まっぷたつの子爵
https://gyazo.com/e91672a0fdfa3c28978a66c9d3691064
書誌情報
村松真理子訳、白水Uブックス〈永遠の本棚〉、2020年
河島英昭訳、晶文社、1971年
同、晶文社〈文学のおくりもの〉シリーズ、1997年
同、岩波文庫、2017年
原題 : Il Visconte Dimezzato
発表年 : 1952年
Amazon
内容
1950年代に入ってカルヴィーノは、それまでのリアリズム路線と一線を画した小説を書きはじめる。その最初の一冊となったのが本作だ。
はじめ血腥い戦場に置かれていた舞台は、一転して自然豊かな子爵の故郷へ移される。トルコ軍の撃った砲弾によって「悪半」と「善半」に分裂してしまった子爵のふるまいが、彼の甥っ子の視点を借りて描かれる。
ずっと後になってから、『冬の夜ひとりの旅人が』の登場人物に「昔は物語の終わり方が二つしかありませんでした、いろんな試練を経て、主人公と女主人公が結婚するかそれとも死んでしまうかでした。」と語らせているように、メダルド子爵の物語が結婚によってしめくくられたあとにも、この話には少しの続きが残される。それは民話の外側にあって、それまで語り手として登場してきた甥の前に立ちはだかる「責任と鬼火に満ちた」世界についての苦々しい述懐だ。
民話的宇宙の中で繰り広げられるイメージの操作と、私たち自身をとりまく問題の橋渡しについて、このときのカルヴィーノはまだ答えを見つけられないでいるように見える。
#擬人化