三つのN
井上
イデオロギー
という言い方に語弊があるのかもしれません。 ジョイは、人間の中には
三つのN
という主張を引っ張り出すような心理機能があると論じています。 つまり、 人間は今まで自分が自明視してきた規範や習慣に対して問題提起されたときに、 自分が行っていることは
普通 (ノーマル) である、 自然 (ナチュラル)である、必要(ネセサリー) である(=三つのN)
と反論するというわけです。 これは否定できないところかと思います。実際「なぜあなたは肉食をするのか?」 という質問に対して「それが普通だから/自然だから必要だから」という答えが典型的な回答だということはその後の研究でも明らかになっているので、その面ではジョイの言っていることは妥当だと思います。
現代思想2022年6月号 特集=肉食主義を考える——ヴィーガニズム・培養肉・動物の権利…人間-動物関係を再考する
/ 討議 なぜ私たちは肉を食べることについて真剣に考えなければならないのか /
伊勢田哲治
井上太一
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