アレクシ・ド・トクヴィル
自由である術を知ることほど素晴らしいことはないが、自由の修行ほどつらいこともまたない。
アレクシ・ド・トクヴィルは一八〇五年生まれの一九世紀の人です。『アメリカのデモクラシー』第一巻を出版したのが1835年、その四年前の1831年にアメリカを旅行しています。トクヴィルがアメリカを見たのは、まだ二五、六歳の頃でした トクヴィル家はフランス革命で倒れたブルボン朝を支持する「ユルトラ(超王党派)」と呼ばれる反動勢力に属していました。「お前、ユルトラの家の息子だろ」と職場でなじられ、家に帰ると「ブルボン朝支持のわが家の子息が、なぜ新しくできた七月王政に忠誠を誓うのか」と責められ、家でも職場でも生きづらくなって、逃げるようにしてアメリカに渡りました。 トクヴィルが独特なのは、そうした「平等化」の趨勢は、決して本人たちの意志や善意、みんなを平等化したいといったキリスト教的な信念から生じるのではないと明言しているところです。みんなが自分の欲望に従って行動するうちに、気づいたら平等化が進み、後戻りできなくなっている。歴史のダイナミズムをそのように捉えたのです。
教養がないとされた、中西部出身の 叩き上げのアンドリュー・ジャクソン(一七六七-一八四五) という人でした。このジャクソンは、ちょっとドナルド・トランプ(一九四六− )と似たところがある面白い人物です。 トクヴィルが旅したのは、まさにそのジャクソン時代のアメリカでした。