
ヴィタリックさんのEthereum上で研究開発された「新たな交換様式」は、不特定多数の人が公共の利益のために交換することを可能にするものです。これは一見すると個人のための利益に見えるかもしれませんが、最終的にはコミュニティー全体の利益になるという共通認識につながります。これらはメカニズムデザインの活用方法であり、私はこれを台湾の政治にできる限り応用するようにしています。
前置きが長くなりましたが、なぜこのような交換様式をRadicalxChangeと名付け、Radical x Changeと別々の単語に分けて表示しなかったのか。それは日本の文学者であり哲学者である柄谷行人(注3)さんが提唱している交換様式X、すなわち「交換様式論」(注4)から着想したものだからです。
ここでは、Audrey TangはEthereumが実現するエコシステムと交換様式Dを重ねている。
RadicalxChangeという単語のxには交換様式Dに対応するXが含まれており、RadicalxChangeとは、根本的な交換様式(RadicalxChange=根本的な変化、根本的な交換様式)を目指すことが企図されている。
以上から、Pluralityは、そのRadicalxChange=交換様式Dを目指すための技術として整理することが可能である。
要点
柄谷はそもそも交換様式Dを自然的な交換様式Aの高次元による回復として説明しているため、交換様式Dを設計するという元々の発想とは異なっている。
また柄谷自身New Associationist Movement(NAM)を組織した経験があり、失敗している。
RxCが目指す世界や取り組みについて別の解釈が必要になる可能性がある。少なくとも彼らが提案しているように具体化についてのアイディアや取り組みが必要になる。少なくともPlurality概念は良いコアコンセプトであると思う
交換様式Dは、無関係な人同士に関係を積極的に見出し見返りを求めない関係性の構築という側面がある。
Plulralityは、違いのある人たち同士を繋げる技術でもある。
オードリータンがこの二つの概念に惹かれるのは、交換様式Dに何らかの形でPluralityが貢献するという直感があるのではないか。