「サブカルチャー」について
Q. サブカルという言葉が海外ではポジティブな意味ではないと知り、驚きました。サブカルとは違う名前を新たに作る必要を感じました。
A.
英語の用法
英語の"subculture"にネガティブなニュアンスがあるということではなく、意味が違うということです。
英語の"subculture"は、既存のメインストリームの文化を土台にしつつも、その内側で主流との差異化を図るような相対的に小規模な文化(文字通り「部分の文化」)を指します。それゆえ、主流文化や先行文化に対するオルタナティブや抵抗のニュアンスが少なからずあります。モッズやパンクなどがsubcultureの典型的な例です。
英語のWikipediaがまとまりがいいです。
Subculture - Wikipedia
【余談】日本語のWikipediaの記事は大半があやしげですが(とくに哲学系はひどい)、英語は質が高いものが少なくないです。Wikipediaだから一律に信用ならんということではなく、文献の信頼性は個別に判断しましょう。
日本語の用法①
一方で、マンガやアニメを「サブカルチャー」と呼ぶような日本語の用法では、たんに「高尚でない文化」「大衆文化」くらいの意味で使われていると思います。この意味に対応する英語表現は、"popular culture"、"pop culture"、"low culture"、"mass culture"などです。
この用法の例:
財団法人中部産業活性化センター「観光におけるサブカルチャーコンテンツの活用に関する調査研究」
もちろん、マンガやアニメの中にも本来の意味でのsubcultureと呼べるものはありますが(とりわけいわゆるガロ系のようなアングラな作品群はそうだったでしょう)、現代のマンガ文化やアニメ文化の全体がsubcultureであるわけではありません。
日本語の用法②
ちなみに「オタク」や「ヤンキー」などと対比される意味での俗語「サブカル」(下北沢、中央線沿線、古着屋、古本屋、インディーバンド、etc.に代表されるような何か)はまた別の用法です。この用法は、特定の文化圏とそこに属する人々が好むテイストを指します。
この用法の例:
あなたは本当にオタクですか?/オタクとサブカル、ヤンキーと体育会系 - ライブドアニュース
サブカルっぽい街と言えば? | ガールズちゃんねる - Girls Channel -
どういう経緯でこうなったのか
日本語における「サブカルチャー」という語の使われ方には複雑な経緯があったようです。
参考文献:
榊祐一「日本におけるサブカルチャーをめぐる語りの諸類型」『層-映像と表現』10号、2018年
とはいえ、経緯はどうあれ、英語の"subculture"と意味がずれているのはコミュニケーションの円滑さの観点からよろしくないと個人的には思っています。
松永の私見:https://twitter.com/zmzizm/status/1265710384314331136