プラセボ
「プラセボ」は、 「わたしが喜ばせよう」 という意味のラテン語からきている。 一四世紀には、葬式で死者のために泣き、涙を流す役に雇われた泣き屋を指すことばとして使われた。 一七八五年には『新医学辞典』に登場し、瑣末な医療行為のひとつに加えられた。予想通りに不合理 ダン・アリエリー・283ページ つぎの実験では、パンフレットを変更し、もとの価格 (一錠二ドル五○セント) を消して、 一錠一○セントという格安の新価格を入れた。 実験協力者の反応は変わっただろうか? いかにも。 二ドル五○セントのときは、実験協力者のほぼ全員が薬による痛みの軽減を経験した。 ところが、価格が一○セントにさがると、 痛みが軽減した人はたった半分になった。 さらに、価格とプラセボ効果のこの関係は、すべての実験協力者で同じわけではないことがわかった。 最近の痛みの経験が多い人に、価格による効果がとりわけ強く表われた。 つまり、 より痛みを経験し、そのため、 より鎮痛剤に頼った人では、価格とプラセボ効果の関係がより強調されていた。 薬の価格が安いと、ほかの人よりさらに少ない効果しか得られなかったのだ。 とすれば、 こと薬となると、支払った分に見合うものが手にはいると言える。価格は経験を変化させる場合があるというわけだ。予想通りに不合理 ダン・アリエリー ・ 291ページ しかも、今回はソービーが人々を賢くした。 五〇の科学研究でソービーが精神機能を向上させることがわかったと誇大にでっちあげたところ、 減価でソービーを飲んだ学生たちの正答数は〇六問増え、でっちあげを読み、かつ定価のソービーを飲んだ学生たちの正答数は三・三間増えていた。 つまり、価格と、ソービーの缶(そしてクイズ冊子の表紙) に掲げられた文面が、 飲料そのものより効いたと言えるだろう。予想通りに不合理 ダン・アリエリー ・ 295ページ いくつもの実験をおこなってためした結果、価格と品質の関係について気にするのをやめた消費者は、値引きされた飲料の効果が劣ると決めてかかる可能性がはるかに少ない (そして、 その結果、 劣ると決めてかかった場合ほど単語クイズで悪い成績を取らない)ことがわかった。 この結果は、価格とプラセボ効果の関係を克服する方法を示しているだけでなく、 値引きの効果の大部分が安い価格への無意識の反応であることを示している。予想通りに不合理 ダン・アリエリー ・ 295ページ