バナナ軌道
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バナナ軌道は、トカマク型核融合装置のような磁場閉じ込め装置内で荷電粒子が描く、特有の螺旋状の軌道を指します。この名称は、実際の軌道がバナナの形に似ているために付けられたものです。バナナ軌道は、核融合装置内のトーラス型磁場に特徴的な現象です。 トカマク型核融合装置では、プラズマを閉じ込めるために強力な磁場が使われます。荷電粒子(例えばアルファ粒子やイオン、電子)は、磁場中でローレンツ力の影響を受け、螺旋状の軌道を描きながら磁力線に沿って移動します。この螺旋運動は、磁力線に沿った平行方向の運動と、磁力線に対して垂直なシクロトロン運動(またはジャイロ運動)の組み合わせによって構成されます。 トカマク型装置における磁場の特徴
トカマク装置の磁場は、トロイダル磁場(トーラス型の円周方向の磁場)とポロイダル磁場(円環の断面を回る磁場)の2種類の磁場で構成されています。この2つの磁場の組み合わせにより、プラズマの粒子はトロイダル方向に沿って螺旋を描きながら運動します。しかし、トカマクの磁場は一様ではなく、トーラスの外側(低磁場領域)よりも内側(高磁場領域)で磁場が強くなります。この不均一な磁場がバナナ軌道の形成を引き起こします。 バナナ軌道の形成
荷電粒子がプラズマ中で運動していると、以下のようなメカニズムによってバナナ軌道が形成されます。 1. 磁場の強度変化: トカマクの中心に近い部分では磁場が強く、外側では磁場が弱いという勾配が存在します。このため、粒子は磁場が強い内側で速度が減少し、磁場が弱い外側では速度が増加します。 2. トラッピング現象: 磁場の不均一により、荷電粒子の平行方向の運動が変化します。磁場の強い領域(トカマクの内側)で粒子が減速すると、磁場の圧力に押し戻される形で反転し、再び外側に向かって運動します。このプロセスを繰り返すと、粒子は内側と外側を交互に移動しながら、螺旋状のバナナ形の軌道を描きます。粒子がこのように閉じ込められた状態をトラッピングと呼びます。 3. 平行速度の反転: バナナ軌道を描く粒子は、磁場の強い領域で一時的に平行速度がゼロになり、その後反転して再び磁場の弱い外側に向かう。このように、バナナ軌道を描く粒子は、プラズマの中で捕捉されているため、通常の運動とは異なる特異な挙動を示します。 バナナ軌道の影響
バナナ軌道を描く粒子は、トカマク内の磁場に閉じ込められており、完全にプラズマから失われることはありませんが、次のような影響があります。 1. 閉じ込め効率の低下:
バナナ軌道を描く粒子は、磁力線に沿って移動する他の粒子と比較して、装置の内壁に接近する可能性が高まります。これにより、粒子の一部が装置の壁に衝突して失われることがあります。この現象は軌道損失と呼ばれ、プラズマのエネルギー閉じ込め効率を低下させる要因となります。 2. エネルギーと熱の輸送:
バナナ軌道を描く粒子は、プラズマ内でのエネルギーと熱の輸送に影響を与えます。これらの粒子はプラズマの外側まで運ばれるため、プラズマ中心から外側へのエネルギーや熱の輸送が増加します。これは、プラズマの温度や密度分布に影響を与える要因です。 3. 磁気島との相互作用:
バナナ軌道を描く粒子は、プラズマ内の不安定性や磁気島と相互作用しやすくなります。これにより、プラズマの安定性や閉じ込め特性が変わる可能性があります。 バナナ軌道を制御するための工夫
トカマク装置では、バナナ軌道による粒子損失やエネルギー輸送を抑制するため、次のような対策が講じられます: 磁場の最適化: 磁場の強度分布を調整し、粒子が軌道を離れて損失しないように制御します。
MHD安定化: 磁気流体力学(MHD)不安定性の抑制により、プラズマの安定性を維持し、粒子損失を防ぎます。 まとめ
バナナ軌道は、トカマク型核融合装置において、荷電粒子がトラッピングされる結果として現れる特異な軌道であり、磁場の不均一性によって引き起こされます。この軌道は、プラズマの閉じ込め効率やエネルギー輸送に影響を与えるため、核融合研究において非常に重要な要素です。 詳しくは、以下参照masaharu.icon