ドナルド・ショーン
https://gyazo.com/3ad05d74416812378c8f354254ab345b
ドナルド・ショーン:省察に囚われた人物
ショーン氏は、デザイン研究者たちのお気に入りです。彼は、究極的な思想家でした。デザインのプロセスについて多くのことを省察しています。実存主義者の思考ループに巻き込まれていないのが不思議なくらいです。彼は、こともあろうに、自身のことを著書のタイトルにも使いました。その名も『The Reflective Practitioner(省察実践家)』(邦題:『省察的実践とは何か―プロフェッショナルの行為と思考』)です。 ショーン氏は、デザインを真剣に受け止めてもらうには、科学に立脚する必要があるという考えを猛烈に否定しました。同時代の同胞たちと同じように、彼もまた認知的省察とプロセスの説明により、デザインを固有のプラクティスとして、個人的なものにしようとしていたのです。
絵ではなくフレームを見てください
ショーン氏の主な業績は、プロセスの分析にフォーカスするものではなく、それらをフレーム化やコンテキスト化するといったものでした。彼は、プロセス全体をまとめる重要な要素として「問題設定」があると説明しています。これに注力することで、実際に問題の解決方法に取り組む前に、問題の扱い方をデザイナーが理解できるようになるのです。
注記:私の理論の大半(と「Sustainability Jam Toolkit」の着想)は、ショーン氏のデザインプロセス手法の理論に影響を受けています。以下に掲載した彼の著書の引用を読めば、彼の哲学がよくわかります。
目的が決まっていて明確なときは、行為の決定はそれ自体が道具的問題を示している可能性がある。一方、目的が混乱して矛盾しているときは、解決する「問題」がまだない。
さーて、私たちは、解決する明確な問題がなく、混乱しているような問題のことを何と呼んでいるでしょーか?せーの、厄介な問題!
ショーン氏の著書では「低地の沼(swampy lowlands)」と呼ばれていますが、厄介な問題とまったく同じ概念です。ただし!分析的なデザイン理論家がプロセスを解剖しそうなところでは、ショーン氏はデザインの神秘的で直感的な側面が残ることを信じていました。彼が問題の「フレーム化」にだけ注目し、解決方法について検討していないのはそのためです。
その代わり、芸術的で直感的なプロセスに暗黙的に存在する認知論的な実践を探索しよう。実践者たちのなかには、それを不確実性、不安定性、唯一性、価値観の葛藤といった状況下に適用している人たちもいる。(Schön 1982, p. 49)
少し空想的に聞こえるかもしれませんが、「直観」対「科学」の問題については、無数の議論が継続中であり、今でも研究者たちがパンチを出し合っています。なお、グラフィックデザインのようなデザインの特定の領域については、ショーン氏が主張する直感的な議論が適切です。一方、人に影響を与える可能性のある厄介な問題を持つ領域については、直感だけではうまくいかないでしょう。