遠ざかる家
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書誌情報
和田忠彦訳、松籟社〈イタリア叢書〉、1985年
原題 : La Speculazione Edilizia
発表年 : 1957年
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内容
主人公が
やべー奴との評判の土建屋に
実家の土地を売って一儲けを企むが、
いつまでたっても貸し家が建たずに困る
という話。
原題は建築投機、不動産投資といったような意味。
この建築投機について、カルヴィーノははっきり否定的な立場をとっていたようで、
あらゆる思い出の場所に奇怪な顔を押しつけている建築ブーム(『水に流して カルヴィーノ文学・社会評論集』所収、「ビード族と〈システム〉」)
建築投機のジャングルがイタリアを無惨な国に変えてしまう(同、「迷宮への挑戦」)
と、評論の中でもたびたびその野放図ぶりを非難している。
やさぐれた左翼文化人といった風情の主人公は、他のカルヴィーノ作品の登場人物と比べても妙に俗っぽい。
この少し後に発表されたある投票立会人の一日の主人公とは少し似てるかも。でもあちらのほうが思弁的で、もう少し浮世離れしたことを考えている。
もうひとりの主要登場人物であるところの土建屋のおっさんにもかなり存在感がある。
カルヴィーノがその中を通り過ぎてきた、パルチザンとイタリア共産党の描かれ方に注目したいところ。
何度も繰り返し工事が遅延されるのは、不条理ものの定番のようにも見えるけれど、民話的な繰り返しの構造が生かされているとも言えるのではないか? #遅さ #物語のプリミティブな構造
要はこれって闘争領域の拡大を扱った話のわけだが、カルヴィーノが書くとちょっと笑っちゃう感じになる。
主人公がモテないわけではないというのが大きな違いではある。
#工業化