セイラムの魔女狩りーアメリカ裏面史
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【著者】
小山敏三郎
【目次】
ジョン・スミスとポーカホンタス―神話からフェミニズムへ
セイラム魔女裁判(その顛末;その波紋と謎)
エァロン・バーの生涯(ロゥマスクの伝記とヴィダールの小説;〈リッチモンド裁判〉からヨーロッパ流浪へ)
『タイムズ』特波派員の見た南北戦争初期のアメリカ(W.H.ラッセルの『取材日記』;〈ブル・ラン〉の戦闘とラッセルの帰国)
セイラム魔女裁判
<魔女裁判>の背景にあるもの
社会不安
カナダ国境付近とイギリス植民地が脅かされ、植民地は存亡の危機に晒されていた
土地獲得欲
セイラムの判事が街の目抜きの土地を入手するために、その土地の所有者マシュー・モールに魔法使いの冤罪を着せて処刑したという語り
商業主義VS農業主義
セイラム町内での東部と西部の分裂
元来、ニューイングランド植民地では人口に対して土地がなくなってくると新しい開拓地を求めてうつっていく 中心地から次第に遠く広がっていき、距離的に多数の住民が仕事や義務の遂行に不便をきたすようになると、その地域が独立した村となる
町の中心部の住民は、税収入が減少するという理由で、地区が分離していくことを好まなかった
セイラムでは、西部の村の独立が町に否認され、分裂が明白となった
これを契機に、セイラム村(西部)内部での東部地区と西部地区の対立が生まれる
セイラム村内での東部と西部の分裂
東部地区:
町との関係を残したい
西部地区:
完全に分離したい
しだいに、人生観と生活様式の違いが生まれた
12/14名の告発された村民は東部地区に住んでおり、彼らに不利な証言をした人びとは西部地区に住んでいた。逆に弁護した人々の多くは東部地区に暮らしていた
西部には農民が多く、東部には近年力をつけてきた商人層が多かった
ディヴィッドソン&ライトルの分析
分割・独立に到達できなかったことで、村内部の葛藤が全く種類の違った兆候をとって現れた、それが魔女裁判のかたちとなってしまった
キャロル・カールセンの分析
問題点は「性差」にある
セイラムにおいて、名前において女性と特定できる人の割合は3/4、残りの男性の殆ど半数は、その女性たちの夫や息子、親戚などの密接な関係にあった人々
男性の告白は殆ど信じられていない→「女性が」魔女であることが期待されていた
ジャイルズ・コーリーのような例外は別として、「悪魔と対話した」などの告白があっても起訴されないケース
ほんとうの妻というものは、彼女の服従を、彼女の名誉であり、自由であると考えるものだ
女性に期待された従属的役割
告発された女性たちは、何らかの意味で「従属的でなかった」
社会で期待されていた行動様式に合わせることをしなかったことから、伝統的秩序を脅かしたとされていた
71/124の女性は男性相続人のない家族と住んでいた
つまり、経済的に独立していて男性に従属しない女性
セイラムで処刑された女性の半数以上は財産相続をしていたか、相続する立場にあった
このような、微妙に複雑に絡み合った要因によるのでひとつの回答を求めるのは困難である
魔女裁判は人間と社会の解明に謎を突きつけている
同時代的アナロジーを見出したり、人間を普遍的、象徴的に捉える活動として探求は続いている
プロクターのモデルとなったバローズが処刑されたのは、権力闘争の逆恨みのようなものであったようだ
告発者のひとりであるアン・プットナムのおじが教会牧師任命時に対立候補のバローズに敗れている
力自慢であった(周囲と比べて目立った人物であったこと)も彼の処刑をすすめる要因になってしまった
バローズを処刑台に送ったのは、アビゲイル・ウィリアムズではなくマーシー・ルイスである
年齢も、ウィノナの演じたアビゲイルに近いのはマーシー
バローズはみなしごであったマーシーをつれて赴任してきた
この二人の間になにがあったかは分からないが、プットナム家(バローズが一時的に寄留していた)のメンバーと組んでバローズに不利な証言を行っている
マーシーと共謀したアン・プットナム(トマス・プットナムという街の有力者の娘)がのちに「狂言であった」との告白文を発表している
実際にティチュバから故郷のまじないを教えられ、最初に発作を起こしたのが牧師サミュエル・パリスの娘エリザベスと姪のアビゲイルであるところは『クルーシブル』の筋書きと同じである
入獄者の家族(あるいは本人)は、釈放された場合でも手数料を支払わなければならなかった
ティチュバは釈放されたが、入獄費用の支払いができなかったので奴隷として売られてしまった