「話す、たたかう、作りだす」第2部講義メモ
01:40:39 第2部開始
01:41:09 ゲームを内側から構成するAI
ゲームを作り始めるときには、(AIとして認識すべき世界が)なんにもない
ゲーム産業ではゲームの一つの部品としてAIを作るので、(アカデミックに)評価のしようがない
ゲームを外側からプレイするAIは技術の見本としてそれ自体が価値になるけど、ゲームの一部だと全体の評価だから…(伊勢)
だから必ずしも高性能で賢くあればいいというわけでもなく、ユーザをいかに楽しませるか(三宅)
何が大変か
ボードゲームだと時間・空間が離散的→AIが考えやすい
デジタルゲームは連続時間・連続空間→AIにとってヘビー
1/60〜1/6秒で意思決定する
ただ、最善手でなくてもいい
AIをつくるときにはゲームそのものがない
01:45:42 ゲームの2つのルーツ
アクションゲーム
人工知能なしには作れない→敵が動かないから
ゲームの中でうまく運動するAI
環境や状況をうまく認識するAI
物語ゲーム
物語を進行するAI
物語の中で役を演じるAI
01:46:31 アクションゲームのAI
パックマンのAI
世界中でいまだに研究されている
岩谷徹:最初のゲームデザイナー
パックマンの仕様書 人工知能,Vol.34, No.1 pp.86-99., 2019. 所収
Kindle版もある
ゲームは仕様が変わるので最初の仕様書は当てにならない
ナムコは開発前の仕様書と開発後の仕様書がある
開発前仕様書が79年、開発後仕様書が80年
01:49:08 パックマンのAI技術
2つの波状攻撃:集合と離散を繰り返す→緩急をつけている
緊張と緩和の秒数が管理されている
4匹のモンスターの個性:追いかけかたにバリエーションを持たせている
絶妙に逃げられたり追い詰められたりする
生成タイミングコントロール:餌を食べた数でモンスターの生成がコントロールされる
スキルに合わせたレベルコントロール
スピードコントロール:プレイヤーとモンスターの相対速度が変わる
絶妙なところで遊びが成立している
01:54:08 tsk-himajin「パックマンはシンプルなゲームだと思ってたけど、めっちゃ深いんだなぁ」 01:57:22 デジタルゲームAIの流れ
ここからゲームAIは3つの人工知能に分割
キャラクターAI、メタAI、スパーシャルAI
ゲームAIのターニングポイントは94年(Playstation発売)
3D空間でキャラクターをひっっかからせず動かすには→ナビゲーションAI(スパーシャルAI)
01:58:39 qpp「岩にひっかかってるwww」 自由に動けるようになった→キャラクターAI
各キャラクターが勝手に動くから統率したい→メタAI
パックマンのAIはある種のメタAIだったが、時代を先取りしていたとも言えるし、時代がつながらなかったとも言えますね(伊勢)
僕の役目としては、メタAIの元祖はパックマンだったと伝えること(三宅)
当時(80〜90年代)は内部情報を一切出さなかった
調子がいいときは情報を出さない。日本のお家芸でできたのはPS2までで、PS3以降(2005〜)はコンピュータサイエンスの知見が必要だった
02:02:46 キャラクターAI
感じて(認識の形成)、考えて(意思決定)、行動する(運動の構成)
3D空間でキャラクターを動かすのはロボットのAIと同じ→MITやスタンフォードの研究が流入(90年代末〜2001年)
現在のゲームは世界も複雑で、キャラクター自体も構造が複雑
初期のゲームは敵の決まったパターンをプレイヤーが学習してスキをつくゲームだった
90年代の2Dゲームは間合いを取って戦うAIに
3Dゲーム時代には、複数の自立型AIが進むべきか、隠れるべきかを判断して集団で動ける
強化学習によるキャラクター制御(2023)
02:09:38 スパーシャルAI
空間解析AI
マップを移動できるポイントのグラフに分割して、パス探索を行う
https://www.youtube.com/watch?v=l7YQ5_Nbifo
昔はグラフを手で作っていたが、今はUnreal Engineが自動でつくってくれる
この技術でキャラの動かし方やプレイヤーの進み方を考えずマップやキャラクターを自由に作れるようになった
キャラクターを場所から開放し、ゲームデザインの自由度を飛躍的に向上させた
空間を解析する
アクションゲームは空間認知能力に左右される
人間が強い
ゴールデンパス(プレイヤーの行き先を推測した経路)を推定
プレイヤーの経路に加減しながら敵を配置(メタAI)
目的地に誘うNPCをゴールデンパスから見える位置に配置
ヒートマップ
プレイヤーの勝ち/負け位置を統計
FF15をやったときにびっくりしたのが、プレイヤーを先回りするように仲間のNPCが動くこと(伊勢)
最近はゲームエンジンがプレイヤーの経路推定をしてくれる。それくらい一般的な技術(三宅)
ゲームAI業界は横のつながりが強くて、どこかが開発すると真似されて標準化される
空間をNPCがうまく使うと、プレイヤーが感心してくれる。ゲームのユーザーへのアピールポイント(三宅)
02:20:26 スマートオブジェクト
80年代からの技術
AIは道具を使うのが苦手。人間のほとんどの物とのインタラクションは無意識 物のほうに知能をもたせるのがスマートオブジェクト技術
ドアの近くにキャラクターが来たらノブを掴ませドアが開き、キャラクターを通らせる
これは予習をしていてすごくおもしろいと思いました(伊勢)
イェスパー・ユール『ハーフリアル ―虚実のあいだのビデオゲーム』によると、プレイヤーが何をできるかを規定するものという意味でゲームのルールはプレイヤーとアフォーダンス的な関係がとされている。つまりゲームそのものとプレイヤーの関係とキャラクターとオブジェクトの関係が二重にアフォーダンス的な関係をもつことになっている(伊勢) もうひとつは、ギブスンのオリジナルのアフォーダンス理論は主体と環境の認識論的な関係だが、キャラクターとスマートオブジェクトではアフォーダンス的でありながら関係が逆転している(キャラクターが認識しているように見えるように環境をつくっている) 点で不思議なことが起きているように思う(伊勢)
アフォーダンスの問題はゲームが3Dになった2000年ごろのゲーム産業の中心的課題だったが、本来のギブスンの議論からいうとかなり卑近なものだった(三宅)
ナビゲーションメッシュのような、AIのために表現された世界の情報(世界表現)がアフォーダンスの代わりのもの。キャラクターAIに直接認知させる余裕はないので(三宅)
スマートオブジェクトはおっしゃる通り主客転倒ではある。ただ新しく導入されたロボットが0から空間を認識するのは無駄なので、空間AIのような貧弱なAIに空間を使わせる技術は必要になる(三宅)
一方で、今後はそれぞれのエージェントに個別に認識させるべきだ、という話にはならないんでしょうか?(伊勢)
両方ある。それぞれに学習コストが取れればそれが一番いいが実際はそうはならない(三宅)
どんなに頑張ってもAIは空間認識は苦手なので、環境にAIをもたせるのが合理的
空間AIをどうすれば個々のAIが賢く行動できるか、という問題はコモングラウンドと呼ばれて研究されている(三宅)
空間AIによって現実空間とメタバース空間を同期させる、といった技術も可能になる
空間そのものをAI化するという発想はゲーム産業から出てきたものだが、これはこれから現実空間で重要になる(三宅)
02:35:41 メタAI
ゲーム産業で最重要のAI。「ゲームそのものがAI」という形態
ゼビウスの敵出現テーブル巻き戻し
プレイヤーのスキルに合わせてゲームのレベルが調節される
80年代のメタAIの原型
スキルをユーザに合わせてあげないとゲームが楽しくなかった
キャラクターAIの発展にともない、メタAIの役割が変わる 積極的に関与
メタAIはユーザの緊張度(手の発汗量など)を見て、ピークになったら3秒後まで敵を出し、その後減らす
緩急をつける
ゲームが大規模になると、AIが人工的にゲームの面白さを作り出さないとプレイヤーのニーズに答えられない
「AIディレクター」とも
製品ではどうやってプレイヤーの緊張度を測るんですか?(伊勢)
単位時間あたりの被ダメージ量とその時の距離の逆数と、開発中の発汗量のピークを合わせるように調整する(三宅)
近くで敵を倒しているときは緊張度が高い
コントローラの入力量も取る
プレイヤーの視界、ゴールデンパスから敵の生成ポイントを決める
ダンジョンのパーツのメタAIが構成して飽きが来ないゲームを提供する
開発のレベルが1段階上がって、「ゲームを作るAI」を作るのがゲーム開発者の仕事になる
ゲームデザイナーの仕事も変わっていく?(伊勢)
まさに、AI開発はゲームデザインの真ん中とぶつかるので、面白いけど大変。デザイナーと喧嘩になることもある(三宅)
メインのダンジョンは人間がデザインすればいい。サブクエストのマップはAIに作らせればいい(三宅)
ゲームデザインのLOD(Level of Detail)を設定する
02:50:07 mayfair「ゲームAI開発者がゲームデザイナーの仕事を更新していく、という関係はとても興味深いですね。」 02:50:01 Starcraftにおける人工知能
日本ではあまり知られていない。韓国ではPCにバンドルされていたせいで老若男女みんな知っている。プロリーグがある
非常に複雑なゲームで、このゲームのAIを作るのが学術的にホット
2006年くらいにStarcraft2が出て、研究がDeep Larningに変わった
開発会社(ブリザード)が研究者用にAPIを公開した
DeepMind者が研究者用のフレームワークを開発した
https://www.youtube.com/watch?v=FWbVseLiopw
マルチタスクで、戦略性があって、スケジュール、資源管理ができるAIが作りたい
将棋、囲碁に続く人工知能のゆりかご
02:58:33 eSportsとAI
eSportsは日本のアーケードゲームから始まっている
アメリカでFPS対戦 → リーマンショックで吹っ飛ぶ 韓国でMOBAスタイルの対戦
OpenAIのAIと人間が対戦
03:01:18 物語ゲーム
物語ゲームの元祖はTRPG
ELIZA(1966)
ゲームではない。人工知能による対話エージェントの原型
https://www.youtube.com/watch?v=RMK9AphfLco&t=31s
いまでいうChatGPT
ELIZA → Ecala → Dungeon(テキストベースのCRPGの起源)
テキストアドベンチャーゲーム(1970's)
ゲームシステムが話し相手になる→キャラクターが介在して語りの主体が見えなくなる
別の文脈を付け加えると、「語り手」という言葉は文芸批評と関連のある言葉で、小説などではむしろ語り手は見えているのが一般的だが…(伊勢)
文芸は言葉で語るが、ゲームは言葉以外で語るナラティブの手法が発達してきた(三宅)
シムシティ(1989)
内部処理としては、4層のシミュレーション(人工知能的な主体)が動いていて、プレイヤーはシステム(人工知能)と対話している
しかしその主体は隠され、表面的には街の発展(ナラティブ)を見ている
Creatures(1996)
https://www.youtube.com/watch?v=bj7VTa1TL8Q
クリーチャーに物と言葉の対応を覚えさせるゲーム
ニューラルネットによる人工知能システム
プレイヤーはAIキャラクターとインタラクションする
キャラクターの成長がナラティブ
アストロノーカ(1998)
遺伝的アルゴリズムで成長するキャラクターが登場
内部的に20世代のシミュレーションを行っている
成長(ナラティブ)を感じる程度の発展のためには複数世代の経過が必要になる
シーマン(1999)
普通の会話はAIは苦手
会話で重要なのは音声
同じ言葉を違う音声でいっぱい録音している
間をコントールする
聞こえなかったら怒る
SIms
Sim(AIエージェント)を観察するだけのゲーム
プレイヤーができるのは家具を置くだけ
モチーフエンジン:8つの心理パラメータの増減でキャラクターの行動が変わる
パラメータのウエイト曲線により、パラメータ増減から幸福度が算出される→個性が生まれる
CADIA Poplus
RPGの街で人を出せば出すほど寂しくなることがある
相手が背中を見せると違和感を感じる
人が近くにいるときに向かい合うようにする
物語ゲームは語り手(AI)とプレイヤーが直接対話せず、キャラクターなどを介在して対話することで、言葉でないナラティブを発生させる
GPTをゲームに組み込む
これも対話をそのままゲームにするのではなく、LLMの出力を間接的なナラティブとしてプレイヤーに提供する
LIGHT
facebook labのテキストアドベンチャーフレームワーク
Textworld
MS lab
テキストアドベンチャーゲームで学習したAI
マイクラのAI研究