駄作のレシピ
この短い講釈を終えるにあたって、 一言だけ警告しておきたい。 なんらかの問題意識やテーマにもとづいて書くというのは、駄作のレシピである。 優れた小説はかならずストーリーに始まってテーマに終わる。 テーマに始まってストーリーに行き着くことはまずない。 ごくまれな例外は、 ジョージ・オーウェルの 『動物農場』くらいのものだろう(この作品とて、 ストーリーの原案のようなものは最初からあったと私はにらんでいる。 あの世でオーウェルに会ったら、 尋ねてみよう)。書くことについて ~ON WRITING~ スティーヴン・キング p.225 ストーリーのなかで繰りかえし現われるものは何か。 それらは撚りあわさって、 テーマをかたちづくるだろうか。 言葉を変えるなら、 “つまり何が言いたいんだ、スティーヴィー?" ということだ。 こういった意識の底にあるものをより鮮明にするためには、 何をすればいいのか。 大事なのは、 読者が本を閉じ、 書棚に戻したあと、しばらくのあいだその頭と心に余韻が響くことだ。 メッセージや教訓を恩着せがましく押しつけることではない。 そのようなものは日の当たらないところに押しこんでおけばいい。 大事なのは余韻を響かせることであり、のために求められている は、 自分 を言おうとしているかをはっきりさせることだ。p.231