請願制度の今日的意義と改革動向
請願制度の今日的意義と改革動向
田中嘉彦
国民が、 国務に関する事項について、 国家の機関に対して、 希望を述べることをいう
請願権の保障は、 立憲政治の発達に伴って確立されたものであり、 その源流は、 立憲政治の母国である英国から発している。 英国の初期議会では、 その記録の圧倒的大部分が、 請願の審理に関する記載で占められていた
→イギリスの議会政治
名誉革命後の1689年の権利章典の中では、 国王に請願する臣民の権利が保障された。
アメリカ合衆国の憲法修正第1条 (1791年成立) は、 「連邦議会は、 ……苦情の処理を求めて人民が政府に対し請願する権利を侵害する法律を制定してはならない。」 と定めた。
その後各国の制度の多くで請願権は保証されている
日本においては、民選議院設立論が広く唱えられ、 明治15年12月に請願規則 (明治15年太政官布告第58号) を発布し、 ここで初めて 「請願」 の文言が用いられた。
ただし、これは請願と行政上の不服申立てである訴願を混同したものであり、 明治23年に訴願法 (明治23年法律第105号) の制定と同時に廃止された。
大日本帝国憲法 にも一応の規定が作られ、議院法にてい請願について記載された。
しかし、議院に対する請願は、 実は議院を通じて政府に請願するものに異ならず、議院の力を借りて請願に重みを加えようとするものであった。細かい規定類も整理されなかった。
大正6年になってようやく請願令 (大正6年勅令第37号) として公布されたが、制約も多かった
請願委員会を通じて扱われる
第1回帝国議会から第92回帝国議会までの間における、 貴族院の請願受理件数は42,504件、 採択件数は11,897件 (約28%)、 衆議院の請願受理件数は79,927件、 採択件数は28,935件 (約36%) であった
現代日本では、日本国憲法第16条 で請願権を保証
権利行使のための具体的な手続きとして、請願法 (昭和22年法律第13号)や国会法が整備された
衆議院規則第11章及び参議院規則第11章、地方自治法
hal_sk.icon地方自治法については、2024年4月から電子請願が可能になった
全国の地方議会で4月から「オンライン請願」可能に、意見書や議案などほぼ全てデジタル化 読売新聞オンライン
国会における請願手続
①提出 各議院に請願しようとする者は、 議員の紹介により請願書を提出しなければならない (国会法第79条)。
②記載事項 請願書には、 請願者の住所及び氏名 (法人の場合はその名称及び代表者の氏名) を記載しなければならない。
③受理・付託 議院に請願が受理されると、議長は、 請願文書表を作成し、 各議員に配布すると同時に、 適当な委員会に付託する。
④審査・議決 請願は、 各議院において委員会の審査を経た後、 これを議決する (国会法第80条第1項)。
⑤内閣への送付 各議院において採択された請願のうち、 内閣において措置することが適当と認められたものは、 内閣に送付される (国会法第81条第1項)。
第1回国会から第118回国会までにおいて、 衆議院の請願受理件数は324,998件、 採択件数は101,844件 (一部採択331件を含む。) (約31%)、 参議院の請願受理件数は251,148件、 採択件数は73,236件 (約29%) であった
その他の手段
国会への陳述書
議員の紹介がない場合。委員会の参考意見となる
行政機関への請願
地方議会からの意見書
地方自治法第99条に基づいて行われている。 同条によれば、 「普通地方公共団体の議会は、 当該地方公共団体の公益に関する事件につき意見書を国会又は関係行政庁に提出することができる」とある→委員会の参考意見となる
請願制度の充実のための主な改革・提言
第139回国会 (平成8年12月12日) の同調査会においては、 「時代の変化に対応した行政の監査の在り方」 のうち国政調査権・請願制度に関する件について、 参考人意見聴取及び質疑が行われた
吉田栄司参考人からは、 請願制度についての憲法論的な位置づけ、 ドイツ連邦議会の請願委員会等についての説明がなされた
辻啓明参考人からは、 「請願審査の問題点及びその改善策」 について、 時期の適正化やアフターケア、結果通知などについて語られた。
今後の課題として、苦情申立型請願と 政策提言型請願の2つにいて議論している
政策提言型請願は、検討をしっかりすることや、アンケートなどの仕組みで世論調査を実施すること、アイデア提供型請願を歓迎すること、国会と国民の間で討議がなされることなどが挙げられている
平成6年に、国会改革に関する指摘研究会というのがあった
平成12年4月26日には、「参議院の将来像を考える有識者懇談会」が意見書を提出
もっと重視すべきというのと、インターネットによる方法についても記載されている。請願委員会の設置も提言
海外における請願制度