伝統とは火を守ることであり、灰を崇拝することではない
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「伝統とは火を守ることであり、灰を崇拝することではない」という言葉、素晴らしいと思って調べたら グスタフ・マーラー の言葉で、俺の中で最高のエモさを記録した 伝統とは良習と悪習を区別する基準のことだといってもよい。その基準は、抽象的には、人間の本性に巣喰う真善美への志向と偽悪醜への傾向とのあいだで平衡をとる際の支点にほかならぬといっておけばよい。(…)実は、具体的なシチュエーション(状況)が与えられれば、その平衡の支点(としての伝統)が具体的に何であるかは、正視してみればすぐみえてくるのである。たとえば、自分の女房が家族の面倒で疲れ果てているのを目の当たりにしたら、大丈夫かね、と声を掛けるのが伝統の精神に添う尤もらしい言葉づかいだと誰もが納得する日常の言葉づかいは、疑いもなく、伝統の上に成り立っているのだ。(p18-19) 伝統は、「昔のものをそのまま守る」ことではなく、「昔のものの魂を現代によみがえらせる」ことだ。現代作家のパスカル・キニャールは、伝統によって継がれる「昔のものの魂」は、”時間以前”のものであると書いた。彼はその時間以前の様態を「往古」と呼び、現在は往古によって更新されると説いた。