性周期の影響
F-Fの発声は、発声する雌自身の性周期でその量が変化することは雌が発するUSVsで解説しました。 では、求愛発声に関して、雄と出会う雌の性周期は、雄の発声に影響するのでしょうか?
結論からいうと、影響しません。性行動とか嗅覚に詳しい人にとっては意外でしょうけども。
実は、このことは求愛発声を誘起するものでも、間接的に扱っています。なので、そこで紹介した論文と同じものの、該当箇所だけ再度解説します。 Nyby, J., Wysocki, C. J., Whitney, G., Dizinno, G., & Schneider, J. (1979). Elicitation of male mouse (Mus musculus) ultrasonic vocalizations: I. Urinary cues. Journal of Comparative and Physiological Psychology, 93(5), 957–975. https://doi.org/10.1037/h0077623 この論文は、Experiment 18まである(!)。ので、ものすごくかいつまんで書かねばならない。さすがNybyだし、この時代はIFとか気にしてない感じが、良いなぁ。can-no.iconわしも、そんな感じでやっていく...!
ことなる性周期(4種)の雌から尿を採集して提示したが、USVsを誘起させる効果に違いはない(Exp 7)
卵巣除去(OVX)した雌の尿を試すと、OVX尿の方がUSVsを誘起する効果は有意に下がるのだが、コントロールとの差はかなり少なく、OVX尿でもUSVsを十分引き起こす(Exp 8)※OVXのタイミングは実験の22日前と68日前の2条件試されてるが、結果は類似(どちらもOVXはadultになってから受けていると思われる)
Wang H, Liang S, Burgdorf J, Wess J, Yeomans J (2008) Ultrasonic Vocalizations Induced by Sex and Amphetamine in M2, M4, M5 Muscarinic and D2 Dopamine Receptor Knockout Mice. PLoS ONE 3(4): e1893. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0001893 https://scrapbox.io/files/63329f8f0c8250001d612e4e.png
ちょっとnが少ない感じですが、こちらの論文のFig. 4でも卵巣除去(OVX)、卵巣除去雌に性ホルモンを打って発情させたもの(OVX+H)、通常個体を比較して、差がありません。めっちゃエラーバー長いけど。
こちらの論文でも、雌の性周期によっって雄のUSVsの発声回数は変わらなかったそうです(グラフはない)。ただし、durationや周波数は変わったということです。その変化の意味するところは、わからない。
実は僕自身も、雌をOVXしても雄の発声が変化しないというデータを持っているのだが、まだ投稿すらできていない。。
間接的には、以下の論文で、経験依存的なUSVsの増加と雌の発情状態の関係を示しています。
Kanno, K., & Kikusui, T. (2018). Effect of Sociosexual Experience and Aging on Number of Courtship Ultrasonic Vocalizations in Male Mice. Zoological science, 35(3), 208–214. https://doi.org/10.2108/zs170175 若い雄を雌と2週間同居させると発声は上昇する(それでも個体差はある)
同居させる雌は卵巣除去雌(非発情雌)であっても、雄の発声は上昇