「フロイトとラカンだけじゃない現場の精神分析」第1部講義メモ
00:02:14 住本さんから山崎さん紹介
2023年の総会にも出演
本日は精神分析のよさをがんがん説明していただく回という…(住本)
前回(刊行記念イベント)では客席の東畑開人さんに「精神分析のよさが伝わらない」と言われたので、頑張らないといけない(山崎) 臨床家の泣き所は、患者を見ていることにより、言えないことがあること
今日は有料部分では無料では話せないアツい議論をしたい(山崎)
00:04:54 講義開始
タイトルは『間主観的なできごととしての「まちがい」』
私たちは、失敗すること──その患者に固有のやりかたで失敗すること──によって成功するのである
Donald Woods Winnicott(1963)
00:07:08 スケジュール
今日の中核の図式は「外傷論 vs 欲動論」
精神分析的なものをどう伝えるか
数字(エビデンス)にのせて伝えるのがどうしても難しいし、精神分析家自身がそうではないと思っているところがある(山崎)
だから事例で伝える
今日のスライドも100枚を超えてます(住本)
何時間かかるんだという…でもゲンロンなので。精神分析も基本的にオープンエンドです(山崎)
事例を読んでいても「ここで1年間の膠着があった」とさらっと書かれていて…(住本)
00:10:51 noguchi-k「セッション1つ1つの時間は決まってても、何回やるかとかはわからんのですね」 1年って週1だとして45回、週4なら180回会っているわけで、外の人から見たらなにやってるの? ということですよね(山崎)
今日はその中身を説明してわかってもらいたい
00:11:39 山崎さんの自己紹介
臨床心理士・公認心理師
臨床心理士が民間資格で公認心理師が国家資格
精神分析家ではない
細かく言うと、自分は精神分析をしている人ではない。精神分析的心理療法の訓練を受け実践している人(山崎)
精神分析家になるには自分が精神分析を受け、精神分析家2名以上の指導(スーパービジョン)を受ける必要があり、10年以上かかる
藤山先生の上智大学での2008年の講義の書き起こし
精神分析を知りたい人にはこの2冊をすすめている(山崎)
心というものが重視される時代があった。「心の闇」とか(山崎)
95年が屈折点
オウム、阪神大震災、スクールカウンセラー事業の開始、エヴァ
日本の分析は輸入文化だった(山崎)
アムステルダム・ショック(1993)
国際団体から日本の精神分析の不備を指摘された
改善の結果、社会との接触を失いつつあるのかもしれない(山崎)
精神分析とは
フロイト(1856-1939)によって創始された、思想であり、臨床実践であり、治療療法 20世紀の基礎思想のひとつ
國分功一郎さんに偶然会ったとき、そう言っていた(山崎) 00:27:05 実践としての精神分析
週4回以上、1回45-50分、自由連想法、カウチ
カウチを使った精神分析(的心理療法)
患者にカウチに寝てもらい、分析家は頭の後ろで横を向く。目が合わない
自分はそう教わったが、人によっては分析家のみ患者を見る場合もあるらしい(山崎)
精神分析では、治療構造といって週何回会うか、実践でどのように目を合わせるのか、合わせないのかなどをしっかり決めていますよね(住本)
精神分析的心理療法では対面の場合もある。そういった構造ごとのメリットデメリット、特質を研究してその人に合った方法を提案することに関心がある(山崎)
対面のメリットデメリットは?(住本)
対面はハイリスクハイリターン(山崎)
パワフルで伝わるが、伝わったほうがいいことと悪いことがある
ゆっくり伝わったほうがいいこともある
カウチだと伝わり方が遅い
心的距離が遠いので、あえて距離をとったほうがいい患者にはよい
そもそも心的距離が遠い人には逆効果
週4回以上とされているが、それすらもいろいろ
自分の経験から言えるのは、週2と週1はぜんぜん違う(山崎)
週1だとやったことを話して終わってしまうが、週2だと話すことがなくなり内的なことを話さざるを得なくなる
精神分析的心理療法の最下限が週1(山崎)
転移を中核に置くためには人間関係が密にならないといけない。そのためにはある程度の頻度が必要 00:38:32 精神分析と精神分析的心理療法
精神分析と心理療法は別物?
別物であるという立場
「精神分析は精神分析であり、精神医学でも臨床心理学でもない」
ラカン
連続体であるという立場
精神分析にも心理療法的な側面がある
言い切ったほうがかっこいいが、求めている人と求めてないひとがいるしなと(山崎)
政治的な立場
POST(精神分析的サポーティブセラピー)
あえて精神分析的と日本のコミュニティで言われていないものをそう呼ぶことにした(山崎)
精神分析の敷居を下げるため
精神分析協会と精神分析学会
精神分析協会は職能団体(ギルド)
50人ほど
精神分析学会は学術団体
3000人ほど
00:46:37 na-ya「よく精神分析的心理療法なんて耳にするけどPOSTの事なのかな」 僕の区別では(山崎)
POSTは適応という明確な目標がある
精神分析的心理療法には目的がない
わかりやすく言うと、会社にいけない人が行けるようになるためのカウンセリングに精神分析の知見を活かすのがPOST?(住本)
わかりやすく言うとそうで、現実にはスペクトラムがある(山崎)
00:49:31 商品たち──セラピー、マネジメント、CBT
外から見ると「カウチのある部屋で二人が会っている」という状況は変わらないが、やっていることが全然違う(山崎)
CBTの場合は二人でしゃべる
心理療法のときは自分はほとんどしゃべらない(山崎)
優先順位
生活回ってない人に精神分析やりましょうはまずい(山崎)
セラピー(精神分析/的心理療法)は出番がない
セラピーは贅沢品?
本当にそれでいいのか
日本人は心のことに金を払わない?
00:57:05 サイコロジカルトーク
言語化しない日本の臨床心理の文化
精神分析は言語化する
01:00:05 (私の)臨床で何が求められるのか
解決を求められる
01:01:09 セラピーで何を売っているのか
時間を売っている/関係性を売っている
「ライバルは水商売と宗教」
01:08:22 ここでしかできない話
守秘義務
すべてはケースバイケース
精神分析の重要なところは人間の生物性を大事にしているところだが、現在では大々的に言えない(山崎)
01:13:33 自由連想法という免責
現代は思うことすら禁じられているので、「頭に思い浮かんだことをすべて言わなければならない」というのは、むしろ免責となる
言うことを強制されているので、「言っても俺の責任じゃない」と思える
価値判断を(なるべく)含めない空間を提供する
01:16:35 精神分析といえば、フロイト
精神分析はユダヤの文化(山崎)
もともと神経内科医(✕精神科医)
ヤツメウナギの解剖とかをしてた
妻のことがめちゃめちゃ好き(山崎)
→大学をあきらめて開業
01:20:47 外傷論と欲動論(本日の基本図式)
外傷論
精神症の原因は実際の性的外傷、性的誘惑である、という説
このあと出てくる環境論も外傷論側ですね(住本)
欲動論
患者の想起は現実ではないのでは?
「心的現実」
僕はこれこそが精神分析だと思う(山崎)
心的には現実だ、というところを真剣に取り扱うところが精神分析の魅力
心的現実が人間にとってどれだけ大事か
欲動から派生する空想
フロイトはある時点まで外傷論で考えていたが、のち欲動論に変化
01:24:32 na-ya「思想が変わるきっかけとかあったのかな」 時代の制約があったと言われている(山崎)
01:26:08 フロイトの治療論
無意識によって人は駆動され、無意識が症状を形成する
無意識の派生物
症状、夢、失錯行為、転移
失錯行為は言い間違いとかですね。小学校のときに先生を「お母さん」と読んでしまうのは…(住本)
それはある種転移みたいなことで、先生にお母さん的なものがあるからそうなる(山崎) 転移という言葉は心理系の本を読んでいるとあっさり出てきて説明されないままなことも多いですが、今日は転移の話がこれから出てくるわけですね(住本)
転移も細かく言うといろいろあるので、今日はあくまで私の説明だと思って、興味が出てきたら…勉強してくださいね!(山崎)
ブランクスクリーンモデル
本来治療者はこんなところには絶対出ない!(山崎)
「この人何考えているのかわからない」と思わせるのが大事だった
クライアント側の空想が投影されるスクリーンになる
では前半はここまでで(住本)
後半82ページある…(山崎)