分人
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相手との反復的なコミュニケーションを通じて、自分の中に形成されてゆく、パターンとしての人格 ・ドゥルーズが示した新しい社会のあり方を、実際に実現させていこうという主張をした著作が、『なめらかな社会とその敵 鈴木健』である。例えば、個人概念に依拠した社会では選挙の投票権は一人一票だが、分人概念に依拠した社会では一人10票でもいいのではないか、という主張である。 平野啓一郎さんは「愛とは何か」ということも分人主義で定義しています。「相手の何か」が愛おしいというよりも、その「相手といるときの自分」「相手によって引き出される分人」が好き、というのが「愛」なのではないか。心地いい自分、落ち着く自分を引き出してくれるから、その相手が愛おしく、それが「人を愛する」ということだ、と定義しているのです。 分人の姿は精神疾患である多重人格(解離性同一性障害)を連想させますが、多重人格では個々の人格の主体としての〈私〉が解離され分断されてしまう点において、あくまで〈私〉の同一性が保たれている分人主義とは異なります。分断された複数の〈私〉がそれぞれの人物像をもつ多重人格こそが、戯画的に個人主義に呪縛されているのです。 出典