再記憶
かおり たとえば、 トニ・モリスンっていうアメリカの黒人の小説家がいるんですけど。 / よう 『青い眼がほしい』の。 / かおり そうそう。 ノーベル文学賞を受賞した人ね。 「責任をとる」ということでは、彼女がつくった造語「再記憶(リメモリー rememory)」が思い浮かぶんです。記憶(メモリー)にもいろいろな種類があるけれど、モリスンは、 消し去ろうとしてきたつらい記憶を思い起こすことを「再記憶」っていう言葉で表現していたのね。記憶にふたをしたままでは、出来事自体がなかったことにされてしまって、 学ぶことができなくなる。だから、つらい記憶をあえて思い起こすことによって、出来事を発掘し直し、 その意味を考えていく必要があると。根っからの悪人っているの?: 被害と加害のあいだ シリーズ「あいだで考える」 坂上香 143ページ