虚構の時代
見田宗介は「夢の時代と虚構の時代 - ―現代日本の感覚の歴史」 ( 『社会学入門―人間と社会の未来』 岩波新書、二〇〇六年、所収) のなかで、 「戦後」 を三つの時代に区切っている。 それぞれを 「現実」に対する三つの対義語――つまり 「現実」を吊り支える三つの概念 のなかに整理し、プレ高度成長期である敗戦から一九六〇年を「理想の時代」、 高度成長期である一九六〇年から七〇年代前半を 「夢の時代」、そしてポスト高度成長期である一九七〇年代後半以降を「虚構の時代」としている。 つまり、丸山眞男などに代表される日本の進歩派が、未だないものの現実化に向けて政治的な旗 (アメリカン・デモクラシー/ソビエト・コミュニズムの旗)を振れた時代が「理想の時代」であり、 その後の高度成長によって村落共同体から解放=追放された個人を、 都市の賃金労働者として再編し、 そこに幸福な私生活 (核家族 ) のイメージを生み出していった時代が「夢の時代」であり、そして、高度成長の終焉と共に、 次第にその「夢」 が信じられなくなり、生活的リアリティが脱臭されして、社会そのものが 「演技されている」 という感覚に覆われる時代が 「虚構の時代」 というわけである。反戦後論 浜崎洋介・12ページ