支援の必要性に気づけない
――「必要なときに支援を使いづらい」という問題の背景にはどのような要因があるのでしょうか?
支援が必要なことに気づけない
たとえばDV被害や虐待などは、気づかないうちに深刻な状況になっていくのが特徴だと思います。パートナーからのDV被害だと、最初は仲が良かった関係が、少しづつ相手の態度の変化や暴言へと移り変わっていって、暴力まで発展することが多いです。このように徐々に問題が進行していくため、問題が日常に埋もれやすく、被害者が「問題だ」と認識しづらいんです。
あともう1つ、支援が必要なことに気づけない大きな要因として、「問題と向き合うことがつらい」というのもあるでしょう。たとえば精神疾患でPTSDを患っている場合、考えようとすると頭が真っ白になってしまうんです。
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「助けてほしい」と感じてから初めて公的な支援を申請するまで15年かかった。「身近に頼れる人もいない生活の困難さや生きづらさもある人にとって、制度を調べ、窓口に行き、状況を繰り返し説明し、申請する事はとても負担が大きい。そもそも『これは支援が必要』と気づくことも難しい。必要な人に必要な支援を行政がプッシュしていくことが理想なのですが…」
幼少期、自分が虐待被害児だとは考えもしなかった。さまざまな福祉的支援策の存在も、誰も教えてはくれなかった。「もし知っていたら、家族がこれほど苦しまずに済んだかもしれないのに」。佐藤まみさん(27)は今も大きな後悔を抱える。
小学5年で母が統合失調症にかかった。幻覚の影響で身内に暴力を振るう。精神科の病棟で鉄格子ごしにベッドに身体を拘束されていた姿は忘れられない。1回3~4カ月におよぶ入院を年単位で繰り返した。
父の酒の量も日に日に増え、父による家庭内暴力も目立っていった。家庭内の不安定な状況が、また母の症状悪化につながるという悪循環に陥った。佐藤さんも中学に入ったころ、長期にわたる虐待などを背景にしたうつ病と「複雑性心的外傷後ストレス障害(PTSD)」を発症した。
佐藤さん自身、母親の精神疾患などで子どもの頃から苦労したが、支援の仕組みが多くあるのを知ったのは大学進学後。窓口にたどり着いても、同じことを何度も聞かれて精神的に疲れてしまう。そんな人を減らしたいと、二年前、同社の最高経営責任者(CEO)の石井大地さんにサイト作りを提案して入社。支援制度などの情報を集め、専門家の監修を受けながら説明文や質問も考えた。
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課題が課題と認識されていない
人は生まれながらにして、自分が精通しているタスクやプロセスばかりに注目しようとする傾向があります。完了すべきタスクがある場合、わたしたちの関心は「その タスクをどのように最適な方法で完了させるか」ではなく 「そのタスクを完了させる こと」ばかりに向けられます。わたしたちは、自分たちの想定を疑いません。これは、機能的固定性(functional fixedness) と呼ばれる概念です。社会心理学者のカー ル・ドゥンカーは、この性質を「課題解決において求められる新しい方法に対して感 じるメンタルブロック」と記述しています*。