ロールモデル
清水:そういうことが起こりうると思う。 私は、これがPCの怖いところだと思うんです。 国外向けに発信することと、国内向けに発信することがずれているとき、それにもかかわらず、 国内ではそれ (実態を伴わないPC的表現)でもう十分だろうという感じが醸成され、国外からは興味をもってもらえなくなる、 という状況が生まれそうだなと。清水晶子,ハン・トンヒョン,飯野由里子. ポリティカル・コレクトネスからどこへ 27ページ ライターの鈴木みのりは次のように指摘している。周縁化された人々、マイノリティの物語のリプレゼンテーション(再現前性:「そこにいる」 のだと象徴的に表すこと)が増えていくと、 その存在についての連想性が高まり広まっていく啓蒙の効果や、 同じ属性の人々が勇気づけられたりロールモデルとなることなどが期待できる。特に後者について、 トランスジェンダーである俳優がトランスのキャラクターを演じるとき、 シスジェンダーの俳優が演じる以上に、 効果の膨らみがあるだろう。わたしたちは、自分のあり方や身体について、 身近な人々だけでなく表象を含めた外部のイメージを通して認識していく、つまりマイノリティがメディアで可視化されないと「自分たちはないものとされている」 と感じられる。物語のテーマとしてマイノリティが扱われるだけでなく、テレビドラマや映画といった視覚芸術・芸能産業の内部での就労や生き方の乏しさも、現実の問題として存在する(清水晶子,ハン・トンヒョン,飯野由里子. ポリティカル・コレクトネスからどこへ 176ページ