言葉で全部伝えようとしない
「王子たま」. 思わずダイニングキッチンの椅子に腰掛け、テーブルの上で拳を固めた僕に、君はまるで諭すような口調でいいました。 「言葉なんて、思ったことの全部が、伝わらなくて当然なんだよ」 僕は君のその台詞に思わず、 落としていた頭を上げ、 僕の横に立つ君の顔を見詰めました。 君は静かにいいました。 「私は、話すのが苦手で、それを治さなきゃと思って、一生懸命、 自分が話すのが苦手な訳を、考えたの。 モデルのお仕事をやる少し前くらいに。 そしたら、 解ったの。 私は、自分の考えていること、思っていることを、相手に全部、ちゃんと伝えようとするから、話せなくなるんだって。 気持ちって、 言葉なんかじゃ、 半分も伝わらないの。 言葉ってそういうものなんだって思ったら、 急に、 楽になったの。 相変わらず、 お話するのは下手だけど、 上手くなったって、どうせ全部、思ってることを伝えることなんて出来ないんだからと考えるようにしてからは、少しは人とちゃんとお話が出来るようになったよ」 ロリヰタ。 嶽本野ばら • 128ページ 「でも僕は作家で、 言葉を使って全てを伝えなければならない仕事をしているんだ。 僕から言葉を取ってしまったら、何も残らない」 「そんなこと、 ない。 だって、王子たまと、 私はちゃんとお話が出来ているじゃない。 私はまだ小学生だし、 言葉を、大人で作家の王子たまより、 とてもとても知らないの。 だから王子たまが喋ることの中に、解らない言葉、一杯あるよ。 メールなんか、 読めない漢字が一杯あって、困るよ。 でも王子たまが何をいおうとしているのかはちゃんと解るし、 気持ち、伝わってるよ。 もし、 言葉だけで気持ち、 全部、 相手に伝えられるんだったら、 メールの遣り取りだけで、 満足出来ると思う。でも、いくらずっとメールし合っていても、直接、お話したくなるでしょ。 それは、言葉が気持ちを伝えるんじゃなくて、気持ちを言葉が伝える為に、あるからだと思うの。自分でいってて、こんがらがってきたけど、いってること、王子たま、解る?」何か、「解る――」 僕は深く頷きました。ロリヰタ。 嶽本野ばら 129ページ 言葉を知っている作家が、言葉をまったく知らない、でもメールの絵文字ならたくさん知ってる子どもから教わる真実「言葉が気持ちを伝えるんじゃなくて、気持ちを言葉が伝える為にある」そして「気持ちって、言葉なんかじゃ、半分も伝わらない」。
言葉で上手く伝えられない悩みには大きく分けて2種類ある。
1つは「口下手」。あまり言葉がすぐにはポンポンと出てこない。もう一つが多弁。全部伝えようとしてしまい、すべて言語化するけれど、相手が処理しきれずオーバーフローしてしまう。
自分は後者。伝わらないと言語化が不十分だと思ってしまい、もっと説明を増やそうとするのだが、そうしてしまうのは言葉でそもそも全部伝えることができるという、言葉に対する過信があるからだ。そしてこの過信はまちがっているのである。
https://youtu.be/5lz2875hUcs?si=0wjtwiltg_kB6dVB&t=671
言葉ってさ正しく使っても相手に誤解されるんだよ
正しく使っても誤解される。つまり言葉に誤解は必然ってことだ。言葉ですべてを伝えようとしない。伝わらないからといってストレスを感じたり悩んだりイライラしたりしないようにしよう。
逆に言えば、他の人が言葉でこう言ってるからってそれですべてだと思わないのもすごく大事なことだと思う。理解したら終り参照。