医者の仕事術は、無意識でタスクシュートを使っている
このタスクシュートにより、控えめにいって、2倍以上の生産性と心の豊かさを実感できている。
このメソッド、どこか、懐かしい感じのするタスク管理メソッドだった。
しばらく、うまく言語化できないでいたが
これは、医者の時のタスク管理術と同じだと気づいたので、ここに記す
勤務医の出勤直後の仕事
病棟の入院患者さんを20人かかえている、よくある医者のケースで解説する。
1日が始まり、病院に出勤する。
そこでまずやることは、電子カルテを開き、夜間-朝にかけて何が起きたか把握することだ。
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救急外来を確認し、入院になった患者さんはいるか?
自分の重症患者さんを確認し、変化はないか?
など
それを見たあとは、今日1日のスケジュールを確認する。
20人分の、自分の担当患者さんの名前がかかれた紙を印刷。
そこに、今日やることや、大事なことをメモする
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それをもとに、重症度に応じて、回診の順番を決める
この人は安定しているから、午後に回ってもいいだろう。
この人は他科並診中で、病棟が離れている。この順番で回ると、効率的だろう。
午後に外来が控えているから、この人までは、一気に回ろうなど
ここまでの判断を、病院に来た最初の30分以内で実行する。
朝起床して1日を始める時点で、昨日の自分が行った計画をレビューする
タスクの実行ログを見て
改善点はないか
ルーチン化できるものはないか?
タスクの順番は適切だったか?
などを確認する
そして、そのレビューをもとに、
今日1日は、こういう順番でタスクを実行しよう
これが、1日ぴったりになる、現実的な計画かな
など
地に足のついた、今日1日の現実的な計画を立てる。
そして、この計画したタスクは、1分でもいいので、全て着手する(1分着手ルール)
どんなに忙しくても、全員の患者さんの顔見て状態を確認するかのように。
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勤務医の仕事中に起きること①
つまりは、今日の仕事はここまで!と線が引かれた、タスクリストになる。
基本的に、リストに新しい仕事の追加はしない。
が、もちろん、医者の仕事はそんなに甘いものではない。
病棟の看護師さんから、年中、PHSで相談の連絡が来たり
他科のドクターから、相談が来たり
地域連携室から、他病院の患者さんの転院相談の連絡が来たり
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差し込みタスクが、大量に発生する。
そんな仕事受けません!では、医者の仕事が成立しないわけだ。
また、自分の受け持ち患者さんの状態が、予想以上に悪かった場合
検査をしよう
診察をしよう
エコーをあてよう
などと、追加でどんどんタスクが発生する。
失敗が許されない状況 & 差し込みタスクが無限に発生する医療現場
今思い返せば、よくやっていたな...と思う。
さて、このような差し込みタスクに対して、タスクシュートとも相性が良い有効な法則があるので紹介する。
この法則を使えば、「差し込みタスクは、基本明日やる」がベースとなる。
よほど緊急性が高いのであれば、今日やる。そうでなければ、明日やる。
医療で言えば、重症度が高く緊急性が高い患者さんには、今日追加で採血やCTなどの検査をするなど
この法則を使うことで、1日の初めに決めたタスクリストを、クローズリストに保つことができる。 また、後述する、プロジェクトノートの運用にも、この法則を当てはめることで、次の一手を有効に組み入れることができる。
勤務医の仕事中に起きること②
このように医師は大量の仕事を抱えているが、その仕事の性質は、大きく3-4つの枠組みに分類できる
病棟
外来
救急外来 (or 侵襲的検査/手術)
当直
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例えば1日の流れは、以下のような感じになる
午前中: 病棟 + 救急外来当番
病棟の20人の担当患者さんの病状チェックや、他科からの併診相談の対応
救急車が来たら救急外来から呼ばれ、診察・検査し、入院適応があるか判断
入院適応があれば、ご本人/家族に病状を説明し、主治医になって入院オーダー
午後: 外来
定期外来 +/- 新患外来
夜:当直
救急外来での救急車対応
救急車が来たら救急外来から呼ばれ、診察・検査し、入院適応があるか判断
入院適応があれば、ご本人/家族に病状を説明し、主治医になって入院オーダー
翌朝:病棟業務に戻る
このような枠組みの中で、やるべき目の前の仕事に集中しているので、効果的に仕事を処理できる。
これが、タスクシュートにおける、セクションに該当する。
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1日をセクション単位で区切ることにより、たとえ大量のタスクを抱えていても、1対1の戦いに持っていける
大量の敵を1度に相手にできないので...
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▼セクションで区切って、1対1に持ち込む
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1日を漫然と過ごすのではなく、このように区切ることによって
大量の仕事を抱えていても、目の前の業務に集中できるゾーンを、作り出せるというわけだ。
勤務医の仕事中に起きること③
さて、医者が20人の患者さんの状態を確認する行動計画をたて、回診をする。
その後にすることは、カルテに記載することだ。
患者さんとの会話
バイタルサイン、食事量、リハビリ状況、検査結果
IC(Informed Consent)の内容
など
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これらを記載する。20人分だ。
そして現在の状態を記載した後に、次の一手も追加する。
1/1採血
1/2 CT
1/3 IC予定
1/4 退院予定
など
その患者さんの現在の状況及び、次の一手が明瞭にわかるよう、カルテを記載する。
これが、プロジェクトノートだ。
これをしっかり記載することで、今のタスクの状態および次のアクションが明確にわかる。
次のアクション(タスク)を決めたら、よっぽどのことがなければ、そのタスクは、マニャーナの法則で明日以降にうつす hiroya_iizuka.icon 超便利...!
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勤務医の仕事を減らせること
患者さんが入院することになった時、医者は毎回、退院までの全ての計画を決めるわけではない。
クリニカルパスというものが存在する。
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入院した時点で、このパスを使えば、退院までの行動計画が一瞬で、電カルに反映される。
これにより、全職員が決まったスケジュールで動けるようになる。
業務の標準化・効率化・高品質化がなされるわけだ。
さて、タスクシュートでもこれを採用できる。
1つ前に、プロジェクトノートというものを紹介した。
これは具体的には、このようなノートを自分は作っている。
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UdemyでClaude講座を作成する用の、プロジェクトノートだ。
これは
概要
ログ
タスク
メモ、資料
などの構成となっている。
そう、これがクリニカルパスに相当する。
1度このノートを作ってしまえば、次に別のUdemy講座を作るときも、このプロジェクトノートを再利用できる。
業務効率化、標準化、高品質化につながる
タスクシュートが、無意識の医者の仕事術より優れていること
最後に、タスクシュートの最高の魅力をお伝えする。
タスクシュートは、1日のプランを設定し、それを上から順番に実行する。
何時何分から、このタスクを何分かけて行った
こういう情報(ログ)が蓄積される
そしてそのタスクを、明日以降もやる場合は、ルーチン化する。
実行ログからルーチンを作成する
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これが、すごいのだ。
例えば、今日は2024年、7月11日である。
今日1日の行動計画は、もちろん今日の朝にレビューして決めたのだが
なんと、明日の7月12日の行動計画も、ほぼ自動的に、できてしまっている。
これが、明日以降の行動計画だ👇
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これがルーチンの魅力なのだ。
もう何をすべきか、迷わない。
そして、この計画は、現実に行動したログからルーチンを作っているため、極めて現実的なプランになる。
あとはそのテンプレをもとに、翌日の早朝にレビューし、微調整する。
これを繰り返すだけ
テンプレがあるからこそ、1日のシュミレーションを朝にできる。
そのシュミレーションは、日を追うごとにどんどん精度がます
朝のレビューが終われば、あとは今日1日は、そのタスクを上から順に実行すれば良いだけ。
複数タスクを同時並行に進めることももちろん可能なのである。
まとめ
医者は、無意識のうちに、タスクシュートに似たタスク管理術を使っている
レビュー (夜間-早朝のカルテチェック)
プロジェクトノート(カルテ書き)
プロジェクトノートの複製(クリニカルパスの利用)
タスクシュートでルーチンを設定することで、明日以降の行動計画をテンプレ化することができる
これにより高速に高品質にタスクを実行できる環境が整う
「今日1日は、これだけやっていれば十分」という心の安心感と豊かさが得られる
なかなか着手できないタスクも、ボトムアップにちょっとずつ進められる
hiroya_iizuka.icon タスクシュート最高...!
もし興味ある方は、先送り0本を読んでみてください^^ それでは〜