翻訳できない世界のことば
名づけられることによって、はじめてものはその意味を確定するのであって、命名される前の「名前を持たないもの」は実在しない、ソシュールはそう考えました。
言語活動とは「すでに分節されたもの」に名を与えるのではなく、満天の星を星座に分かつように、非定型的で星雲状の世界に切り分ける作業そのものなのです。ある観念があらかじめ存在し、それに名前がつくのではなく、名前がつくことで、ある観念が私たちの思考の中に存在するようになるのです。
本書の中の気になったことば。
ジュガール
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ヒンディー語
最低限の道具や材料で、とにかくどうにかして、問題を解決すること。
外国語のなかには、
他の言語に訳すときに一言では言い表せないような
本書は、この「翻訳できない言葉」を世界中から集め、 世界一ユニークな単語集。
そしてコミュニケーションの機微を楽しみながら探究できる。
小さなブログ記事が一夜にして世界中へ広まった話題の書。
ニューヨークタイムズ・ベストセラー。
世界6カ国で刊行予定。
*著者「はじめに」より
わたしにとって、この本を作ることはもの作り以上の経験でした。
この本作りを通じて、今までとまったくちがう形で人間を見ることになったし、
いつのまにか、これらの名詞や動詞、形容詞などを、
すれちがう人たちにあてはめている自分に気づいたのです。
海のそばにすわっているおじいさんを見て「boketto」と感じるし、
見たことのない文化を経験する旅の準備中の友だちの心には
「resfeber」を感じとります。
この本が、読者のみなさんにとって、
忘れかけていたなにかを思いだすものであったり、
または今まではっきりと表現したことのなかった考えや
感情に言葉をあたえるものであればと願っています。
たぶん、たとえば一世代ちがうふたいとこについて語る言葉や、
2年も前の夏に感じてうまく言えなかったことや、
たったいま目の前にすわっている人の目が
語っていることについての表現がみつかるかもしれません。
さあ、どんな言葉との出会いがあるでしょう?
*訳者「あとがき」より
「翻訳できない世界のことば」というタイトルから、
読者のみなさんは、最初どんな本を想像されたでしょうか?
原書のタイトルは「LOST IN TRANSLATION」、
「翻訳できない」は、厳密にいうと「りんご=apple」のように
1語対1語で英語に翻訳できない、という意味です。
その中には、日本語の「ボケっと」「積ん読」「木漏れ日」
「わびさび」もふくまれていました。
日本人にとっては当たり前の言葉ですが、
著者のみずみずしい感性によって、
それらの言葉の内包する意味の広がりや
ドラマ性に焦点が当てられています。
日本語以外の言語の言葉についても、
新鮮なおどろきによって、
一つ一つがすくい上げられていることは、
想像に難くありません。
それぞれの言葉がまるで映画のワンシーンのように
投げかけてきてくれる物語の切れ端を、
読者のみなさんと共有できれば、本望です。
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