掃除婦のための手引書
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単行本版
死、アルコール中毒、病。それらが濃厚に漂う、日本でいったら私小説的な手触りの作品集。読むといつの間にか読者の懐に入っていて、とっくに最初から、あなたに刺さることが決まっていた、なぜならあなたは無防備だから。その無防備な心臓に一直線に、無駄は一切はぶいて、最短時間であなたを刺した、という感じ。その手際がとても品がいい。 そう品がいい。扱ってる題材はコインランドリーだの、ゲロだのピザだの、要するに汚い人生のあれこれなんだけど、ユーモアだけで品よく感じられてしまうところがルシア・ベルリンの最大の魅力かも。この人の小説の話って、たぶん、実際こんな人がいたら、この世界にこういうクズがいること、しかも隣人がそんなクズであることに耐えられない、絶対嫌だってなると思うんですよね。でも、それが小説になるとこんなに美しく感じてしまう。それこそ「物語」の力だと言えるかもしれない。 実はもう何年も前に購入して、途中まで読んで止まっていた。本が読めるときにはすーっと読めるんだけど、読めなくなるとまったく興味がなくなる。でも、途中から読んでみたら本当にいい作品集でした。続刊もあるみたいで、そちらも読もうかな。