B:殺戮兵器オムニ
伝説によれば、アラグ帝国時代の末期には、巨大化した領土のあちこちで、反乱が起こっていたそうな。相次ぐ反乱を平定するため、アラグ帝国軍が投じたのが、決して裏切ることがない、機械の兵士だったのだとか……。当然、人工浮遊大陸とやらにも配備しておったろう。件の商人は、お宝が眠る場所の安全を確保するために、そんな機械兵の親玉を破壊してほしいそうな。まったく、珍妙な依頼じゃわい。
~クラン・セントリオの手配書より
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ショートショートエオルゼア冒険譚
今から5000年以上前、アラグ帝国は魔法と科学を融合した「魔科学」を発展させ、高度な技術を誇る文明をもってエオルゼアを統一した。
栄華を誇ったアラグ帝国だったが始皇帝ザンデの死後、一度は退廃の一途を辿り、その力はどん底まで落ちた。現状を憂いた大魔道士アモンは魔科学の粋を集め、アラグの帝都が存在した銀泪湖の湖畔に、太陽の力を集積する巨大装置「シルクスの塔」を建造し、莫大なエネルギーを手に入れ、さらに死者を蘇らせる秘術によって始皇帝ザンデを復活させた。
復活したザンデはエオルゼアでは飽き足らず南方メラシディアに侵攻。先住種族の一つドラゴン族の七大天竜の一翼である光竜バハームートを打ち取った。しかしその直後、同じ七大天竜の一翼である闇竜ティアマットに敗れるなど一進一退の攻防を存分に楽しんだという。
ザンデは、さらなる力を手に入れるため、「魔科学」の蛮神を従える技術で「ソフィア」「セフィロト」「ズルワーン」の三闘神を捕獲し、その力を抽出して手に入れるため人工の浮島であり、アラグの研究施設であった魔大陸アジス・ラーへと封印した。
また、異界「ヴォイド」の魔王「暗闇の雲」と契約し、死者を拠り代として召喚する「妖異の軍勢」を従え反撃に出た。
妖異の軍勢を召喚することでエーテルを大量に消費し、枯渇させ、ティアマットが蛮神として呼び出したバハムートの力を削ぎ、対蛮神兵器「オメガ」の力でバハムートを捕獲。ティアマットを倒し、アジス・ラーに鹵獲した。そしてついにザンデは南方大陸の統一に成功する。
この時代のアラグ帝国は死者の復活を始め生物や魔物同士を融合し新たな生命体とするキメラ技術や蛮神の捕獲技術などその魔科学はまさに人知を超え、神の領域へと踏み込むものだった。現代でも理解が及ばない不思議な現象や想定できないような事態や災害に瀕した時には誰かがどこかで「大体アラグのせい」と噂するほど突拍子もなく出鱈目な技術力だった。一部機関の報告に端を発した噂によればその飛躍的ともいえる技術の発展にはアシエンが関与しているとも言われている。
しかし全世界を手中に収めたザンデの心に残ったものは達成感でも万能感でもなく虚無だった。
その後は己が手にした世界のすべてを無に帰すこととしたザンデによってアラグ帝国は滅亡へと突き進んでいくのだが、それはまた別の話。
南方大陸を手に入れ、かつてない程広大な国土を持つ国となったアラグ帝国ではまさに日常的に大きな反乱が各地で頻発していた。その各地の反乱をおさめるためには揺るがない忠誠心と精神力を持ち、尚且つ優秀な将兵が必要だったが、いかに世界を制したとはいえ国土が広すぎて、とてもそれほどの人材は確保できなかった。そこで利害や感情に左右されることがない機械兵による殺戮兵団を配備したのだという。アラグ帝国の滅亡とともに各地の機械兵団は独立した国家により駆逐されたが、もともとアラグの研究者しか訪れる者もなく、管理する者も存在しない人工浮遊大陸アジス・ラーにはその機械兵団の指揮個体が今もそのまま存在し、残った機械兵の統制を取って警備を行っているという。
当時高度な技術を生み出した粋を集めた研究機関がそのまま残るアジス・ラーは古代アラグ帝国研究者やその手の品物を得意とする古物商やコレクターには宝の山であり、まさにボーナスステージであり、まさに聖地でなのだ。それを考えれば依頼してきた商人の気持ちも理解はできる反面、その宝物を安全に物色し持ち出すために、宝物を守ることを目的として配備された機械兵を排除して欲しいとその組織の維持に公金まで使われている機関がいうのだから、簡単に言えば公的機関からコソ泥の片棒を担げ、といわれているということになる。いつの時代も恐ろしいのは人の欲という所だろうか。