温度感がマッチしない相槌
温度感という概念がない人がいる。会話において実は最も重要なのは、会話の内容ではなく、温度感だったりする。同じ相槌でも、相手が熱を持って話をしているときには「そうなんですか!」。熱が特にない場合には「ふんふん」だけで流す。そうやって言葉だけでなく、言葉に表情をつけていくのが大事なのだが、これが苦手な人が結構いる。 特にボイスチャットや電話などの音声のみのコミュニケーションでは、少しわざとらしいくらいの抑揚をつけないと、相手に伝わらなかったりする。
温度感をマッチさせるためには、相手の温度感を計測する会話の温度感センサーが必要なのだが、コミュ症の人はこれを持っていない。他人の温度感に鈍感だから、自分も相槌に温度感を持たせて話をするのが苦手なのだ。 先日、とある方との会話の中で「ペットを飼ったらいいのに」とアドバイスをいただいたことがあった。「実は飼ってたのだけど、死んじゃったんですよね」と答えたのだが、それに対するその方の返答が「じゃあ新しいのを飼いましょう!」だった。 これなんかも「温度感のマッチ」に失敗した事例である。まず、相手の声からどれくらいのショックなのかを推しはかるべきなのもそうなのだが、「一般的に言ってペットの死は相当悲しいこととされている」「昨今ではペットを家族と認識している人も多い」「人によっては実の息子、娘レベルで愛好している人も少なくない」。こうした常識の温度感を踏まえられていない。そのため「この人とはなんか距離があるなあ」と思われてしまう。
相槌の温度感がマッチしていないと、言葉上は意味としては話がつながっていても「こちらの話を聞いてくれていない」「伝わってない」と思われてしまう。相手の話を上手く聞けなかったというレベルではなく、むしろ話を否定されたと感じさせることさえ少なくないので、注意しよう。
常識の温度感が通用しないケースもある。たとえば「最近彼氏と別れたんだよね」と言われたとする。一般的には別れ=ネガティブなことかもしれないので「それはご愁傷様です」的な相槌を打ちそうになってしまうのだが、そうとも限らない。非常にひどい付き合いで別れられてせいせいしているとか、今、すごく自由を謳歌してるとか、ポジティブな可能性だってあるからだ。こういう場合は、単に「常識」に合わせて相槌を打つのではなく、「えっ、最近っていつくらいですか」とか「どれくらい付き合っていたんですか」とか、場合によっては「少し踏み込んだことお聞きしますけど、それはXさんから別れを切り出されたんですか」などと探りを入れる質問をし、そのリアクションから、温度感を測定したほうがいいときもある。大事なのは相手に興味を持つこと。でも、これができないコミュ症は多い。 一回、相槌の温度感を間違えても、途中でチューニングして訂正していけばよい。「ぼくはペットを飼ってないのでぼーっとしててさっきさらっと流しちゃいましたけど、それはショックですよね......」と後からの訂正でもないよりはあったほうがいい。