過敏性肺炎 HP
Hypersensitivity Pneumonitis, HP
#免疫アレルギー #呼吸器 #間質性肺疾患
【概念】
• 様々の有機性粉塵やその他の原因物質を、感受性のある人が反復して吸入した結果として惹起され、Ⅲ型アレルギー(特異抗体)およびⅣ型アレルギー(感作リンパ吸)が関与する1群の免疫反応性肺疾患。アレルギー性間質性肺炎
【病理】
<急性HP>
3徴:➀細胞性細気管支炎、②配管室の肉芽腫、③間質へのリンパ球を主体としたびまん性慢性炎症細胞浸潤
肺既存構造の改変はほとんど認められない。
<慢性HP>小葉中心性の線維化、架橋線維化
基質化肺炎 OP
NSIP: nonspecific interstitial pneumonia
UIP: usual interstitial pneumonia
• 胞隔炎:マクロファージ、Tリンパ球、形質細胞などを混じた浸潤像が細気管支周囲を中心とした間質や肺胞隔壁に認められる。
• 非乾酪性類上皮細胞肉芽腫の形成(呼吸細気管支を中心にみられる)
• マッソン体(気腔内にポリープ状に突出する病変)
→ 慢性化すると線維化し、肉芽腫は減少しIPFとの鑑別が問題。
【種類と抗原】真菌、細菌、動物由来(鳥類など)蛋白、化学物質
夏型過敏性肺炎:住居環境中のトリコスポロン(真菌)Trichosporon asahii, Trichosporon mucoides。東アジアに特有の疾患。高温多湿の気候を背景に古い木造家屋に増殖する真菌。夏。
住居関連HP:家屋の真菌が原因。講義には夏型HPを含む
鳥関連過敏性肺炎:鳥の糞や羽毛(冬)に含まれる抗原が原因で鳥飼育舎に発症する鳥飼病や羽毛製品によるHP
農夫肺:干し草や飼料中の好熱性放線菌
空調肺・加湿器肺:水槽で増殖する真菌・細菌。冬。
塗装工肺:イソシアネート(硬化剤として塗料に含まれる)
キノコ栽培者肺:キノコ胞子や栽培環境で増殖する真菌・細菌
※鳥関連が最多>農夫肺>夏型>住居関連
※急性HP:真菌・夏型HP、慢性HP:鳥関連HP>真菌・夏型HP
※トリコスポロンは日当たりや風通しの悪い家屋や水回りの木材に多く生息する
【病態生理】
Ⅲ型・Ⅳ型アレルギー反応が病態生理の基本
吸入した抗原+特異抗体+補体で形成される免疫複合体→Ⅲ型アレルギー
抗原暴露4-8時間後の症状発現
BALF・血清中の特異抗体(IgG、IgA)
急性期:BALFの好中球・補体の増加
感作されたTリンパ球→Ⅳ型アレルギー→肉芽腫性胞隔炎
【症状】
<急性型>数週~数か月の経過。抗原暴露後4~6時間後に突発する発熱、咳嗽、呼吸困難、倦怠感、食欲不振。数日で消失
• 亜急性型:少量の抗原に断続的に曝露されて起こる場合で症状は緩徐に進行する
• いずれも抗原から離れると症状は軽快するのが特徴(帰宅誘発試験)
<慢性型>数か月~数年の経過。急性・亜急性型を繰り返して次第に不可逆性の肺の線維化を来たし、慢性呼吸不全状態になる。
【問診】
患者の職業、職場・自宅環境、趣味
トリコスポロンは腐木に繁殖する。風呂場の脱衣所、台所、雨漏りした天井裏や畳の裏→培養
鳥関連抗原;鳥の飼育、羽毛布団、ダウンジャケット、鳥剥製、鳥が多い環境がないか
【身体所見】
fine crackles
呼気時呼気性連続性ラ音(squawk)は細気管支病変の存在を示唆し、本症に特徴的
ばち指(30%)
【予後・分類】肺線維症合併の有無が治療や予後に大きく影響。
画像と病理(BALを含む)の所見で、慢性HPを炎症と線維化の程度で線維性と非線維性
【身体所見】
fine crackles、ツ反の陰性化 慢性型ではときにばち指
【検査所見】
<血液検査>
白血球↑(好中球)、赤沈の亢進、炎症反応陽性、KL-6↑、SP-D↑、SP-A↑、LD↑、IgG↑ ※慢性型では炎症所見は軽度
• 血清中の特異抗体陽性(沈降抗体)、特異抗原によるリンパ球幼若化反応陽性
・ツ反陰性化
<CXR>両側中下肺野を中心にび慢性にスリガラス様陰影、粒状影を示す。
<胸部HRCT>
• 肺野濃度の上昇(GGO)と小葉中心性の粒状影
• 慢性化すると線維化像(蜂巣肺)
<呼吸機能検査>:拘束性換気障害、肺拡散能の低下、労作時の低酸素血症
<6分間歩行試験>治療経過をチェック
<BALF>
• リンパ球、とくにTリンパ球の増加
• 夏型過敏性肺炎ではCD4/CD8 は低下、農夫肺ではCD4/CD8 は上昇
<病理組織学的検査>• TBLB,VATS下肺生検
・リンパ球主体の細胞浸潤や肉芽腫性病変
・肺胞隔壁の肥厚
・多核巨細胞
【診断】
➀臨床像(症状、身体所見、検査)、②発症環境、③画像・病理、④免疫学的所見(誘発試験)
【治療】
• 抗原からの隔離
• ステロイド全身投与