H3-MoM_H³ 第27回:プロトタイピング超入門_20191121
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written by ryosukick.icon
2019年11月21日(木)19:00-21:00 @ 日本橋
【講師】
講師紹介
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【当日資料】
H3登壇_プロトタイプの重要性 - Google スライド
【概要】
Intro
2019年10月から、介護リハビリテックスタートアップのCOOに就任
医療・介護業界のことはむしろ勉強中。色々おしえてください。
医療/介護業界とIT業界の違い
組織構造
医療・介護:人が人に向き合って価値提供する仕事
顧客への責任は「個人」に依存
顧客にはじっくり向き合うが、社内の人間関係は割と希薄(敬語で話し合う)
「業務マニュアル」以上は、担当者次第。
ルーチン業務多い。上司の仕事は仕事割振ること
IT:会社が世の中にサービス・プロダクトを提供する仕事
「チーム」で協働しないと何かトラブる。
「人にはミスはある」を前提で仕組み化を行う
メンバーの力量差は「育成」で補い、均質化する
うまくいってる企業はメンバー間の仲が良い
自分で色々考えて決断する能力を必要とされる
人材
医療・介護:年収の下落もそんなにないけど、キャリアパスはそんなにない
国家資格を持った専門職は即戦力。
将来の自分の理想像など”あまり”考えない
仕事人とプライベートの「自己」を分けて考えない
でも一人一人の顧客に対しての思い入れがすごい
自分の成長より、奉仕、福祉的な精神が強い。みんなの役に立ちたい。
IT:頑張れば、自分の市場価値が上がり年収が上下する競争社会
資格や学歴だけでは年収保証されない
将来転職時にその会社での経験・成果が影響
技術進化にあわせて、自ら技術を習得する必要
会社での成果と自己実現は一定リンクするが、あくまで「企業人」として振る舞う。
事業戦略
医療・介護:国やステークホルダーがルールを牽引only1志向
ステークホルダーへのロビーイングが重要
一人・一社では「世界は変わらない」刹那感
ビジョナリーだけど、ちょっとロマンチスト
世界が少しでも良くなって欲しいが、考え違う人を屈することまで考えない
IT:市場シェア獲得の競争戦略が重要No.1志向(特にGAFA) Winner takes all!!
プロダクト・サービスは真似されあう前提
「プラットフォーマーは強い」を身を以て感じる
法的グレーでも、後から国が対応!
この序列が技術進化や時代でコロコロ変わる。
商品開発
医療・介護:エビデンスベースド
「絶対的な質」にこだわる人が多い
「エビデンス」がないと信頼されない
エビデンスための解析データ量は決して多くない
エビデンスがあれば、めちゃめちゃ強い
リプレイス難易度は高めで、利用者負担強いる
IT:常にPDCAで進化
システムに絶対「完全」「大丈夫」なものはない
100点のサービスをいきなり提供しない
段階的に失敗を繰り返しながら、進化する
大量の実データで証明される信頼性(でも参考値)
他社の良いとこは真似る。良いものを常にリサーチ
それでも「ITの活用」で業界は進化する
どちらかの業界が良いという話ではない
これら業界の違いは普遍的なものではなく、既存産業がインターネット登場以降のソフトウェアWebサービスの「ものづくり」に業界全体がアジャストしてきたかどうか
「ものづくり」のやり方が違う者同士が、共通言語をもつがプロトタイプ プロトタイピングとは
Sketch→Wireframe→mockup→Prototypeという流れを総称してプロトタイピング
ソフトウェア・Webサービスのプロダクト開発プロセス
製造原価=エンジニアの人件費
プロダクトによるが開発に半年~1年以上かかることもある
コストを掛けるからにはROIが良い結果を出したい(コストが下がる、売上が上がる)
ただ、ここに関わる人がめっちゃたくさんいる。
プロトタイプをつくる時期は設計段階で、製造段階の前あたり。
一番製造原価(エンジニア人件費)がかかる前にプロダクトの方向性を決める。
ソフトウェア・Webサービスの構造
入力デバイス
入力画面HTML(問い合わせフォーム等)
入力処理プログラム(コード)
データ格納されたデータベース(データベース、テーブル)
後から変えづらい。入力で「備考欄」を何でも入れていいとしてしまうと、データベースの内容が極めて煩雑になる。
良いプロダクトは5W1Hで良さを説明出来ないといけない
企画検討時と設計時では5W1Hが違うことも
ビジネス検討:ビジネスゴールが先にありき(マーケティング的思考)
設計・開発:UI/UXっぽい考え方
例
ビジネス・マーケ観点の顧客ニーズ:
「クリニックにおける看護師のカルテ入力率を◯%ぐらいまであげたいので、◯◯機能を追加すべき!」
詳細設計・製造時の 顧客ニーズ言語化
その顧客が新機能を使う目的・動機は?
使うシーンとタイミングはどんな感じ?
サービス内容がどこまで理解できているのか?
その画面に触る前のユーザーの気持ちを詳細化
仮説検証のための調査の裏付けには?
アンケート
ヒアリング
プロトタイプ
サロンボード(ホットペッパービューティーの予約管理画面)
アイコンやボタンラベルのひとつひとつの並びにも徹底的に考える
Before サロンボード
紙の台帳を使って予約管理をしていた
店ごとに違う。蛍光ペンで変えたり、ボールペンで二重線で変えるところもあるし、そうじゃないところもある
After
店ごとに違うこと仕組みのなかで、画一的なフォーマットを提供
プロトタイプをもっていっても、客商売やっているので人当たりは良いのですが、「めっちゃいいですね・・・俺は使わんけど」とぼそっという。その理由をお客さんも言語化できないなか、なぜ使わないのか問い詰めると「だって俺の予約表みれないんだもん」と左上に「スケジュール」っていうボタンがあるなかでも言われた。それがリアル。
美容院のメニューについても下記のようなアイコンになるまでに徹底的なユーザーリサーチをして決めた。
C:カット
P:パーマ
カラーは・・・? → L(C「L」)
着付けは・・・? → 着
・・・その他無数の、答えのない答えをユーザーリサーチとお店からのフィードバックで作り続けた
絶対そうじゃなきゃダメというわけではもちろんない。ただ、より良いサービスづくりを極めると必要。
エンジニアは発注者や上司に確認しがち。ただ、本当の答えは顧客のなかにしかないし、顧客も明言してくれない。
まとめると、プロトタイプとは、プロダクトアウトではなく、マーケットイン思考で成功確率を上げるための仮説検証手段として、Webサービス・ソフトウェアではよく使われる手法。プロトタイプがあれば良いのではなく、決断に値する情報の精度を上げるために取り入れるもの。
終わりに
デジタルヘルスって開国~文明開化みたいなものか
IT化の黒船が来る感じかも
ペリーもいるけど、勝海舟もいるから成り立つのが開国。デジタルヘルスも同じでは。
【Q&A】
Q.医療・介護業界とIT業界の違い、というかIT業界からみた医療・介護業界、すごい面白かったです。エピソードベースで、一番おどろいた出来事(医療・介護側の人の発言とか)って何かありますか?
A. 人が人に向き合うので社内の人間関係が希薄化問題。「仲悪いの?」って聞きたくなるくらい、周りの人がどうやってるかに対して興味を持っていない。「自分のお客さんだったら必死で向き合います。ただ、社員はお客さんじゃない」という発言を聞いて、なるほど~~~って思った。親しき仲にも礼儀あり感を社内では結構出す。
Q. 医療業界で病院の予約サイトをリクルートさんがやっていないのはなぜですか??
A. 脱線しますが、美容医療はホットペッパービューティーも始めます(笑)。サロンボードの仕組みって、本当は歯医者とかでも同じなんですけど、医療広告ガイドラインとかがやかましくて、突破しづらい壁が多くて優先順位があがりづらかった。その隙にエス・エム・エスがやってしまった、みたいな歴史があった。日常消費領域に比べて、簡単にいうと儲かりにくいし、その上リピュテーションリスクが結構からむし、難しさが多い。 Q. Hotpepper beautyではどのようにプロトタイプを使ってみるモニターを見つけましたか?
A. サロンボードの場合はサロンにいく。一日ずっと店にいさせてもらって、ずっと観察している。ホットペッパーの営業から紹介してもらって。HOTPEPPERBeautyにおいても、インタビューさせてもらって検証することは色々あって、「おばちゃんが使ってもらうには?」「女子高生が使うには?」はインタビュールームを設けたり座談会をやったりしていた。ペルソナの切り方はめちゃくちゃ細かくて、顧客の分解を実体験を元にして何度も何度も試行錯誤しながら変えていった。青山のカリスマ美容師と地方都市の駅前美容室だったら全然違う。それぞれのペルソナに関して10個ずつ聞いていく、みたいなことを徹底してやっていた。偏りのないように、サンプルの分散は図っていた。
Q. リクルート共通のプロトタイプ手法ってあったりするんでしょうか? 新規事業コンテストで必須のものとか
A. あまりない。プロトタイプは必ずしも必須ではない。いまちょうど手順をまとめて、フレームワークを普及させようとしている。主観的にみる、多面的にみる。
Q. 医療業界と昔の美容業界に似ているところはありましたか?
A. 少なくとも介護業界とはめっちゃ似てます。「俺の客だし!」感も違う。明確な違いは美容業界には社会保障費や規制の枠はないこと、美容師の人はフェラーリ乗ったろ的な野心は結構あることなど。
人不足
低賃金で3K
ITリテラシー低い
オーナーは古き良き職人タイプ
技術力を第三者評価しづらい
技術だけでなく、接客が重要
ユーザーはお店を変えるのが怖い
経営者と現場のギャップ
Q. Hotpepper beautyのインサイトはどのうなものでしたか?またペルソナは誰でしたか?
A. メガサービスになるにしたがって薄れていったが、結局、リクルートのサービスって「上の上」でも「下の下」でもない、「下の上」から「上の下」までのセグメントがコアターゲットで、マジョリティを指している。じゃらんには無いけど一休にはある旅館はある。自分たちのブランド価値を意識するサロンは合わないというところはある。サロンボード発足当初は本当にひどくて、「ホットペッパービューティーに載るのはもうお終い」みたいな形で、SHIMAみたいな青山のサロンはかなり開拓に時間がかかった。でも、後に入ってきて、今はだいぶ開拓が進んだ。一人の営業マンの熱量や、プラットフォームとしての影響力が大きくなったことなど、いろんな力関係があったから一つの要因では説明がつけられないが。
Q. スケジュール管理の仕組みが美容院毎に違うなか、ホットペッパービューティーがこれだけ劇的に受け入れられたキッカケは何だったのでしょうか?医療介護も施設毎に様々な業務のルールが施設ごとに違うと思います。医療介護で施設を超えて広く受け入れられるキッカケとは何だと思いますか?
A. 理由、きっかけは一つじゃない。プロダクトが良いのは大前提。攻め続けられる資本力、ホットペッパービューティーの圧倒的な営業リソース、ネット予約へのコミットと成果実現、一番大きいのはサロンボードを介して予約台帳の面を押さえたこと。美容院の人、美容師の人がみんなホットペッパービューティー大好きかと言うと、そうとも限らない。
Q. 介護を受ける側は年齢層も高く、ITリテラシーは高くないと想像していますが、介護を受ける側にITニーズはあると思いますか?受け入れられると思いますか?
A. 「ニーズありますか?」と聞いたら無いと言われると思うが、75歳くらいになる自分の両親はスマホでLINE送ってくるし、Facebookも最近始めてクラブツーリズムでいった旅行の写真をアップしている。これまでの高齢者とこれからの高齢者は明確に異なってきている。介護従事者の人は僕らと年齢もかわらない、普通の人たち。行政系のシステムが全部ITになるのは無理な人を切り捨てられないので進まないかもしれないが、普通に使えるようになるかと。 Q. ホットペッパービューティーの場合、5W1Hってどんな感じだったんですか? ビジネス検討段階と設計・開発段階で大きく変わったものもありましたか?
A. アップデートがめちゃくちゃあるので答えづらい。プロダクトに一個あればいいというものではない。機能や画面ごとに5W1Hはかわる。レジを使うシーンは来店時の最後につかうタイミングも違うし、人も違う、目的も違う。一例でいえば、レジとかは画面構成やユーザー体験が大きく変わった。伝票パートとメニューパートが逆転しただけと言えばそれだけなのだが、美容院の場合は90%くらいが予約からの来店で、メニューを事前に決めているというリアルを踏まえて、メニューパートを上に引き上げて、自動表示をさせるようにして、微修正があるんだったらそこだけ変更しやすくできるようにした。小売や飲食であれば逆かもしれないが、美容の場合はこうだった。
Q. 作り上げたペルソナの精度はどの程度差がありましたか??また現実とペルソナに大きな差がある時にリリースされた製品はやはりあまりウケずに終わりますか?
A. ぐるぐる改善していけばいいので、終わったというまではない。作り手の傲慢という失敗はあって、ネット予約ができても電話予約をつづけるエンドユーザー向けに「B」と書いたネット予約可のお店のステッカーを貼ったオフライン施策はあったのだが、営業マンのなかにも「これで収益が上がるかわからないから勧めない」という人もいたし、サロンさんのなかにもコアファンな店舗なのにはられなかった。「ネット予約できる」だけの美容院だと自慢できない、そういう心理をちゃんと理解できていなかった。