よい音のためによい演奏を犠牲にしてはならない
あるエンジニアはまる一日をドラムの音決めに費やし、それにつきあっていたドラマーは音決めで体力、集中力を使い切り、レコーディングは翌日になったという話がある。だが、この逸話は徹底的なこだわり、武勇伝として語られるのではなく、"悪い例”としてベテラン・エンジニアの口から語られることが多い。彼らの職人魂は、出ている音を正確に記録、長年の知識と技術、訓練された耳により、瞬時に音質面でのアプローチを決定、問題があれば解決し、プレイヤーには負担をかけないことを誇りとしている。レコーディングの現場では、よい音のためによい演奏を犠牲にしてはならない、という哲学が存在する。