特例法
特例法はまず、戸籍の変更にあたって2人以上の医師による 「性同一性障害である」という診断を求めている。それに加えて、以下の5つの条件がある。 1、 18歳以上であること2、いま結婚していないこと3、未成年(18歳未満)の子どもがいないこと4、 生殖能力を絶対に持たない状態の身体であること 5、外性器の外見(見た目)が、書き換える先の性別の外性器と似ていること目 トランスジェンダーQ&A 素朴な疑問が浮かんだら高井ゆと里周司あきら • 74ページ
2023年10月の最高裁判決で、 この要件 ( 「不妊化要件」 とか 「生殖不能要件」と呼ばれる)には違憲判決が出た。だからこの要件は現在では無効になっていて、ほかの要件をクリアしているトランスの人は、家庭裁判所に申し立てをすれば戸籍を変更することができる。トランスジェンダーQ&A 素朴な疑問が浮かんだら高井ゆと里周司あきら 78ページ
これは、戸籍変更後の性別の外性器らしく見える状態を要求するものだ。 特例法の制定当初はトランス男性に陰茎形成を求める内容も想定されていたようだけど、現状ではトランス女性をはじめ、 女性へと性別の表記を変える人に対して、陰茎(ペニス)の切除を命じるだけの要件になっている。 トランス男性に対しては、ホルモン投与によって大きくなった陰核 (クリトリス)を陰茎と見なすことで要件クリアという、なんとも曖昧な仕方で外観要件は運用されてきた。トランスジェンダーQ&A 素朴な疑問が浮かんだら高井ゆと里周司あきら・81ページ
そもそもこの外観要件は、 公衆浴場の混乱を防ぐためという理由で設けられたものだ。 陰茎を備えた人が女性の公衆浴場に入って、 周囲の利用者が驚いたり、 羞恥心を抱いたりするのを避けるという目的のために、 特例法は陰茎の切除術を性別変更の要件に設定してきた。でも、そうした混乱を防ぐためなら、 浴場の事業者が身体についてのルールを設けるだけでも達成できるし、厚労省もそうしたルールに後ろ盾を与えている。 ほかにも、時間を区切るとか、空間を区切るとか、いろんな手段でこの目的は達成できるはず。にもかかわらず、「お風呂が混乱するから全員陰茎を切れ」なんて、まったく信じがたい要求を特例法は続けてきた。 人の身体をなんだと思ってるんだろう。トランスジェンダーQ&A 素朴な疑問が浮かんだら高井ゆと里周司あきら・82ページ