コレステロール塞栓症
【病態】大動脈壁の粥腫の破綻により,コレステロール結晶が散布され全身の小動脈が閉塞することにより発症する.血管内操作や心大血管手術,抗凝固療法を誘因として起こるものが多い.血管内カテーテル操作後に皮膚症状や腎機能低下が出現するまで数日〜数週間かかるため,退院後に発症することが多い.退院後初外来では皮膚症状と腎機能を必ず確認すること.
【危険因子】60歳以上,男性,高血圧,喫煙,糖尿病,心血管疾患の存在
【問診】
【身体所見】
腎不全,皮膚症状(網状皮斑,壊疽,チアノーゼ,潰瘍など),
BTS:blue toe syndrome(足趾動脈に塞栓)をはじめ,全身の小動脈の閉塞により多彩な症状を呈する.
【検査】
好酸球増加,補体低下,CRP上昇
炎症反応(CRP↑,赤沈↑,補体↓),好酸球増多,その他障害臓器に応じた所見がみられる.
確定診断は生検によるコレステロール塞栓の証明である.皮膚生検ではコレステロール結晶が真皮から皮下脂肪織内の小動脈の内腔に紡錘形または針状の裂隙(cholesterol cleft)として観察される.
【治療】
十分なエビデンスがあるものはないが,プロスタグランジン製剤,HMG-CoA還元酵素阻害剤の投与などが行われる.経過が改善しない症例では,ステロイド療法とLDLアフェレーシスの併用が有効である可能性がある.
【予後】
多臓器障害を伴う本症の1年死亡率は64〜87%と高く,極めて予後不良である.