TFTR
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TFTR (Tokamak Fusion Test Reactor) は、アメリカ合衆国プリンストン研究所(Princeton Plasma Physics Laboratory、PPPL)で建設された、トカマク型の実験炉です。TFTRは、核融合研究において非常に重要な役割を果たした装置で、特にトカマク型炉の性能を大規模にテストするために設計されました。ここでは、TFTRの背景、設計、実験成果について詳しく説明します。 1. TFTRの背景
TFTRは、1982年にアメリカで運転を開始し、1997年に閉鎖されました。これは、核融合研究における重要なステップであり、商業炉の実現に向けた知見を得るための実験装置でした。
当時、核融合炉は、現在の原子力発電所に似たものとして、クリーンでほぼ無限に近いエネルギー源として期待されていました。商業炉を実現するためには、トカマク型炉で十分なエネルギーを得ることが必要とされ、そのためにTFTRは、トカマク技術の実証試験を行うために作られました。 2. トカマクとは
TFTRが採用したトカマク型炉は、強力な磁場を使ってプラズマ(高温のイオン化気体)をトロイド(ドーナツ形)に閉じ込め、核融合反応を起こすことを目的としています。トカマク型炉は、1950年代にソビエト連邦で初めて実験され、その後、世界中で最も広く研究されている核融合炉の設計となりました。 トカマクの中では、高温プラズマを数千度(場合によっては数億度)に加熱し、圧縮して高密度にすることが求められます。核融合反応が進行するためには、これらの条件が十分に整う必要があり、磁場を使用してプラズマを炉内で閉じ込めることが重要です。 3. TFTRの設計
TFTRは、6メートルの直径を持つトカマク型炉で、主に以下の主要な機能を備えていました: 超伝導コイル: TFTRは超伝導磁石を使用し、これにより非常に強い磁場を発生させることができました。これにより、より高温・高密度のプラズマを保持することが可能となり、効率的な核融合反応の実現が目指されました。 プラズマ加熱: TFTRでは、プラズマを加熱するためにいくつかの方法が用いられました。その中で特に注目されたのが中性粒子注入(NBI: Neutral Beam Injection)です。これは、高エネルギーの中性粒子をプラズマに注入してエネルギーを与える方法で、TFTRではこれを非常に高い精度で実施していました。 トライアル燃料: TFTRでは、主に重水素(D)とトリチウム(T)を燃料として使用しました。重水素とトリチウムが融合すると、ヘリウムと高エネルギーの中性子が生成され、その中性子が周囲の材料にエネルギーを伝えることで、商業的なエネルギーを得ることができます。
4. 重要な実験結果と成果
1994年の実験でトリチウム-重水素(DT)融合反応において、最大で Q ≈ 0.3 という値が報告されています。このQ値は、実験的な核融合装置において、炉に投入するエネルギーに対して得られるエネルギーの比としては大きな進歩ではあります
また、DT(重水素-トリチウム)融合の実験では、これまでの中で最も高い融合パワーが記録され、商業的な核融合エネルギーの実現に向けた道筋が見えてきました。
5. 技術的な課題
TFTRが示した成果にもかかわらず、いくつかの技術的な課題が浮かび上がりました:
トリチウム供給: トリチウムは自然界にはほとんど存在せず、商業炉で使用するためには、炉内でトリチウムを生成する必要があります。この技術の確立が今後の課題となっています。
プラズマの安定性: 高温・高密度のプラズマを長期間安定して保持することは非常に難しく、これを実現するためにはより高度な技術と理解が必要です。 材料問題: 高エネルギーの中性子が炉の壁材に当たることで、材料の劣化が進みます。これを防ぐための新しい材料の開発も大きな課題です。
6. TFTRの後継機
TFTRが1997年に運転を終了した後、その技術的な成果はITER(International Thermonuclear Experimental Reactor)などの後継装置に引き継がれました。ITERは、より大規模な核融合実験炉として、商業的な核融合エネルギーの実現に向けた最も重要なプロジェクトとなっています。ITERでは、さらに進化した技術が使用され、より大規模なエネルギー収支を達成することを目指しています。 7. 結論
TFTRは、核融合研究における重要な実験炉であり、商業炉の実現に向けた貴重なデータと知見を提供しました。特に、重水素-トリチウム融合反応でQ値が1を超えたことは、核融合が現実的なエネルギー源になる可能性を示す重要な成果でした。現在もTFTRの技術と成果は、次世代の核融合研究に大きな影響を与えています。
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