「話す、たたかう、作りだす」第3部講義メモ
03:42:04第3部開始
03:43:14 ゲームを作り出す人工知能
メタAIが基軸になる
これまでのゲームは人間がデータを作ってロードするものだったが、ゲームそのものがデータをつくり、運営するようになる
ゲームが非常に大規模になったので、そうならざるを得ない
03:44:24 生成AI
実際には80年代から開発されている
PCG(Procedual Contents Generation 計算によるコンテンツの自動生成)と呼んでいた
ブラウン運動による曲線で地形を生成(1987)
NO MAN'S SKY(2016)
惑星全体をローディング中に作る
フラクタル数学による生成
各デベロッパーの自家製ゲームエンジンにはだいたい自動生成機能が入っている
Far Cry2(2008):森の自動生成
こういう自動生成は先に技術があってゲームを考えたのか、作りたいゲームに技術が追いついてきたのか、どういう経緯?(伊勢)
後者ですね。特に海外はオープンワールドのゲームを作りたがっていて、それには自動生成が必要だった(三宅)
L-Systemによる街の自動生成
SIm Cityでは土地の資源の設定とマルチエージェントシミュレートによって街を生成する(Glassbox Engine)
https://www.youtube.com/watch?v=tKOgo7EFl_w
03:50:04 ゲームデザインそのものの自動生成
既存のゲーム構造をツリーで表現し、遺伝的プログラミングで混ぜ合わせる
AIにプレイさせて点数をつける→おもしろいゲームができてくる
遺伝的アルゴリズムによるルールの混合で作られたボードゲーム
白のプレイヤーから手番を時計回りに行い自分の色のコマをボードの好きな位置に置きます。このとき直線上に4目揃っていれば即座に勝利なのですが、4目並べるためには2個の連続して置かれたコマと1個のコマが直線上に繋がるように4目を作らなければなりません。もし3目が直線上に連続で並ぶ配置を作ってしまった場合はそのプレイヤーがゲームに敗北します。
03:52:30 「面白いマップを作るAI」の自動生成(PCGRL)
面白いマップを自動生成していたのが2015年くらいまで
今は「面白いマップを作るAI」を作っている
強化学習で、面白いマップのデザインを学ばせる
まだ「そもそも何が面白いのか」についてはまだデザイナーが判断しないといけないですよね(伊勢)
ゲームデザイナーの判断に応じて報酬を与えるので、ゲームデザイナーの分身ができるという段階(三宅)
単にアルゴリズムではなく、ゲームデザイナーの意図を汲んだ生成ができるはず
03:54:58 人工知能が製作し、人工知能がチェックする
AIがコースをつくり、AIにプレイさせて、評価させる
敵対的強化学習
https://www.youtube.com/watch?v=kNj0qcc6Fpg
それはAIの超人的な入力で無理やりいけてるみたいなパターンもありますよね(伊勢)
デバッグは何段階もするので、いちばん手元で早く回すテストをAIにさせられるのが重要(伊勢)
03:58:28 メタバースとゲーム
メタバースとゲームの違いは、ゲームのデータはアーティストが作るが、メタバースではユーザにツールを配り、エコシステムを作る
ツールがいまいちなので、ここに生成AIを入れるのがこれからのトレンド
2D画像は生成AIの質が高いが、音声や3Dデータ、アニメーションはまだまだ
オンラインゲームは現実とはなれていたほうがよいが、メタバースは現実との連携は歓迎される
04:02:05 メタバース、スマートシティ、ゲーム
メタバースはゲームに近いけどゲームじゃない
オンラインゲームは世界観、物語、キャラクターが綿密に設定されている それが売り
メタバースはからっぽ、ゆるい設定
スマートシティ技術で現実とメタバースが同期することに可能性がある
これはオンラインゲームにはできない 売りになる
デジタルツインとしてもメタバース
オンラインゲームは面白いからプレイしますが、メタバースはなぜ参与するのかが問われますね(伊勢)
面白かったらコンテンツなので、メタバースは面白くてはいけない。facebookもユーザーの交流が面白いのであって、facebook自体が面白いわけではない(伊勢)
04:04:49 qpp「つまんないのがメタバース!」 インターネットの情報探索は昔は検索エンジン、今はSNS。これからは(現実と同期した)メタバースかもしれない
奈良の鹿ミラーワールドがあれば、現実に奈良に行くより奈良の鹿が把握できる
04:08:22 qpp「でも生鹿のにおいは嗅げない( ˘ω˘ )」 メタバースの仮想空間にゲームエンジンを使用することで、ゲームのAI技術を応用できる
メタバースは現実と融合できる仮想空間
メタバースを集合知性として使う
現実空間の情報をメタバースに集約し、シミュレーションし、意思決定する
04:08:59 aotaka「現場に行くよりもシミュレーション空間のほうが俯瞰的に見れるという利点があるのか」 Collective Intelligence
メタAI型スマートシティ
メタバースで俯瞰で捉えることで現状の把握を助け意思決定をしやすくするのは重要な技術になりますね(伊勢)
予測(シミュレーション)ができることも利点(三宅)
現実のメタバースがそうなっているわけではないが…(三宅)
04:12:42 メタバースの歴史
いまのメタバースは第3期
第1期:ファンタシースターオンライン(2000)のロビー
ゲームに進まずロビーでだべっている
演劇、ポスターショーなどゲームとは直接関係ないコミュニティが生まれた
セカンドライフ(2006)
第2期:2008年ごろからゲーム産業がメタバースを作り始めた
ai sp@ce, meet-me, Playstation Home
収益化できず
第3期:The Sandbox(2012〜)は仮想通貨を導入(2017)してから活性化
Fortnite上でゲームをリリースできる機能
UGC(User Generated Content)
生成AIが最後の鍵?
04:17:32 SNS + ゲーム空間 = メタバース
Meta社のコンセプト
遊びの空間をどう位置づけるか
04:19:29スマートシティとメタバースの融合、 人間の行動変容
新しい現実:メタバースも含めた現実+メタAI
新しい現実と人間がエージェントを介してコミュニケーション
ゲームのフィールドも物理と仮想が混在するかも
オンラインゲームとメタバースの違いが現実との距離という話もありましたが、ゲームの世界はべつに確保されるのでは?(伊勢)
異世界転生的なオンラインゲームはそれとしてある。現実がいやでしょうがない人もいるので(三宅)
選択肢がひろがる
ゲームの体験をどう作るのかという話から、未来の生活そのもの話にも広がりました(伊勢)
04:23:46 質疑応答2
質問者A:機械学習でずっと回し続けているとうまくなるいいものが出てくるというのは、どういうことが起きているのか?
ゲームの面白さを定式化するのはすごく難しい。生成されるゲームも通常バランスが崩れている。先手が必ず勝つとか(三宅)
AIプレイの初手と後手で勝率を見て、均衡が取れるゲームにするところまではできるが、それが面白いかはまた別の問題(三宅)
最終的な判断は人間がする(三宅)
ゲームを自動生成する上での評価関数はどうなる?(質問者)
他のゲームの要素を分解して組み合わせるのは、人間でもすること(三宅)
つまんなくてもいろんな可能性を示す、製作支援の役割(三宅)
質問者B:世界を感じて生きられる人工知能を作りたい、という三宅先生のモチベーションのところで、いまどのようなことを考えていますか?
生態系を入れたいというモチベーションはあるが、ゲームの面白さにつながらない(三宅)
ただの標的になっているモンスターに重みを持たせたい(三宅)
敵同士の関係性をもたせたり、地形ごとの特性をもたせたりすることは今のAIテクノロジーでできるはずで、やってないだけ(三宅)
エンジニアとしてはやってみたいが、それをやってもゲームとして面白くないときはどういう判断を?(伊勢)
ユーザ体験を変えるかが一つの基準(三宅)
研究なら正当なシミュレーションをすればよいが、エンターテインメントはユーザのためにあるので(三宅)
質問者C:車産業の発展において、車が知能をもったり、キャラクターを持つような流れがある。こういったゲーム以外の産業の人工知能化の流れにユーザを楽しませるゲーム産業のノウハウが使えるか
自動運転になればドライバーはなにもしなくてもよいので、車がエージェントになる可能性はあると思う。あまり採用されないが(三宅)
車がAIになるには、感覚を持たないといけない。木の葉が乗ったら「かゆいです」というとか(三宅)
海外企業が狙っているのは車そのものではなく、街(スマートシティ)だと思う(三宅)
04:42:54 aotaka「車を制する者は街を制する!」 質問者D:ゲームAIは遊びを提供しているが、開発者はゲームAI自体を作ることが遊びと感じているのでは。ふつうのゲーム開発との違いは
つらいこともいっぱいあるが、ゲームAIを作ることは基本的には楽しい(三宅)
1000万本売れるようなゲームで、プレイヤーに楽しさを提供するAIを開発するのはやりがいがある(三宅)
ゲーム内でロボットのAIや仲間のAIを作るようなゲームもある(カルネージハート、ドラゴンエイジ)
質問者E:AIが発達すると海外のオープンワールドゲームのように作家性が見えないゲームが増えるように感じる。今後のゲームと作家性の関係はどうなる?
ゲームの規模が大きくなると、ゲームの主体が背後になって見えなくなる(三宅)
ユーザに自由度を与えているが、オープンワールドゲームも作家性はある。規模やつくりかたではなく、どういった世界を見せたいかが伝わるのが作家性のあるゲーム(三宅)
04:48:52 mayfair「作家性と主体(性)の関係に関するお話は興味深いです。一人でつくるからといって作家性があるわけではない、という指摘は確かに。」 質問者の意図としては、自動生成のツールを使うことでどのゲームも同じようなデータになるのではという意味かも(伊勢)
同じ素材を使っても違うものに見える使い方というのはある(三宅)
いわゆる洋ゲー的な海外のゲームはみんなFPSじゃないかという含みもあるかも(伊勢)
日本人はJRPGはみんな違うと思っているが、海外から見たら同じじゃんと言われる(三宅)
人気のあるジャンルはいっぱい出てくるし、微妙な違いはある(三宅)
質問者F:仮想空間は増えていくが、人間の可処分時間は変わらない。AIがその人の時間の使い方を最適化するようなテーマを研究している人はいるか
それはまさに僕ですよ(三宅)
仮想空間は同期コミュニケーションではなくていい。アバターはAIにまかせることができる(三宅)
人間関係の間に入れるのがAIのいいところ。人間関係を変えられるのも仮想空間のいいところ(三宅)
オンラインゲームは最近AIにプレイさせるモードがある。ひとつのアバターを人間とAIがシェアすることはビジネスになる可能性がある。そうすると可処分時間問題も解決する(三宅)
04:55:06 rankeigoo「なるほど。精度の高いコピーロボット。それは新しいな。」 社会全体にしてもそうで、あらゆることはAIに代替できるようにしておくのがよい。AIは効率は落ちるけど継続はできるので、休みやすくなる(三宅)
人間の仕事がAIに奪われるという話があるが、人間とAIの仕事の割合が柔軟に変えられれば生産的な話になりそう(伊勢)
仕事は属人性が高くなっているが、あとで自分の首を締める。AIができるような仕事にしていくのが理想的。そうなるとAIも賢くなる(三宅)
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