操作距離
https://www.kajima.co.jp/news/digest/dec_2015/multimodal_view/image/img_multimodal_view_01.jpg
杉浦康平 - 時間地図
よさの探索空間において、ある位置から別の位置までの移動を、そのインターフェースを用いて何手の操作で完了できるかを表す概念。幾何学的に厳密な意味での距離ではなく、移動時間や歩数のようなものと考えてください。 マンハッタン距離
たとえば、ポケモンやボンバーマンのようなゲームで、十字キーをつかって主人公を動かす場合について考えてみます。たとえば、すぐ上のマスに移動するには↑の1手の入力で済みますが、斜め右上のマスの場合、↑ → の2手が必要、といった具合です。
2点$ p、$ q 間の操作距離はこのようになります。
$ D(p, q) = |p_{x} - q_{x}| + |p_{y} - q_{y}|
水平方向の距離と垂直方向の距離の和です。碁盤の目の道路上の道のりに似ていることから、マンハッタン距離と呼ばれます。 中心を現在位置、マス内の数字を操作距離とすると、こんな感じに図式化できます。
https://scrapbox.io/files/63292a69c78a8a001d746a70.jpg
ユークリッド距離
仮に、十字キーの代わりにアナログスティックが使えた場合、その操作距離は普段私たちが考える直線距離になります。これはユークリッド距離とも呼ばれます。 $ D(p, q) = \sqrt{(p_x - q_x)^2 + (p_y - q_y)^2}
図式化するとこんな感じ。
https://scrapbox.io/files/63292a5ead864c001f9379f8.jpg
その他の操作距離
では、テンキーでX座標とY座標とをフォームに数値入力できる場合はどうでしょうか。ゲームとしては遊びづらいことこの上ないですが。移動先の座標は頭に入っているものとします。数値入力を桁の大きさなどを問わず1手とカウントした場合、このようになります。
$ D(p, q) = \left\{\begin{array}{ll}0 & \text{if}\ \ p = q \\1 &\text{if}\ \ p_x = q_x\ \ \text{or}\ \ p_y = q_y\\2 & \text{otherwise.}\end{array}\right.
ルークや飛車が任意の位置に移動するのに何手かかるか? を表したものと考えると分かりやすいです。(baku89.iconは勝手に「飛車距離」と呼んでいます)
https://scrapbox.io/files/63292af5e8663a001df06dde.jpg
このように、インターフェースの性質は操作距離を規定します。ちなみに、冒頭画像の杉浦康平の『時間地図』は、交通機関を用いた移動を「操作距離」とみなした時の正距方位図といえます。
メモ
同時に1つずつしか調整することのできない1次元の入力の集まりからなるインターフェースの操作距離はマンハッタン距離
十字キー
スライダーからなるミキサー卓(ただし、多くのレコーディング・エンジニアは両手の指を同時に操る)
2ハンドル型水栓 = マンハッタン距離、レバー型混合水栓 = ユークリッド距離
Etch A Sketch = マンハッタン距離、スタイラス = ユークリッド距離
「操作にかかる平均時間」という連続量についても定式化したい
入力のぶれや、(そのツマミに触れる、触れ終えるのにかかる)予備・予後動作の時間、方向転換のコストを加味する
フィッツの法則は、操作距離がユークリッド距離のポインティングデバイスについての定式化 ある次元に着目したとき、ある値を別の値に変更するのにかかる時間でインターフェースを分類する
定数時間:値の直接入力、ドロップダウン(あまり数が多くない場合)
⭕ 値の表記が具体的に分かっており、どの値も現在値によらず一様に現れる可能性のあるパラメーター
例)誕生日、文字
線形時間
カウント方式: 方向キー、数値入力の横の上下矢印
⭕ グリッド上の位置合わせなど、望ましい値が離散的なパラメーター
速度入力方式:ジョイスティック、ThinkPadの赤ポッチ
⭕ 細かい位置合わせを必要とせず、操作の運動量を値の変化量に依らず最小に留めたいとき
対数時間:ポインティングデバイス、スライダー、ロータリーノブ
⭕ 広い範囲を取り得る連続量
ただし、身体のブレを最も拾いやすいので、ファインチューニングが必要なパラメーターは入力スケールを変更できる必要がある
液タブで絵を書く時、拡大縮小は必須機能
ミキサー卓のロータリーノブやスライダーのスケールは物理的に変えることができないが、精度をそこまで必要としないので必要十分
つまみの位置から絶対位置が分かり、絶妙なツマミの上下で相対的な変化を与えられるので良い