ライフスタイル
public.icon
連載第4回で紹介したように、アンソニー・ギデンズによれば、人生の正解を社会が与えてくれない再帰的近代化の時代には、自ら人生の軌跡を管理して、選択に一貫性が伴うよう統合していかなければならない。そのためには、「ひとつひとつは答えのない選択の帰結でありつつ、次の選択のために活かされることになる」ライフスタイルという装置が必要になる。 ギデンズはライフスタイルを「行為主体が行為を形づくる制度的な環境」とも表現している(145)。それは過去の経験の積み重ねによってつくられた一定のベクトルだと言ってもいい。このベクトルから外れてしまうと、たちまち選択の根拠を失ってしまう。予め枷が嵌められていなければ無数の選択肢のなかからなにかを選びとることなど恐ろしくてできなくなるだろう。この意味においてライフスタイルは、個々の選択に架空の根拠を与え、どの選択をしようとも生に一貫性を与えてくれる、ある種の拘束具のようなものだ、と言うこともできるかもしれない。