日本の自治体総合計画策定とコンサルティング事業、そしてAI活用可能性に関する調査報告
blu3mo.icon
自治体の総合計画策定と、それに対するコンサル事業について理解を深めたい。 1) 総合計画策定自体についての理解を深めたい。何のために、どんなステイクホルダーの間で調整がなされて、どんなことが策定されていて、どうその後に影響を及ぼすのか、など。表の話と、リアルな話を両方。 2) コンサル事業について プレイヤー、予算規模、具体的な提供サービスや顧客が感じている価値、解いているペインなどについてのリアルな解像度を高めたい。
Deep Research
1. 総合計画策定:制度背景・目的と実態
1.1 総合計画の制度的背景と構成
三段構造なのねblu3mo.icon
市長が変わるとどうなるんだろう?blu3mo.icon
下を参照する限り、総合計画は変わらないが、基本計画は市長の任期の期間ベースっぽいtkgshn.icon
まあ計画は立てたほうが仕事しやすいわなblu3mo.icon
10年構想、5年計画、3年実施計画blu3mo.icon
我々は何を目指すか
どうなってないといけないか
どうやるか
みたいな感じの認識だけどちょっと違うのかな?tkgshn.icon
三層は多いなと確かに思ったblu3mo.icon
1.2 総合計画策定に関わるステークホルダーと関係性
ほぼすべての自治体がアンケートやパブコメ なるほど〜blu3mo.icon
義務がないのに9割以上がやっているの、公務員って感じでいいblu3mo.icon
このように総合計画策定は、多様な主体が**「首長のリーダーシップの下、職員が案を練り、市民・有識者が議論に参加し、議会がチェック・承認する」**という重層的プロセスとなっています。形式上は審議会やパブリックコメントで広く意見を募りつつも、最終的な意思決定責任は首長と議会にあります。そのバランスの中で計画の妥当性・実効性が確保されることが理想とされています。
1.3 策定プロセス:形式と実態のギャップ
1. 計画方針の策定・素案作成:庁内策定本部や企画部門が、首長の施政方針や上位計画(都道府県計画・国家戦略など)を踏まえ基本構想の素案を作成。現状分析のための基礎調査や統計データ分析、市民意識調査なども実施。必要に応じてコンサルタントを活用。
5. 計画書公表と周知:決定した総合計画を冊子・PDFで刊行し、市民や職員に配布・公開。概要版やパンフレットを作成する自治体も多い。
6. 実施段階へ:実施計画に基づき毎年度の予算編成・事務事業を展開。進行管理や評価を行い、必要に応じ次年度実施計画や中間見直しに反映。
以上が「表向き」のプロセスですが、実態としては以下のような課題や裏側の事情も指摘されています。
なるほどね〜 まあコンサルとしては使いまわしてテンプレ化したほうがコスト低いblu3mo.icon
「コンサル任せ」「形式的な住民参加」「大部な計画書作成に追われる」
なるほどね〜〜blu3mo.icon
全体的に、それはそうすぎるblu3mo.icon
これを読む限りだと、「低コストに、リアルな声を反映した正当性ぽさのある、重厚な計画書が出せる」ととても良さそうblu3mo.icon
ちょっとテクニカルかもしれないが、個人の発言をワードサラダにして作るのではなく、それぞれの発言に対してリンクができるとそこら辺を強調できるのかもしれない
1.4 総合計画が自治体運営・政策決定に及ぼす影響
形骸化させないのであれば、良いKPIを設定する能力のある人が作らないとむしろ毒になりそうblu3mo.icon
1.5 市民参加・合意形成とデータ活用の現状
100%やってるのはでかいな〜tkgshn.icon
とはいえ、これを公聴aiで代替はできそうtkgshn.icon これやってる日立の中の人こないだ会ったわblu3mo.icon*2
お〜これ単価上がってるの?tkgshn.icon
2. 総合計画コンサルティング事業の実態
2.1 市場構造:プレイヤーと受注動向
なるほどね〜 総合計画は総合的なサポートパッケージの一つだったりするのかな 実質的には抱き合わせで売られていそうblu3mo.icon
加えて、個人や小規模事務所によるコンサルも存在します。自治体OBや大学研究者が中心となって立ち上げたような小さなシンクタンク(例えば〇〇地域計画研究所)や、フリーのコンサルタントがプロポーザルに応募し契約を得ることもあります。特に小規模町村では契約金額が小さい(後述)ため大手よりも機動力のある個人や地元コンサルが選ばれる傾向があります。また最近では地方創生人材支援制度等で自治体に派遣される地域プロデューサー的人材が、計画策定をリードする形もあり、必ずしも「コンサル契約」という形に現れない支援もあり得ます。
実績と信頼は構想日本に乗っかっていきたいねblu3mo.icon
2.2 コンサルティングの提供サービス内容
総合計画に関するコンサルティングサービスは多岐にわたりますが、主な内容は以下の通りです。
各種調査・データ分析:職員や市民へのアンケート調査の企画・実施、集計分析は頻出サービスです。また人口推計や財政シミュレーション、都市の強み弱み分析(SWOT分析など)、GISを用いた地域特性の可視化等、専門的データ分析を提供します。コンサルは全国の統計データにアクセスしやすく、分析ノウハウも持つため、自治体単独では難しい高度な分析で知見を提供します。これは自治体職員が「感覚的に分かっているつもり」のこともデータで客観化し、職員の思い込みの検証にも役立つとされています[ https://kotsutorisetsu.com/20200625-1/]。 やった感演出テクノロジーだなblu3mo.icon*2
KJ法とかグラレコとか
グラレコってまじでやった感演出よなwtkgshn.icon プロジェクト管理・スケジュール策定:策定期間中の全体工程表の作成や、庁内調整会議の日程調整、審議会資料・議事録作成補助など、プロジェクトマネジメント的な役割もコンサルが果たします。特に初めて総合計画を担当する職員にとっては、何をいつまでに準備すべきか経験が少ないため、コンサルタントが「影の事務局」として裏で段取りをつけるケースもあります。
これは構想日本もありそうtkgshn.icon
行政内部調整支援:首長と職員、また各部局間の調整もコンサルが陰で補佐します。例えば、部局ヒアリングを実施して意見対立点を整理し、計画の表現上うまく両立させる案を提示したりします。また首長の公約と現実施策のギャップを埋める文言を考案するなど、政治的調整の潤滑油となる場面もあります。外部者ゆえの客観的視点で「この計画にはこう書くのが妥当」と第三者的提案をすることで、内部のコンセンサス形成を助ける役割です。
2.3 契約予算規模・件数と自治体規模別の発注傾向
契約額の相場は自治体の規模・内容によって様々ですが、近年の公募プロポーザル公告からおおよその水準が読み取れます。一般に小規模自治体ほど低額、大都市ほど高額となる傾向です。いくつか具体例を挙げます。
これらから、大まかに「小規模町村:数百万円~1,000万円未満」「中小都市:1,000万前後」「中核市・特別区:2,000~3,000万円」「政令市:数千万円規模」**というイメージになります。ただし政令指定都市や都道府県は内部職員で対応する部分も大きく、全てを丸ごと委託するケースばかりではありません。実際、都道府県では有識者研究会への調査委託程度で済ます例もあります。
なるほどね〜〜blu3mo.icon
東京都2050のやつでもTTTC運用に数千万出してたのを思い出したblu3mo.icon
自治体規模別の発注傾向としては、大都市は委託範囲を限定し内部職員と共同で作業するケースが多く、中小自治体ほど包括的に委託する傾向があります。例えば東京特別区や政令市では「基礎調査部分のみ委託」「市民意識調査と取りまとめのみ委託」といった具合に一部工程だけ外注し、計画本文は企画局が自前で作ることもあります。一方、町村部など職員リソースが乏しい自治体では「計画案作成一式」を丸ごと委託し、職員は進行管理と最終意思決定に注力するパターンが見られます。また財政力による差もあり、豊かな都市は高額予算を付けワークショップも何度も実施する一方、厳しい自治体では必要最低限の策定だけ行い参加イベントも少なめにする、といった違いもあります。
どちらにせよ、内部職員との共同作業がゴリゴリに入る前提なんだなblu3mo.icon
2.4 自治体側(職員・首長)が感じるコンサル提供価値と信頼ポイント
自治体職員や首長がコンサルタントに業務を委託するのは、「自前でできない部分を補完してもらう」ためですが、具体的にどんな価値を認め、どの点に信頼を寄せているのでしょうか。
「合意形成技法」ってなんだろう?blu3mo.icon
ファシリテートのうまさ?tkgshn.icon
第三者的・中立的な調整役:計画策定では、庁内で各部局の主張調整や、首長と職員の意向調整、あるいは住民と行政側のギャップ調整など利害調整がつきものです。コンサルタントは外部の立場から中立的ファシリテーターとなり得ます。例えば部局横断の検討会で、特定部の論理に偏らず全体最適の視点で議論を整理する、住民との対話で行政の言い分をかみ砕いて伝え住民意見も代弁する、など微妙な舵取りを担います。自治体職員だけでは言いにくいことも、コンサルがデータを示しつつ指摘すれば受け入れられることもあります。このように“潤滑油”として調整を進めてくれる点を、首長や幹部は評価します。また議会向けにも、コンサル調査結果や提言という形で示すことで、議員が納得しやすくなる場面もあります。いわば“お墨付き”を与える役割であり、計画内容への客観的信頼性を高める効果も期待されています。
進行管理とプロセスの安心感:経験豊富なコンサルは策定プロセスの一挙手一投足を熟知しています。職員が不慣れでも「○月には審議会を立ち上げましょう」「アンケートは○月には回収完了させないと間に合いません」等、的確にリードしてくれます。その結果、スケジュール遅延や手戻りを防ぎ、最終的に期限内に計画策定が完了する安心感があります。首長にとっても、自分の任期内にちゃんと計画をまとめ上げられることは重要であり、“プロに任せれば間違いない”という信頼につながります。
職員にスキルが足りないケースも全然ありそうね コンサルの言いなりになっておけばいい感じのドキュメントが生えてみんな幸せblu3mo.icon
そら、地方にはいっぱいいそう
というか能力があるやつが職員にならないtkgshn.icon*6
2.5 コンサルが解決する課題と成功・失敗事例
総合計画コンサルが介入することで、自治体が直面するどのような課題が解決されているのか、改めて整理します。
政治的調整・利害調整の難しさへの対応:例えば庁内で部門間に軋轢がある場合、コンサルが間に入って双方の意見を整理し妥協案を提示することがあります。また首長の公約が非現実的で計画に載せにくい時、コンサルがデータを用いて慎重表現を提案し、現実路線との折衷を図ることもあります。住民合意形成では、外部専門家の言葉として提案すると住民側も納得しやすい場面があります(「◯◯先生もおっしゃる通り…」といった形で)。これらにより、政治的に微妙な問題もスムーズに計画へ盛り込めるケースが成功事例です。例えばある市で、議会与野党が対立していた開発計画について、コンサルが実現可能性データを提示し中間案を計画に記載、双方が合意したというエピソードがあります。逆に失敗事例は、コンサルが政治的文脈を読み違えた提案をして火種を生んだケースです。例えば市民が敏感な施設統廃合問題を安易に書き込んでしまい反発を招いた等、政治勘も問われる点でコンサル側も慎重さが必要です。
成功例として、ある自治体でコンサルが丹念に対話を重ね反対意見の多かった公共施設再編に一定の理解を得る計画を作り上げたケースがあります。
なるほどね〜〜 これはめっちゃバリュー出してるblu3mo.icon
「金を払えば面倒ごとが解決する」装置やなtkgshn.icon
計画の継続性と評価対応:計画策定後もコンサルが関与し、行政評価や次期計画策定に連続して携わることで、計画の実行度を高める役割もあります。いわば伴走支援で、計画書を作って終わりにしないところに価値があります。例えば大阪府のある市では、総合計画策定を請け負ったコンサルがその後の進行管理委員会にも参画しKPI評価を支援、計画推進に責任を持ったという例があります。こうした場合、首長や職員から非常に信頼され「〇〇さん(コンサル)の言う通りやろう」という関係になっていることも。逆に失敗例では、計画策定では派手な提案をしたが後フォローがなく、計画が絵に描いた餅で終わったというケースです。コンサルも契約が切れれば関与しないことが多いですが、本来は評価や次期策定で検証されて初めて「成功」と言えます。この点、MURCの自治体経営調査でも「評価指標の設定や評価後の改善が課題」と挙がっているように[ https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2024/09/seiken_240910_01.pdf]、計画を実効あるものにするプロセス支援が今後の鍵となります。 全体として、コンサルティング事業の成功は、自治体が**「自力では難しかった策定を質高く時間内にできた」「計画内容に納得感があり実行段階でも活きている」**と感じられるかにかかっています。成功事例は往々にして目立ちませんが、計画策定が平穏無事に終わりスムーズに施策展開できている自治体の陰には、大抵コンサルの貢献があります。一方、失敗事例はメディアで取り上げられることがあります。例えば過去には「自治体総合計画の文章が他市と酷似(実は同じコンサルが類似文章を流用)」と指摘され問題になったケースや、コンサル提案の将来人口見通しが過大で計画達成が困難になった例などがあります(具体名は伏せますが、ネット上でも話題になりました)。こうした失敗は、コンサル側の品質管理や倫理の問題もありますが、発注者側のチェック不足でもあります。現在ではプロポーザル時に提案書のオリジナリティや実現可能性を厳しく見るなど、防止策も取られています。
具体名は伏せますが、ネット上でも話題になりました
具体名ふせんなよblu3mo.icon*3
これは内部のリサーチャーが1人知り合いblu3mo.icon
/icons/hr.icon
この下は一般論すぎるので読み飛ばしたblu3mo.icon*2
3. 総合計画策定×AI技術:活用可能性と参入機会
3.1 総合計画プロセスにおけるAI活用が見込まれる領域
近年のAI(人工知能)技術の飛躍的発展は、自治体の計画策定業務にも新たな可能性をもたらしています。自然言語処理(NLP)技術や生成AI(Generative AI)、対話型AI、データ分析AIなどを活用することで、総合計画策定の各プロセスにおいて効率化・高度化が期待できます。具体的に参入可能と思われるプロセスとAI活用ニーズを整理します。
3.2 既存事業者の技術活用状況とAI活用による差別化機会
AI活用を前提とした低コスト・短納期サービス:従来、計画策定には1年以上と多額の費用がかかりました。AIで効率化すれば、「3か月でドラフト作成」「コスト半減」といったウリが出せる可能性があります。特に小規模自治体向けに、AIで素早く計画骨子を生成し、それをもとに簡易な計画を策定するサービスなどは差別化につながるでしょう。例えばAIエージェントで総合計画の叩き台を自動作成し、人手は最小限のブラッシュアップのみ、という提案です。このようなスピード・安さ重視の領域で、新規プレイヤーが台頭する余地があります。
現状、既存事業者のAI活用は緒についたばかりなので、新規参入プレイヤーが「AI×計画策定」の旗を鮮明に掲げれば注目**を集めるでしょう。もっとも自治体側がそれを受け入れる土壌があるかは別問題です。次節では自治体のAIリテラシーや導入障壁について述べます。
3.3 自治体のAIリテラシー・導入障壁と克服策
AI活用を推進する上で、自治体側のリテラシーや心理的ハードルにも目を向ける必要があります。総合計画策定へのAI導入に際し、自治体には以下のような懸念や障壁があると考えられます。
これらの障壁をどう乗り越えるかが、AIの参入におけるカギです。考えられる克服策・促進策をいくつか挙げます。
実証実験と成功事例の共有:自治体は横並び意識が強く、他がうまくいけば追随しやすいです。まずは数自治体でパイロット的にAI活用策定を行い、成功事例として発信することが重要です。「○○市ではAIが要約した住民意見を用いて計画を策定、住民からも分かりやすいと好評だった」等の実績が出れば、他自治体も安心して検討できます。国の補助事業などでこうした実証を支援すると効果的です。また先行自治体の担当者同士が情報交換する場(勉強会やセミナー)を設け、具体的メリット・課題を共有することもリテラシー向上につながります。「大量の資料要約にAIを使ったら職員○百時間の節約になった」等の数字を示せれば説得力があります[ https://kinochannel.jimdofree.com/aijichitai/]。 参考文献・資料出典(一部):
blu3mo.icon
自治体の総合計画策定と、それに対するコンサル事業について理解を深めたい。 1) 総合計画策定自体についての理解を深めたい。何のために、どんなステイクホルダーの間で調整がなされて、どんなことが策定されていて、どうその後に影響を及ぼすのか、など。表の話と、リアルな話を両方。 2) コンサル事業について プレイヤー、予算規模、具体的な提供サービスや顧客が感じている価値、解いているペインなどについてのリアルな解像度を高めたい。
Deep Research
1. 総合計画策定:制度背景・目的と実態
1.1 総合計画の制度的背景と構成
自治体総合計画(地方自治体の最上位計画)は、地域の長期的ビジョンと行政運営の方針を示すものであり、「基本構想」「基本計画」「実施計画」という三層構造で構成されることが一般的です[1][2]。基本構想は将来像と基本方針を定める長期ビジョンであり、期間は概ね10年間とされます[3]。基本計画は基本構想実現のための中期計画(多くは5年程度)で、分野別施策の体系を示します。実施計画は基本計画に基づく短期の行動計画(多くは3年程度・毎年度更新)で、具体的な事業内容や所要予算を示すものです[4][5]。三層を通じて「構想→計画→実施」を一貫させ、将来ビジョンから日々の事業までを連結する仕組みになっています[6]。この総合計画を策定・推進することは、市町村にとって中長期的な行政運営の設計図を描く作業と位置付けられます[7]。 三段構造なのねblu3mo.icon
市長が変わるとどうなるんだろう?blu3mo.icon
下を参照する限り、総合計画は変わらないが、基本計画は市長の任期の期間ベースっぽいtkgshn.icon
歴史的には、1969年の地方自治法改正により市町村に基本構想の策定義務が課せられたことで全国的に総合計画制度が整備されました[8]。以降、1980年代には基本構想策定率90%、基本計画80%、実施計画70%超と定着し、自治省(当時)の調査も1995年以降は終了するほど普及していました[9]。しかし2011年の法改正でこの義務規定が撤廃され、総合計画は法定計画から任意計画へと移行しました[10]。義務ではなくなったものの、2024年度時点でも95.1%の市区町村が基本構想を、92.1%が基本計画を策定しており、依然ほとんどの自治体で総合計画が策定されています[11]。基本構想策定義務廃止後、各自治体は独自に条例等で計画策定の根拠を整備する動きも強まり、総合計画策定に関する何らかの根拠条例を持つ自治体は89.7%に達しています[12]。例えば「議決すべき事件を定める条例」で総合計画を議決対象と位置付けたり、総合計画条例・自治基本条例で策定義務を課すケースが増えています[12]。これは法の義務が無くなっても各自治体が計画を自主的に位置付け直していることを示しています。 なお、現在の計画期間設定の傾向として、基本構想は10年周期が最も多く、一般市では約7割が10年としています[13][14]。基本計画は4~6年程度が多く(多くは市長任期に合わせ5年)、実施計画は3年でローリング方式という例が一般的です[14][15]。しかし法改正後は計画期間も柔軟に見直す自治体があり、基本構想をあえて定めず基本計画と実施計画の二層構成や、逆に基本構想と実施計画だけの二層構成とする自治体も見られます[16][17]。実際、約20%の自治体が二層構造(横浜市など)を採用しており、三層構造多数派ではあるものの二層化の動きが近年上昇しています[18][19]。二層にすることで策定コスト削減や計画簡素化を図るメリットがある一方、中期計画がなくなることで全体方針の網羅性低下や、実施計画に盛り込む事業が増えて扱いづらくなるデメリットも指摘されています[20][21]。自治体によっては総合計画を廃止し「市政運営の方針」など代替の簡易な指針を策定する例(藤沢市など)もあります[22]。このように総合計画の構成・形式は各自治体で多様化しつつありますが、依然「三層構造が75%以上に定着し、職員や市民にも分かりやすい標準形」との評価があります[18][23]。 まあ計画は立てたほうが仕事しやすいわなblu3mo.icon
10年構想、5年計画、3年実施計画blu3mo.icon
我々は何を目指すか
どうなってないといけないか
どうやるか
みたいな感じの認識だけどちょっと違うのかな?tkgshn.icon
三層は多いなと確かに思ったblu3mo.icon
1.2 総合計画策定に関わるステークホルダーと関係性
総合計画の策定には、自治体内外の多様なステークホルダーが関与します。まず首長(市町村長)は計画の方向性を示すリーダーであり、自らのマニフェストや行政ビジョンを計画に反映させようとします。自治体職員は企画部門を中心に策定事務局を構成し、各部局と調整しながら素案作成や調査を担います[24]。しばしば庁内に「総合計画策定本部」や横断的なプロジェクトチームが設置され、中堅職員を含めた職員参加の体制が敷かれます[25]。また計画策定過程で職員の参加を促すことは、政策の総合的検討や人材育成の面からも重要視されています[26][27]。幅広い職員が関与することで、計画の内製化による組織内の信頼醸成や政策統合、人材育成といった効果があるとされます[26]。 一方、外部有識者や市民代表からなる総合計画審議会(諮問機関)が設置されることも多く、ここが基本構想案の審議や答申を行います[28]。審議会には大学教授、地元経済人、NPO代表、一般公募市民などが委員として加わり、テーマ別の分科会で職員と議論するケースもあります[29]。審議会での議論を通じて計画案の方向性を客観的に点検し、市民感覚や専門知見を織り込む役割を果たします[29]。審議会でまとめられた意見は首長へ答申され、計画案に反映されます[30]。 策定過程では議会(市町村議会)の関与も重要です。旧制度下では基本構想は議決事項でしたが、現在も78.8%の自治体が基本構想を議会議決対象としています[31]。基本計画を議決する自治体も35.9%ありますが、実施計画まで議決するのは5.4%に留まります[31]。これは、計画内容の詳細度や期間の違いによるもので、短期で流動的な実施計画ほど議決対象にしない傾向にあります[31]。とはいえ議会としても総合計画は行政全施策の起点であり、議員にとって計画を読み解くことは予算審議を超えて全体像を掴む上で重要とされています[32][33]。実際、総合計画を把握すれば「この事業は将来ビジョンのどの部分に繋がるのか」といった問いに説得力をもって臨め、議会質問の戦略的組立てにも資するという指摘があります[34][35]。そのため計画策定段階から議会説明会を開いたり、議員アンケートや意見聴取を行う自治体もあります。最終的には首長が議会に計画案を議案提出し、議決(承認)を経て基本構想等が正式決定される流れです[24]。 市民や地域利害関係者の参加も近年重視されています。策定時には市民アンケートやタウンミーティング、ワークショップ等で幅広い意見を集約し、計画に反映しようとする取組が一般化しています。実態として、ほぼ全ての自治体がパブリックコメントを実施し、市民アンケートは約9割が行っています[36]。対面での市民ワークショップ実施率は60%以上にのぼり、特に若年層から意見を収集する取組も約5割の自治体が行っています[37]。自治会・町内会からの意見聴取や地域別懇談会を開く自治体も3割程度あります[38]。これらの市民参加は、計画策定段階であらかじめ議論と合意形成を図ることで政策実施時の摩擦を抑える狙いがあります[38]。また行政内部から見ると、市民ワークショップで職員が市民と課題を共有したり施策の狙いを説明することで、相互理解が深まりメリットが大きいとの声もあります[39]。策定後には推進市民委員会などを設置し、計画進行管理や見直し提言に市民の意見を継続的に取り入れる仕組みを設ける自治体も見られます[40]。 ほぼすべての自治体がアンケートやパブコメ なるほど〜blu3mo.icon
義務がないのに9割以上がやっているの、公務員って感じでいいblu3mo.icon
このように総合計画策定は、多様な主体が**「首長のリーダーシップの下、職員が案を練り、市民・有識者が議論に参加し、議会がチェック・承認する」**という重層的プロセスとなっています。形式上は審議会やパブリックコメントで広く意見を募りつつも、最終的な意思決定責任は首長と議会にあります。そのバランスの中で計画の妥当性・実効性が確保されることが理想とされています。
1.3 策定プロセス:形式と実態のギャップ
形式的な策定プロセスは概ね以下のステップで進みます[24]: 1. 計画方針の策定・素案作成:庁内策定本部や企画部門が、首長の施政方針や上位計画(都道府県計画・国家戦略など)を踏まえ基本構想の素案を作成。現状分析のための基礎調査や統計データ分析、市民意識調査なども実施。必要に応じてコンサルタントを活用。
2. 審議会等での審議:有識者や公募市民からなる総合計画審議会へ首長が諮問し、素案を叩き台に議論。テーマ別の部会で詳細検討し、修正提言をまとめる[28]。最終的に審議会から答申として計画案の妥当性や意見が首長に提出される。 3. パブリックコメント・住民説明:計画案を公表し一定期間の意見募集。市民説明会やウェブ掲載により広報。寄せられた意見に対する考え方も整理し、公表する(※ほぼ全自治体で実施[36])。 4. 議会での審議・議決:基本構想および必要に応じ基本計画を議会に提出し、所管常任委員会・本会議で審議のうえ採決。議決をもって計画を正式決定[31]。 5. 計画書公表と周知:決定した総合計画を冊子・PDFで刊行し、市民や職員に配布・公開。概要版やパンフレットを作成する自治体も多い。
6. 実施段階へ:実施計画に基づき毎年度の予算編成・事務事業を展開。進行管理や評価を行い、必要に応じ次年度実施計画や中間見直しに反映。
以上が「表向き」のプロセスですが、実態としては以下のような課題や裏側の事情も指摘されています。
コンサルタントへの依存:多くの自治体で策定業務の相当部分を外部委託し、コンサルタントが調査分析や原案執筆を担っています。通常業務と並行して数百ページの計画書を作るのは膨大な作業であり、専門知識も要するため「策定時にはコンサルに委託するのはよくあること」とされています[41]。ただし**「丸投げ」になりがちなケースもあり、自治体職員は仕様書作成やデータ提供だけで出来上がった原案を受け取るような状況も見られます[42][43]。結果として計画内容がテンプレート的で地域の実情に即していない恐れもあります。現に「どこの市町村も同じような計画で金太郎飴**のようだ」と揶揄されることも少なくなく、総花的で特色がないと批判されてきました[44]。このような形骸化を防ぐためには、自治体側が自らの課題意識や仮説を持ってコンサルと協働することが重要と指摘されています[45][46]。 なるほどね〜 まあコンサルとしては使いまわしてテンプレ化したほうがコスト低いblu3mo.icon
審議会の形式化:総合計画審議会は本来計画案を綿密に審議する場ですが、実際には開催回数や時間が限られる中でほぼコンサル・職員作成案を追認するだけになっている場合もあると言われます。メンバーの中には専門用語が多い計画案を十分咀嚼できないまま意見表明するケースもあり、審議会の実効性に疑問を呈する声もあります(※一方で前述のように分科会で職員と委員が議論し方向性を確認でき有益だったとの証言もあります[29])。とはいえ少なくとも外部の目で計画をチェックするプロセス自体には意義があり、計画策定の正当性付与の役割も果たしています。 市民参加の実質:アンケートやワークショップで多くの意見を募っても、最終的な計画には抽象的な総意しか反映されず、個々の市民の声がどこまで生きているか不透明との指摘があります。パブコメも賛成・一般論が多く、政策の大胆な転換につながることは稀です。ただ近年は**「グラフィック・レコーディング」**(会議内容をその場で視覚的に図解する手法)をワークショップに導入する自治体も増え、参加者の対話を促進する工夫もみられます[47]。この手法導入率は上昇傾向にあるものの、「人材確保が難しい」ことを理由に未導入の自治体も多いのが現状です[47]。 計画策定にかかる負荷とコスト:総合計画策定は自治体にとって人的・時間的コストが大きい事業です[48][49]。法定義務がなくなった後もその負荷は問題視されており、特に職員数の限られた小規模自治体では大きな負担です。「形だけの計画に多大なコストを割いている」との批判から藤沢市のように総合計画を廃止する判断も出ました[50]。また長期計画ゆえに社会情勢の変化や首長交代で見直しが必要になる場合も多く[51]、そのたびに追加の労力がかかります。こうした背景もあり、国は2023年に**「計画行政見直し方針」を示し、計画形態の簡素化や関連計画の統廃合、「できる規定」の優先検討**(義務ではなく努力義務化)など効率的・効果的な計画策定を促す方向性を打ち出しています[52][53]。 以上のように、表向きは民主的かつ緻密なプロセスが謳われている一方、実務上は**「コンサル任せ」「形式的な住民参加」「大部な計画書作成に追われる」**といった実態上の課題が潜在しています。このギャップを埋めるべく、一部コンサルタントからは「総合計画を形骸化させない」運用(策定した計画を日常的に使い倒す)や、「全職員の行動指針となる計画」への転換が提案されています[54][55]。自治体自身も「何のために計画を作るのか」を再定義し、前例踏襲ではない自自治体らしい計画づくりを目指すべきだとの提言があります[56][57]。例えば、財政厳しい団体なら予算・事業統制機能を重視した計画に、大都市なら将来ビジョン提示を重視した計画にするなど、目的を明確化し計画を使いこなす覚悟が求められるという指摘です[58]。 「コンサル任せ」「形式的な住民参加」「大部な計画書作成に追われる」
なるほどね〜〜blu3mo.icon
全体的に、それはそうすぎるblu3mo.icon
これを読む限りだと、「低コストに、リアルな声を反映した正当性ぽさのある、重厚な計画書が出せる」ととても良さそうblu3mo.icon
ちょっとテクニカルかもしれないが、個人の発言をワードサラダにして作るのではなく、それぞれの発言に対してリンクができるとそこら辺を強調できるのかもしれない
1.4 総合計画が自治体運営・政策決定に及ぼす影響
総合計画は理念的な性格が強く「作って満足、あとは棚上げ」となりがちだという批判が昔からあります[59]。実際、多くの自治体職員から「策定時には手間をかけるが、本になったら日常的には使われない」「予算や補助金申請の根拠資料として使う程度で、日々参照される計画にはなっていない」という声が聞かれます[59]。このように計画の実効性が低く行政運営に活かされていない状況への反省から、「形骸化させない」「使われ続ける総合計画」を目指す動きが近年強まっています[54]。その一環で、計画と予算・行政評価を連動させる仕組みを構築する自治体もあります。例えば総合計画に掲げた施策体系と予算編成を紐付け、予算要求時にどの基本計画目標に資する事業かを示すルールを設けたり、行政評価システムで総合計画の施策ごとに進捗・成果を測定するなどの取り組みです[60]。【※】しかしながら、総合計画で全事業を統制することには限界もあり、**「計画によって事業や予算をどこまで縛るかは非常に難しい問題」**とも言われます[31]。あまり硬直的に計画=予算にすると変化に対応できなくなるため、計画運用にはある程度の柔軟性も求められるからです[31]。 そうした中でも、総合計画は自治体の政策体系の根幹として一定の影響力を持っています。まず予算編成への指針としての役割です。実施計画を毎年度の予算編成指針と位置付ける自治体では、各部局が実施計画に沿った事業提案を行い、新規事業は実施計画の枠内でしか認められない、といった運用をしています[61][62]。重点プロジェクトを設定しそれに優先的に予算配分する手法も取られ、約8割の自治体が総合計画に「重点プロジェクト」を設定しています[63]。ただし実際に積極的な予算付け(重点的に予算を配分)する自治体と、そうしない自治体が半々程度という調査結果もあり、重点プロジェクトの本気度は自治体によって差があります[19]。 次に他の計画類との関係です。総合計画は縦割りの個別計画を統合する上位計画と位置付けられますが、実際には各分野計画が乱立して総合計画が総花的になる傾向がありました[64]。しかし2015年以降、地方創生関連で各自治体に策定が求められた「地方版総合戦略」(まち・ひと・しごと創生総合戦略)との整合も課題となり、総合計画基本計画と総合戦略を一体化する自治体が増加傾向にあります[65][66]。他方、新たに国策として打ち出されたデジタル田園都市国家構想の推進戦略については、総合計画とは別立てで策定する自治体が多いものの、一部では既存計画への統合や要素反映が検討されています[67][68]。また近年ほぼ全ての自治体が取り組むSDGsについても、「既存計画にSDGsの概念や要素を盛り込んだ」自治体が約91%に達しており[69]、総合計画の理念や施策体系にSDGs目標を関連付ける例が多数見られます。もっとも「計画に盛り込む」に比べ具体の事業実施まで伴うケースは少なく(事業実施36.9%[70])、絵に描いた餅に終わらせず実行に移すことが課題です。 政策形成プロセスへの影響という観点では、総合計画策定を通じて庁内の政策議論が活性化し職員の政策形成能力が向上する効果が期待されます[39]。実際、策定段階で各部局横断のプロジェクトを組み政策課題を洗い出す中で、職員が自分の担当外の分野も含め広い視野で議論する機会となります。その結果生まれたネットワークや共通認識は、計画策定後の施策実施段階でも部局間連携を促す土壌となります。また、市民参加を経ていることで事前の合意形成がある程度できており、新規施策でも住民の理解・協力が得られやすくなるという利点も指摘されます[38]。総合計画に市民参加や職員参加の手続きが不可欠とまで言われるのは、「策定過程そのものが政策学習と合意醸成のプロセス」という側面があるためです[71]。 ただし現状では、総合計画を実際の政策判断で日常的に参照している自治体は多くないのが実情でしょう。「作った後は机の中にしまわれる計画書になりかねない」という指摘の通り[72]、計画策定時は熱心に取り組んでも完成後に活用しなければ莫大な時間と労力の割に有効性を感じられません[56]。そこで計画を単なる飾りにしないため、策定後の運用体制(進行管理・評価・見直しのPDCAサイクル)をしっかり構築することが重要となっています[54]。例えば、総合計画と行政評価をリンクさせ年度ごとに施策の進捗をチェックし、計画達成度を可視化して公表する取り組みが見られます。またKPI(重要業績指標)の設定も広がっており、全ての施策に数値目標を設定している自治体は約6割に達し、未だ目標値を設けていない自治体の割合は減少傾向にあります[73][74]。平成28年度(2016年)以降、EBPM(証拠に基づく政策形成)志向の高まりもあって、施策ごとに定量的な成果指標を設ける自治体が増えているのです[74]。2024年調査では93.6%の自治体が何らかの定量指標を計画に設定し、アウトカム指標(結果指標)にまで踏み込んで全施策に目標値を設定している自治体も14.0%あります[74][75]。もっとも、こうした評価指標の運用には苦労も多く、「内部評価の事務負担が依然大きい(78.5%)」「適切な指標設定や評価後の改善が課題」と答える自治体も増えています[76]。 形骸化させないのであれば、良いKPIを設定する能力のある人が作らないとむしろ毒になりそうblu3mo.icon
総じて、総合計画は*「行政施策の根拠となるまちづくりの設計図」*と位置付けられ[77]、その理念は各種政策の基本となっています。しかし同時に、計画通りに物事が進むとは限らない現実の中で、計画をいかに実効性あるものとし運用するかが問われています。「国が義務付けたから作る」のではなく、自らの自治体経営に必要だから作り、作った後も使い倒すことができれば、総合計画は行政マネジメントの強力なツールとなり得ます[57]。逆に目的もなく前例踏襲で作ればコスト倒れになり、形骸化批判を招くでしょう[56]。現在はその岐路にあり、多くの自治体が試行錯誤を重ねている状況です。 1.5 市民参加・合意形成とデータ活用の現状
前述の通り、市民参加は総合計画策定に不可欠とされています。実態調査でも**「総合計画策定過程に市民や職員が参加する手続きを欠かせない」**との指摘があり[71]、広範な意見集約による事前の合意形成効果が期待されています[38]。現状では以下のような市民参加手法が取られています。 パブリックコメント:ほぼ100%の自治体が計画案段階で実施[36]。自治体ウェブサイトや広報誌で案を公表し、メールや郵送で意見募集。寄せられる意見数は自治体規模によるが数件~数百件程度が多い。寄せられた意見への市の対応も一覧公表される。形式的との批判もあるが、市民に計画案を示す最低限のプロセスとして定着。 100%やってるのはでかいな〜tkgshn.icon
とはいえ、これを公聴aiで代替はできそうtkgshn.icon 市民アンケート:約9割の自治体で実施[36]。無作為抽出や全戸配布による意識調査で、自治体の課題認識や行政満足度、将来像に関する住民意向等を統計的に把握する。**「統計的に十分な回答数が得られれば、審議会や議会、市民への説得力ある説明根拠となる」**ため広く採用されていると分析されています[78]。 市民ワークショップ・懇談会:対面での意見収集は一般市で63.4%が実施[38]。公募市民や地域代表者を集め、グループ討議でまちの将来像や課題について議論。61.9%の自治体が市民ワークショップを行ったとのデータもあり[37]、多数派となっています。特徴は参加者同士・参加者と職員の直接対話があることで、**「行政が取り組むべき課題を市民と職員が共有し、行政施策の狙いを説明できるメリットがあった」**とする事例報告もあります[29]。職員がグループに加わり住民目線の意見を聞くことで、計画立案に現場感覚が活かされる効果も期待されています[29]。一方で参加者の偏り(声の大きい人に引っ張られる等)や継続参加のハードルなど課題もあります。 特定層への意見聴取:若年層からの意見収集は約50%の自治体が実施[37]。高校生や子育て世代を対象にしたアンケート、ワークショップ、あるいはSNS等オンラインでのアイデア募集など工夫がみられます。また自治会・町内会からの意見聴取は32.3%、各地域の区長会などを通じた要望集約が行われることもあります[38]。産業界(商工会議所等)やNPO団体ヒアリングも行われる場合があります。 合意形成の実態:市民参加により多様な意見が出されますが、その全てを計画に盛り込むことはできません。行政はアンケート結果やワークショップ議事録から主要な論点を抽出し計画素案に反映しますが、往々にして抽象度の高い表現にならざるを得ず具体策までは盛り込めません。「市民の声を反映しました」と言っても、市民側からは実感しにくい場合もあります。しかし、参加プロセス自体に価値があるとの評価も重要です。住民が自分のまちの将来について考え発言する機会を持つことで、計画に関心を高め身近に感じてもらう効果が期待でき[79]、計画への公共的正当性(レジティマシー)が付与される意義があります[79]。加えて参加過程で行政施策への理解が進むことで、計画推進時の協力や主体的参画(例:地域プロジェクトへの住民参加)につながることもあります。 データ活用の側面では、近年EBPM(Evidence-Based Policy Making:証拠に基づく政策立案)がキーワードとなっています。自治体でも約3割がEBPMを「推進中または具体的検討中」と回答するなど関心が高まっていますが、7割弱はまだ具体的な検討まで至っていないのが現状です[80]。EBPM推進団体では、行政評価の仕組みにEBPMを組み込んでいる割合が4割強あり、ロジックモデル(施策の因果関係を図示する手法)の認知度・活用も徐々に上昇しています[81]。とはいえ課題として「手法・ノウハウ不足」「庁内理解不足」「人手不足」が挙げられ[82]、データ分析を駆使した計画策定にはスキルとリソースの壁があります。総合計画に関して言えば、定量目標の全施策設定率が約6割と述べたように一定程度データ志向が進んでいる一方で、「内部評価作業が重い」「適切な指標設定や評価後の改善が課題」という声が多く、データ活用を効果的に行う体制構築には苦労している状況です[76]。 しかしながら明るい動きもあります。自治体によっては高度なデータ分析やシミュレーション技術を計画策定に取り入れ始めています。例えば愛知県高浜市では、第7次総合計画策定に際し、京都大学の研究者や日立製作所と連携してAI技術を用いた未来シナリオ分析を試みました[83]。図:高浜市におけるAI活用による将来シミュレーションの流れ(2020年・日立コンサルティング資料)[84] 同市では職員プロジェクトチームが361項目もの指標データを洗い出し、指標間の因果関係をワークショップで定義した上で、日立京大ラボ開発のAIに2020~2050年の人口や経済など複数領域データを学習させました[85]。そして約2万通りのシナリオをAIが生成し、代表的な23シナリオを抽出、将来像に至る分岐パターンを分析するという先進的手法を用いました[86]。この結果を基に「2050年のあるべきまちの姿」を職員と有識者で検討し、計画基本構想の検討材料としたのです。こうしたビッグデータ解析・AIシミュレーションの導入はまだ例外的ですが、人口減少社会で将来予測が不確実な中、科学的根拠に基づく政策シナリオ検討として注目されました。 これやってる日立の中の人こないだ会ったわblu3mo.icon*2
お〜これ単価上がってるの?tkgshn.icon
また、総合計画策定時のオープンデータ活用も進みつつあります。各種統計やGISデータを活用し、可視化ツールで地域課題を分析する事例や、複数自治体の計画を横断比較して自地域の特徴を浮かび上がらせる試みもあります[87]。総合計画等のテキストマイニングにより頻出キーワードや他自治体との違いを分析する研究なども行われています。さらに住民参画系では、Web上で誰でも自由にアイデアを書き込めるオープン対話型のまちづくりプラットフォームを利用し、投稿内容をテキスト分析で傾向把握するといった新しい参加・データ活用手法を模索する自治体も出てきました。 もっとも、多くの自治体では依然ExcelやWordでの手作業が中心で、データ活用はアンケート集計程度に留まっているのが実態でしょう。EBPM推進上の壁として、先述の人的リソース不足やスキル不足に加え、庁内データの散在・未整備、分析結果を政策に繋げる意思決定プロセスの未構築など構造的課題があります。また数値目標を掲げても、「人口減少局面でむやみに右肩上がりな指標設定は現実的でない」との指摘もあり[88]、指標の設定自体を見直す動きも必要とされています。総じて、市民参加とデータ活用はいずれも理想と現実にギャップがありますが、双方とも今後の計画行政を左右する重要テーマであり、各自治体が模索を続けている段階です。 2. 総合計画コンサルティング事業の実態
2.1 市場構造:プレイヤーと受注動向
自治体の総合計画策定を支援するコンサルティング市場には、大手シンクタンク系から中小専門社、個人事業主まで多様なプレイヤーが参入しています。市場規模は明確な統計はないものの、全国約1700自治体の大半が総合計画を策定しており、その多くで外部委託が行われていることから、毎年相当数(数百件規模)のコンサル契約が発生していると推測されます。実際、日本政策総研(J-PRI)などのコンサル企業の実績を見ると、毎年度多数の自治体から総合計画策定支援業務を受注していることが分かります。例えばJ-PRIでは2025年度に渋谷区(東京都)、大田原市(栃木県)、川越市(埼玉県)、習志野市(千葉県)など複数自治体の総合計画策定支援を契約しており[89]、2024年度にも北茨城市、豊島区、三原市(広島県)等の支援実績があります[90]。このように大都市から中小都市まで幅広く案件が存在し、コンサル各社で分け合う構図です。 主要プレイヤーとしては、まず大手シンクタンク系列が挙げられます。三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)、三菱総研、野村総合研究所(NRI)、みずほリサーチ&テクノロジーズ、NTTデータ経営研究所、日立製作所系(日立コンサルティング)などが官公庁向け部門を持ち、政令市や中核市クラスの案件を手掛けることがあります[84](例:熊本市・吹田市・板橋区などの次期総合計画策定支援をMURCが受託[91])。これら大手は自治体経営全般のコンサルやDX支援も含め広範なサービス提供をしており、総合計画もその一環です。 なるほどね〜 総合計画は総合的なサポートパッケージの一つだったりするのかな 実質的には抱き合わせで売られていそうblu3mo.icon
次に専門コンサル会社・シンクタンクです。地域経営や都市計画分野に特化した中堅コンサルとして、株式会社創建(地域経営戦略コンサル)、日本政策総研(J-PRI)、東京中心の都市調査系(例えば都市文化研究所、都市計画コンサル各社)、地方銀行系列シンクタンク(例:横浜銀行系の浜銀総合研究所など)も受注しています。創建は東京都港区の基本計画策定支援など複数実績があり[92]、J-PRIは川越市や豊島区、久留米市等全国の自治体の総合計画を支援しています[89][93]。また建設コンサルタント系の会社も都市計画部門で参入しています。例えば日本工営や大日コンサルタント、パシフィックコンサルタンツ等、従来インフラ計画主体の企業も「都市・地域計画」分野で総合計画策定支援を行っています[94]。さらに地方自治体出資の地域シンクタンクも無視できません。各県庁や政令市には政策研究所的な財団・公益法人があり、地域事情に通じたこれら団体(例:山梨総合研究所[95]、長野経済研究所など)が地元自治体の計画策定を請け負うケースもあります。 加えて、個人や小規模事務所によるコンサルも存在します。自治体OBや大学研究者が中心となって立ち上げたような小さなシンクタンク(例えば〇〇地域計画研究所)や、フリーのコンサルタントがプロポーザルに応募し契約を得ることもあります。特に小規模町村では契約金額が小さい(後述)ため大手よりも機動力のある個人や地元コンサルが選ばれる傾向があります。また最近では地方創生人材支援制度等で自治体に派遣される地域プロデューサー的人材が、計画策定をリードする形もあり、必ずしも「コンサル契約」という形に現れない支援もあり得ます。
市場競争はかなり活発で、自治体は公募型プロポーザル方式で広く提案を募ります。ある案件に対し3~5社程度が応募し、プレゼン・提案審査で1社選定というのが一般的です[96]。実際、熊本県荒尾市の総合計画支援業務では4者が提案して競合した例があります[96]。評価ポイントは過去実績、提案内容の妥当性(住民参加手法の工夫、計画の先進性提案など)、体制や見積価格などです。価格だけでなく「価格以外も総合評価する」と要領に明記する自治体が多く[97]、最安ではない会社が選ばれることもしばしばです。もっとも、各社が持つ知見やスタイルにはある程度の差があり、近隣自治体の計画を担当した実績がある会社が有利になる傾向もあります。 実績と信頼は構想日本に乗っかっていきたいねblu3mo.icon
2.2 コンサルティングの提供サービス内容
総合計画に関するコンサルティングサービスは多岐にわたりますが、主な内容は以下の通りです。
計画書の作成支援:これは核となるサービスで、現状分析から施策立案、文章作成、レイアウトまで計画書作成の一連をサポートします。具体的には地域の社会経済データ収集・分析、行政職員や市民からのヒアリング、他地域の事例調査を踏まえ、計画素案の文章起草を行います。文章は行政の意向を汲みながらコンサルタントがドラフトし、修正を重ねていく形です。特に**「漠然としたまちの将来像を地域の方々と共有できる構想や計画にまとめ上げる」**ことや[98]、統計データや地域の声から実態を把握して施策を体系化することが、計画策定支援の専門スキルとされています[99]。 各種調査・データ分析:職員や市民へのアンケート調査の企画・実施、集計分析は頻出サービスです。また人口推計や財政シミュレーション、都市の強み弱み分析(SWOT分析など)、GISを用いた地域特性の可視化等、専門的データ分析を提供します。コンサルは全国の統計データにアクセスしやすく、分析ノウハウも持つため、自治体単独では難しい高度な分析で知見を提供します。これは自治体職員が「感覚的に分かっているつもり」のこともデータで客観化し、職員の思い込みの検証にも役立つとされています[100]。 住民参加プロセスの設計・運営支援:コンサルは計画策定時のワークショップや説明会の企画運営も担います。ファシリテーター役として中立的立場で議論を進行し、グループワークの手法(KJ法や将来構想ゲームなど)を取り入れるなどの工夫を凝らします。また**「市民の参画等の過程を重視しながら、調査から計画策定まで一貫支援」することを理念に掲げる会社もあります[7][101]。この過程では単に場を回すだけでなく、出てきた多様な意見を集約・整理して計画に反映する作業(議事録や提案集の作成など)も含まれます。最近では前述のグラフィック・レコーディング**の専門スタッフや、オンライン会議システムを使ったハイブリッド型ワークショップの運営もサービスに含む場合があります。 やった感演出テクノロジーだなblu3mo.icon*2
KJ法とかグラレコとか
グラレコってまじでやった感演出よなwtkgshn.icon プロジェクト管理・スケジュール策定:策定期間中の全体工程表の作成や、庁内調整会議の日程調整、審議会資料・議事録作成補助など、プロジェクトマネジメント的な役割もコンサルが果たします。特に初めて総合計画を担当する職員にとっては、何をいつまでに準備すべきか経験が少ないため、コンサルタントが**「影の事務局」**として裏で段取りをつけるケースもあります。
政策提案・アイデア提供:各自治体固有の課題に対し、他自治体の先進事例や新しい政策トレンドを踏まえたアイデア出しも重要なサービスです。「他の地域でこんな施策があります」「国の動向からこの分野が今後必要です」等、コンサルは広い知見から施策メニューの選択肢を示します[41]。特に自治体側が知見不足な分野(例:SDGsの具体化策やデジタル化戦略など)では、コンサルの提案に依存する度合いが高まります。実際**「コンサルの経験が生かされるのは、他地域事例に通じ、定量評価手法のノウハウがある部分」**であり[102]、それらを提供することで計画の内容が厚みを増すことになります。 これは構想日本もありそうtkgshn.icon
行政内部調整支援:首長と職員、また各部局間の調整もコンサルが陰で補佐します。例えば、部局ヒアリングを実施して意見対立点を整理し、計画の表現上うまく両立させる案を提示したりします。また首長の公約と現実施策のギャップを埋める文言を考案するなど、政治的調整の潤滑油となる場面もあります。外部者ゆえの客観的視点で「この計画にはこう書くのが妥当」と第三者的提案をすることで、内部のコンセンサス形成を助ける役割です。
このように、コンサルティング内容は調査分析から文章作成、参加手法設計、プロジェクト進行、政策助言、調整まで多岐にわたり、まさに計画策定業務全般を包含しています。実際、ある老舗コンサル会社(KRC)は「創業以来50年近くこの総合計画策定に携わっており、市民参画の過程を重視しながら調査から策定まで一貫して対応している」と述べています[7]。つまり経験豊富なコンサルほど、計画策定に必要な一連の工程をワンストップで請け負い、自治体にとっての頼れるパートナーとなっているのです。 2.3 契約予算規模・件数と自治体規模別の発注傾向
契約額の相場は自治体の規模・内容によって様々ですが、近年の公募プロポーザル公告からおおよその水準が読み取れます。一般に小規模自治体ほど低額、大都市ほど高額となる傾向です。いくつか具体例を挙げます。
茨城県稲敷市(人口約4万、地方都市)では「第3次総合計画策定支援」の委託上限額を**1,498万2千円(税込)**と設定して公募していました[97]。契約期間は約1年半で、基本構想・基本計画策定を含む業務と思われます。 栃木県小山市(人口約16万、中堅都市)の第9次総合計画策定支援では**上限2,900万円(税込)**という提示がなされています[103]。小山市は比較的人口規模が大きく、計画期間も長期、また市民参加等も手厚く実施する可能性があり金額も高めです。 熊本県荒尾市(人口約5万、地方都市)は総合計画支援業務をプロポーザルで実施し、契約金額**約997万6千円(税込)**で落札されています[96]。上限額は1,001万円程度に設定されていたようで[104]、結果的にほぼ上限近くで契約されたことがわかります。提案者は4者ありました[96]。 長崎県対馬市(人口約3万、離島市)では第3次総合計画策定業務の契約上限額が**992万円(税込)**とされています[105]。 東京都豊島区(人口約29万、特別区)の総合計画策定支援では令和6年度業務で3,000万円弱の契約実績がありました(豊島区の案件をJ-PRIが受託[90])。同様に東京23区など大都市部では2,000~3,000万円台の案件も散見されます。 これらから、大まかに**「小規模町村:数百万円~1,000万円未満」「中小都市:1,000万前後」「中核市・特別区:2,000~3,000万円」「政令市:数千万円規模」**というイメージになります。ただし政令指定都市や都道府県は内部職員で対応する部分も大きく、全てを丸ごと委託するケースばかりではありません。実際、都道府県では有識者研究会への調査委託程度で済ます例もあります。
なるほどね〜〜blu3mo.icon
東京都2050のやつでもTTTC運用に数千万出してたのを思い出したblu3mo.icon
年間契約件数については、公的統計はありませんが推計すると、総合計画は概ね10年サイクル(基本構想期間)なので毎年全自治体の1/10程度=約170団体が新基本構想策定期に入ります。さらに5年サイクルの基本計画更新も考えると毎年200~300の自治体が何らかの総合計画策定・改定を行っている計算です。その大半でコンサル支援が入るとすれば、年間200件超の市場があるとも言えます。実際、大手から中小まで多くのコンサル企業がそれぞれ毎年数件~十数件の案件を手掛けており、例えば前述のJ-PRIは2023~2025年度だけでも十以上の自治体と契約しています[89][93]。三菱UFJリサーチ&コンサルティング等も近年の受託実績リストを見ると総合計画関連業務を毎年複数抱えている様子です[91]。このように、総合計画コンサル市場は常に一定数の案件が発生し、需要が継続的に存在する安定市場といえます。 自治体規模別の発注傾向としては、大都市は委託範囲を限定し内部職員と共同で作業するケースが多く、中小自治体ほど包括的に委託する傾向があります。例えば東京特別区や政令市では「基礎調査部分のみ委託」「市民意識調査と取りまとめのみ委託」といった具合に一部工程だけ外注し、計画本文は企画局が自前で作ることもあります。一方、町村部など職員リソースが乏しい自治体では「計画案作成一式」を丸ごと委託し、職員は進行管理と最終意思決定に注力するパターンが見られます。また財政力による差もあり、豊かな都市は高額予算を付けワークショップも何度も実施する一方、厳しい自治体では必要最低限の策定だけ行い参加イベントも少なめにする、といった違いもあります。
どちらにせよ、内部職員との共同作業がゴリゴリに入る前提なんだなblu3mo.icon
2.4 自治体側(職員・首長)が感じるコンサル提供価値と信頼ポイント
自治体職員や首長がコンサルタントに業務を委託するのは、「自前でできない部分を補完してもらう」ためですが、具体的にどんな価値を認め、どの点に信頼を寄せているのでしょうか。
専門知識・ノウハウへの信頼:総合計画策定には政策立案の専門知識や手法が求められます。職員だけでは経験不足な領域(例:統計分析、将来予測モデル、合意形成技法など)で、コンサルの持つ専門ノウハウは大きな武器になります[41]。またこれまでの多数の策定支援実績から得た他地域の事例知識も貴重です。「他の自治体ではこういう施策を盛り込んでいる」「全国的にこの課題にこう対応している」といった情報は、視野が狭くなりがちな自治体内部にとって有益です[41]。首長にとってもコンサルの提案は客観性・専門性の裏付けがあるものとして受け止めやすく、政治判断の参考になります。自治体側はこうした**「プロならではの知見」**に期待し信頼しています。 「合意形成技法」ってなんだろう?blu3mo.icon
ファシリテートのうまさ?tkgshn.icon
業務負荷の軽減:策定事務の煩雑さは前述の通りで、職員にとって計画書の文章案作成や調査票集計といった作業は大きな負担です。コンサルに委託することで**「通常業務を行いながら新たに発生する膨大な作業」を肩代わりしてもらえるのは何より助かります[41]。特に人数の少ない自治体ほど、コンサルが入らないと物理的に策定が不可能な場合さえあります。コンサルは契約期間中、自治体職員と二人三脚で深夜まで作業することもしばしばで、職員から見れば“伴走者”**として非常に心強い存在です。納期までに確実に成果物を仕上げてくれる安心感は、重要な信頼ポイントでしょう。 第三者的・中立的な調整役:計画策定では、庁内で各部局の主張調整や、首長と職員の意向調整、あるいは住民と行政側のギャップ調整など利害調整がつきものです。コンサルタントは外部の立場から中立的ファシリテーターとなり得ます。例えば部局横断の検討会で、特定部の論理に偏らず全体最適の視点で議論を整理する、住民との対話で行政の言い分をかみ砕いて伝え住民意見も代弁する、など微妙な舵取りを担います。自治体職員だけでは言いにくいことも、コンサルがデータを示しつつ指摘すれば受け入れられることもあります。このように**“潤滑油”として調整を進めてくれる点を、首長や幹部は評価します。また議会向けにも、コンサル調査結果や提言という形で示すことで、議員が納得しやすくなる場面もあります。いわば“お墨付き”**を与える役割であり、計画内容への客観的信頼性を高める効果も期待されています。
進行管理とプロセスの安心感:経験豊富なコンサルは策定プロセスの一挙手一投足を熟知しています。職員が不慣れでも「○月には審議会を立ち上げましょう」「アンケートは○月には回収完了させないと間に合いません」等、的確にリードしてくれます。その結果、スケジュール遅延や手戻りを防ぎ、最終的に期限内に計画策定が完了する安心感があります。首長にとっても、自分の任期内にちゃんと計画をまとめ上げられることは重要であり、**“プロに任せれば間違いない”**という信頼につながります。
職員にスキルが足りないケースも全然ありそうね コンサルの言いなりになっておけばいい感じのドキュメントが生えてみんな幸せblu3mo.icon
そら、地方にはいっぱいいそう
というか能力があるやつが職員にならないtkgshn.icon*6
客観的・説得力ある成果物:総合計画は対外的にも公表される公式文書です。文章のロジックや体裁が整い、データや図表も駆使した質の高い計画書に仕上がることは、自治体のブランドにも関わります。コンサルは専門家として洗練された報告書作成に長けており、自治体職員だけで作るとありがちな誤字脱字・表現ゆらぎなどもチェックしてくれます[106]。さらに大量の資料から要点をまとめる、文章を読みやすく構成するといったこともAI等活用しつつ行います[107]。そうした完成度の高いドキュメントを納品してくれる点も、信頼の源です。首長や職員から見れば、自分たちでは到底作れないクオリティの計画書を得られることに価値を感じます。 以上のように、自治体がコンサルに期待し信頼するポイントは、知見の提供・人的負荷軽減・調整の円滑化・プロセス管理・成果物品質とまとめられます。裏を返せば、これらが満たされないとき不満が生じます。例えば「提案がありきたり」「担当コンサルタントが若手で頼りない」「スケジュール管理が甘く遅延した」「他市の計画と似通った文章ばかりだった」等があれば信頼を損ねます。実際、自治体内部には「コンサル任せにすると画一的で特徴のない計画になるのでは」という不安も常にあります[64]。しかし多くの場合、上記メリットがそれを上回るため発注が続いていると考えられます。特に**「豊富な経験・事例を持ち、最新動向にも通じたコンサルは心強いパートナー」**として、高額の税金を投じるに足る価値があると認められているのです[41]。 2.5 コンサルが解決する課題と成功・失敗事例
総合計画コンサルが介入することで、自治体が直面するどのような課題が解決されているのか、改めて整理します。
業務負荷の軽減と効率化:前述の通り、限られた人員で膨大な策定事務を回すのは困難です。コンサル委託により、アンケート集計や文章草案作成といった時間を食う作業が外注化され、職員は意思決定や調整などコア業務に専念できます。これにより策定期間を短縮し、「事務作業が短縮される可能性」を実現します[108]。特に住民説明資料や図表作成など細かい作業も一手に引き受けてくれるため、職員の残業を大幅に減らせた例もあります。成功事例としては、小規模町村でたった一人の企画担当でもコンサルのフルサポートで計画策定を完遂できたケースなどが挙げられます(自治体名は伏せますが、実際「職員1人+コンサル」で立派な計画をまとめた町もあります)。一方、失敗例としては委託範囲を広げすぎ職員がほとんど関与しなかったために、完成後計画内容を職員自身が理解しておらず運用できない、というケースがあります。いくら業務負荷軽減といえど「全部丸投げ」では弊害が出るのです[42]。 知見・アイデア不足の補完:自治体には専門人材の不足する分野が多々あります。例えばICT利活用や産業振興などで目新しい施策アイデアが出ない時、コンサルが全国の事例からヒントを提示し政策メニューを拡充できます。「事業計画のアイデアとなる要素をいくつも提示してくれる」のは生成AIも含めたツールの得意分野ですが[106]、従来は人間コンサルタントがその役割を担ってきました。成功事例では、ある市でコンサルが提示した先進事例をヒントに新たな重点プロジェクトを立ち上げ実現した、というケースがあります。一方失敗例は、コンサルがテンプレ施策ばかり羅列して地域にフィットしないメニューを提案し、計画が絵空事になったケースです。「どこにでもある計画」になってしまっては住民にも響かず、計画そのものの評価を下げてしまいます。この点は発注者がコンサル選定時に地域理解の深さや提案の独自性を見極める必要があります。 政治的調整・利害調整の難しさへの対応:例えば庁内で部門間に軋轢がある場合、コンサルが間に入って双方の意見を整理し妥協案を提示することがあります。また首長の公約が非現実的で計画に載せにくい時、コンサルがデータを用いて慎重表現を提案し、現実路線との折衷を図ることもあります。住民合意形成では、外部専門家の言葉として提案すると住民側も納得しやすい場面があります(「◯◯先生もおっしゃる通り…」といった形で)。これらにより、政治的に微妙な問題もスムーズに計画へ盛り込めるケースが成功事例です。例えばある市で、議会与野党が対立していた開発計画について、コンサルが実現可能性データを提示し中間案を計画に記載、双方が合意したというエピソードがあります。逆に失敗事例は、コンサルが政治的文脈を読み違えた提案をして火種を生んだケースです。例えば市民が敏感な施設統廃合問題を安易に書き込んでしまい反発を招いた等、政治勘も問われる点でコンサル側も慎重さが必要です。
住民合意形成の難しさの緩和:住民参加は重要ですが、直接対話では感情的対立も起こり得ます。コンサルがファシリテートすることで、行政への不満も一旦外部にぶつけさせ、行政側はクッションを得ることができます。さらに、グラフィックレコーディング等で議論を見える化し、住民同士が対話しやすい場を演出することも可能です[47]。成功例として、ある自治体でコンサルが丹念に対話を重ね反対意見の多かった公共施設再編に一定の理解を得る計画を作り上げたケースがあります。住民代表も策定過程に参加したことで「自分たちで作った計画」と感じ、後の実施段階で協力的になったといいます。一方、失敗は参加プロセスが形骸化し住民の声が反映されなかったと批判された場合です。例えばワークショップを開いたものの結局計画内容が行政案そのままだと、「市民参加はアリバイだった」と不信を招きます。この辺りはコンサルにも限界があり、最終的には行政の姿勢に関わる問題ですが、コンサルとしては参加記録を丁寧に公表するなど透明性確保でサポートすることが求められます。 成功例として、ある自治体でコンサルが丹念に対話を重ね反対意見の多かった公共施設再編に一定の理解を得る計画を作り上げたケースがあります。
なるほどね〜〜 これはめっちゃバリュー出してるblu3mo.icon
「金を払えば面倒ごとが解決する」装置やなtkgshn.icon
計画の継続性と評価対応:計画策定後もコンサルが関与し、行政評価や次期計画策定に連続して携わることで、計画の実行度を高める役割もあります。いわば伴走支援で、計画書を作って終わりにしないところに価値があります。例えば大阪府のある市では、総合計画策定を請け負ったコンサルがその後の進行管理委員会にも参画しKPI評価を支援、計画推進に責任を持ったという例があります。こうした場合、首長や職員から非常に信頼され「〇〇さん(コンサル)の言う通りやろう」という関係になっていることも。逆に失敗例では、計画策定では派手な提案をしたが後フォローがなく、計画が絵に描いた餅で終わったというケースです。コンサルも契約が切れれば関与しないことが多いですが、本来は評価や次期策定で検証されて初めて「成功」と言えます。この点、MURCの自治体経営調査でも「評価指標の設定や評価後の改善が課題」と挙がっているように[76]、計画を実効あるものにするプロセス支援が今後の鍵となります。 全体として、コンサルティング事業の成功は、自治体が**「自力では難しかった策定を質高く時間内にできた」「計画内容に納得感があり実行段階でも活きている」**と感じられるかにかかっています。成功事例は往々にして目立ちませんが、計画策定が平穏無事に終わりスムーズに施策展開できている自治体の陰には、大抵コンサルの貢献があります。一方、失敗事例はメディアで取り上げられることがあります。例えば過去には「自治体総合計画の文章が他市と酷似(実は同じコンサルが類似文章を流用)」と指摘され問題になったケースや、コンサル提案の将来人口見通しが過大で計画達成が困難になった例などがあります(具体名は伏せますが、ネット上でも話題になりました)。こうした失敗は、コンサル側の品質管理や倫理の問題もありますが、発注者側のチェック不足でもあります。現在ではプロポーザル時に提案書のオリジナリティや実現可能性を厳しく見るなど、防止策も取られています。
具体名は伏せますが、ネット上でも話題になりました
具体名ふせんなよblu3mo.icon*3
最後に実例としてユニークな成功例を挙げます。高浜市のAI活用総合計画はコンサル(日立コンサルティング)主導の新手法でしたが、これは市長の強力なリーダーシップと、コンサル側の技術力・提案力が結実した例です[84]。AIシミュレーションという難解な手法を職員や市民に理解させ、計画に活かすという離れ業をやってのけた背景には、信頼関係と粘り強い説明があったと推察されます。こうした挑戦型プロジェクトはリスクもありますが、成功すれば自治体の知名度や政策力を高め、コンサルにとっても高い評価につながります。 これは内部のリサーチャーが1人知り合いblu3mo.icon
/icons/hr.icon
この下は一般論すぎるので読み飛ばしたblu3mo.icon*2
3. 総合計画策定×AI技術:活用可能性と参入機会
3.1 総合計画プロセスにおけるAI活用が見込まれる領域
近年のAI(人工知能)技術の飛躍的発展は、自治体の計画策定業務にも新たな可能性をもたらしています。自然言語処理(NLP)技術や生成AI(Generative AI)、対話型AI、データ分析AIなどを活用することで、総合計画策定の各プロセスにおいて効率化・高度化が期待できます。具体的に参入可能と思われるプロセスとAI活用ニーズを整理します。
ニーズ調査・情報収集:AIは大量のテキストやデータを高速に分類・要約できるため、市民アンケートの自由記述回答やパブリックコメント膨大な意見を分析するのに有効です。従来、人手で読んで集計していた市民意見を、NLP技術でトピック分析し主要な意見群を抽出・可視化することができます。例えば数百件の自由記述をAIでクラスタリングし、「防災に関する不安が多い」「子育て支援充実を求める声が突出」といった傾向を見える化できれば、職員は効率的に民意を把握できます。また、自治体が参照する各種統計資料・他自治体の計画書・国の白書など膨大な資料をAIが要約してくれると、情報収集に費やす時間が大幅短縮されます[109]。既に**「大量の資料を要約」**し政策立案のヒントを得る使い方は生成AIの得意とするところです[106]。さらに、音声認識AIでワークショップの録音を自動文字起こし→要旨抽出することも可能で、議事録作成の手間が省けます[110]。 計画書作成支援(文書生成・校正):生成AI(例:GPT系モデル)は、人間の指示に基づき相応のテキストを生成する能力があります。これを使えば、例えば総合計画の素案文章をAIに下書きさせ、人間が校正するという形で執筆作業を効率化できます。事実関係のチェックや行政特有の表現調整は必要ですが、AIは過去の計画書や統計データを学習させれば、それらしい文案を作ることが可能です。「2040年を展望した将来都市像を800字で述べよ」等のプロンプトで試行し、人間が修正していく方法です。このようなAI文案生成は始まったばかりですが、文章の誤字訂正・リライトはすでにAIが得意とするところで[106]、職員が書いたドラフトを読みやすく整える文章校正モードのAI活用も想定できます[111]。実際、公務員専用AIエージェント「マサルくん」には文章校正や推敲機能が搭載されており、公的文書を改善する用途に使われ始めています[111][112]。これを計画書にも適用すれば、文体統一や表現ブラッシュアップに役立つでしょう。また条例や方針文書のドラフトもAIが作成できる時代になっており[113][114]、総合計画の一部(例えば基本構想の理念部分等)をAI提案から発想を得ることも考えられます。ただし計画の根幹をAI任せにするのはリスクも大きく、信頼できる文章かを見極める人間スキルが欠かせません[115]。この点は後述の課題でも触れますが、「AIが素早く叩き台を作り、人間が最終決裁する」という役割分担が望ましいと言えます[116]。 ワークショップ設計・対話支援:対話型AI(Chatbot)は、市民とのコミュニケーションにも応用できます。例えば、計画策定時に市民からアイデアを募るチャットボットを設置し、市民が自由に「こんな街にしたい」と打ち込むとAIが要約・分類して担当者にフィードバックする、といった使い方です。また、住民説明会の質疑応答でAIを用意し、その場で出た質問に対し関連資料からAIが回答案を提示、ファシリテーターがそれを参考に答えるといったリアルタイム支援も考えられます。さらに将来的には、AIアシスタントが職員に代わって住民ワークショップのファシリテート補助をすることもあり得ます。例えばホログラムや音声合成を用いて、AIが中立的ナビゲーターとして議論のプロンプトを出す、といった実験的な試みも技術的には可能です(現時点では実例はありませんが、Zoom会議などでAIが議論のまとめ役になる研究はあります)。またシミュレーションAIを活用し市民参加型の未来予測ゲームを行う、というアプローチもあります。高浜市の例では職員向けでしたが、今後市民ワークショップでもAIシミュレーション結果を示し「このままだと人口がこれだけ減ります」と共有した上で議論するなど、説得力のある合意形成ツールとなりえます[85][86]。AIは人間の主観に左右されないため、感情論ではなくデータに基づく議論を促進する効果も期待できます。 政策シミュレーション・データ分析:前述のように、AIを使った将来シミュレーションは高度ではありますが非常に有用です。広井良典教授・日立京大ラボの取り組んだ高浜市2050年シミュレーションはその端緒で、今後他の自治体にも横展開される可能性があります[84]。AIが数万ものシナリオから未来を描き、その中で望ましい未来に至る経路と要因を解析できれば、計画の戦略性が飛躍的に増します。例えば「人口減少に歯止めをかけるにはどの政策の組み合わせが有効か」をAIに探索させ、導き出した答えを計画の重点戦略に据えるといったことです。さらには、マルチエージェントAIで仮想の市民や企業を設定し、政策介入による経済・社会への影響をシミュレートする技術も研究されています。国の政策提言AI事例として、内閣府が地方創生関連で未来シナリオ分析を行った例もあります[117]。そこでは次期総合計画・総合戦略の改定に向け、AIで未来シナリオや移行要因分析を実施し将来構想検討の基礎資料にしたとの報告があります[117]。このように、高度なデータ分析AIを計画策定段階で使うことで、よりエビデンスに基づく計画立案が可能になります。AIは人間には難しい膨大な組合せ計算や非線形な因果推論をこなせるため、計画に科学的裏付けを与える強力なツールとなります。 合議制文章のとりまとめ:総合計画は多数の関係者の意見を集約した文書です。AIによる文書比較・一貫性チェックなども参入余地でしょう。例えば各部局がドラフトした施策を書き連ねると、表現ぶりや整合性にばらつきが出ます。これをAIがチェックし、「この部分は重複している」「目標値の単位を統一せよ」等の指摘を自動で出すことができます[111]。また複数案がある時に良いとこ取りの統合案をAIが作成することも理論上は可能です。さらに表記ゆれや用語統一もNLPでサポートできます。総合計画は長大なドキュメントゆえに、人間の目では見落とす不統一がありがちですが、AI校正で品質を担保できます。このようにAIは計画書という「文章の塊」の扱いに有用であり、エディターツールとしての参入が見込めます。 以上のように、AIが入り得るプロセスは策定業務のほぼ全域と言っても過言ではありません。特に「データ量が多く、人手では時間がかかる」「文章のパターン化が可能」「客観分析が求められる」領域で威力を発揮しそうです。現在も行政文書特化型AIが全国600以上の自治体で導入進んでおり[118]、議会答弁案や条例案作成、広報文書作成等で使われ始めています[111][114]。総合計画もその一環として、AI活用が十分考えられます。 3.2 既存事業者の技術活用状況とAI活用による差別化機会
現状、総合計画コンサルティングの既存プレイヤー(前述のシンクタンク・コンサル企業)のAI活用度合いはまだ限定的です。例えば、大手シンクタンクでは自治体DX支援としてAIチャットボット導入やRPA導入支援は行っていますが、総合計画そのものにAIを組み込んだサービス提供は端緒についたばかりです。先進例として日立コンサルティングが高浜市でAIシミュレーションを実施したことは前述しましたが、これはかなりユニークなケースでした[84]。他の多くの案件では、依然コンサルタントが人力で分析・文章作成しているのが実情です。ただ、水面下では各社AIツールを試行し始めています。MURCの報告でも「生成AIを行政内部業務に既に導入している自治体は2割弱で、活用検討中は多い」とあり[119]、コンサル企業側も行政向け提案でAIに触れる機会が増えています。例えばあるシンクタンクは計画策定支援提案の中で、「将来的にGPT系AIを資料作成補助に使う」旨を盛り込み、自治体担当者に驚かれたという話もあります(非公開事例ですが業界内で共有されています)。とはいえ2025年現在、「AI活用」を前面に出して総合計画支援を標榜する会社はまだほとんどありません。差別化ポイントとしては未開拓であり、新規参入者にはチャンスとも言えます。 既存コンサルがAI活用に慎重な理由はいくつか考えられます。第一に情報漏洩や精度への懸念です。計画策定では未公開の施策案など扱うため、AIにうっかり入力して外部に漏れるリスクや、誤った文章生成でチェック漏れがあると計画の信頼性に関わります[120]。また、コンサル業は人的付加価値が売り物であり、「AIで自動化できます」と言いすぎると自らのビジネスを狭めかねません。しかしながら、いずれ競合がAIを使って高速・低コストで提案してくれば無視できなくなります。差別化の機会として、新規も含めコンサル事業者は以下の戦略が考えられます。 AI活用を前提とした低コスト・短納期サービス:従来、計画策定には1年以上と多額の費用がかかりました。AIで効率化すれば、「3か月でドラフト作成」「コスト半減」といったウリが出せる可能性があります。特に小規模自治体向けに、AIで素早く計画骨子を生成し、それをもとに簡易な計画を策定するサービスなどは差別化につながるでしょう。例えばAIエージェントで総合計画の叩き台を自動作成し、人手は最小限のブラッシュアップのみ、という提案です。このようなスピード・安さ重視の領域で、新規プレイヤーが台頭する余地があります。
AI×専門家チームで高度分析サービス:逆に高価格でも高度な分析を提供する差別化もあります。AIシミュレーションや、SNSから地域課題をテキストマイニングする等、まだ誰もやっていないデータサイエンス型計画策定を売りにできます。既存大手もこの方向は模索していますが、社内にデータサイエンティストを抱える会社は限られます。そこでIT系企業や大学研究者とのコラボで「AI政策ラボ」を作り、総合計画に科学的アプローチを導入するビジネスは差別化可能です。例えばAIスタートアップと組んで、自治体オープンデータや議会記録等を学習させたカスタムAIを使い、その自治体固有の課題発見を自動化する、といった提案は新規性があります[121]。実際、前述の**「マサルくん」AI**は自治体ごとに総合計画や議事録等を学習させ精度を上げる法人向けサービスを展開しており[121]、こうした仕組みを計画策定にも応用できるでしょう。 生成AIでアウトプット品質向上:AIは人間では思いつかない言い回しや多彩な表現を生みます。これを利用し、より魅力的な計画書表現を作る差別化もあり得ます。例えば計画の愛称やキャッチコピーをAIに多数考案させ、一番良いものを採用する。あるいは計画章末のエッセイ風解説をAIで生成するなど、クリエイティブ面での活用です。自治体の計画はお堅い文章になりがちですが、AIで柔らかい言い回しも提案させれば、市民に読みやすいプランに仕上げられるかもしれません(もちろん監修は必要ですが)。文章が伝わりやすいか評価するAIの活用も指摘されています[106]。これらにより住民へのアピール力が高い計画を作れるとなれば差別化ポイントです。 計画策定後のAI活用提案:差別化は策定プロセスだけでなく、策定した計画の運用にも広がります。例えば、完成した総合計画をAIに読み込ませ、市民向けに「計画Q&Aチャットボット」を提供するサービスです。市民が「〇〇市の将来像は?」と聞けばAIが計画から回答する、といったものです。既存ではなかなか聞けない計画内容もAIなら手軽にアクセスでき、計画の見える化・普及に役立ちます。このような運用提案までできるコンサルはまだいないので、踏み込めば差別化できます。事実、「LobbyAI」というサービスは自治体の公開計画を自動要約し企業向けに提供するなど、AIで計画を“読まずに読める”ようにする試みも出ています[122]。コンサル側も自治体に対し「せっかくの計画をAI検索できるようにし、市民や職員に活用してもらいましょう」と提案すれば、新しい付加価値を生めます。 現状、既存事業者のAI活用は緒についたばかりなので、新規参入プレイヤーが**「AI×計画策定」の旗を鮮明に掲げれば注目**を集めるでしょう。もっとも自治体側がそれを受け入れる土壌があるかは別問題です。次節では自治体のAIリテラシーや導入障壁について述べます。
3.3 自治体のAIリテラシー・導入障壁と克服策
AI活用を推進する上で、自治体側のリテラシーや心理的ハードルにも目を向ける必要があります。総合計画策定へのAI導入に際し、自治体には以下のような懸念や障壁があると考えられます。
AIに対する信頼性・倫理面の不安:自治体業務で生成AIを使うことに対し、「誤った内容を出力したらどうするか」「住民に提供する文書の信頼性が損なわれないか」という強い懸念があります[120]。とりわけ総合計画のように自治体の根幹を左右する文書にAIが介入することには、「AIが中心に介在していないか」という倫理的問いが投げかけられています[115]。万一、議会や住民に「これAIが書いたんでしょ?」と見抜かれた場合、行政への信頼低下につながるのではとの危惧があります[115]。実際、「巧妙に作られた計画書がAI生成だと見抜ける職員がどれだけいるか」「それを住民が発見したらどうなるか」といった指摘もあり[115]、AI利用を隠すことのリスクとオープンにすることのリスクの板挟みです。自治体は組織としての信用を重んじるため、新技術導入には慎重にならざるを得ません。 AIリテラシーの不足:ネットリテラシーならぬ生成AIリテラシーが職員側に未成熟です[123]。AIの使い方や限界を理解し、うまく活用するスキルを持つ職員はごく一部です。むしろ情報システム部門以外ではChatGPTすら試したことがない職員も多いでしょう。自治体内でAIに詳しい人がいないと、導入しようにも何をどうさせるかイメージできず、話が進みません。また、AIの出力結果を検証・監査する体制もありません[115]。例えばAIが出した計画文案をチェックするスキル・権限を持つ人がいなければ、上長は承認に困ります[115]。現在は「職員個人が勝手に外部ChatGPTで文章を生成→そのまま公文書案にしてしまう」ことなどを恐れ利用を禁止する自治体もあるほどで(実際、県レベルでもChatGPT利用禁止通知が一時期出たりしました[124])、リテラシー向上と組織的統制ルール策定が急務です[125]。 情報セキュリティ・守秘の問題:総合計画策定中には未発表の政策や内部資料が扱われます。これを外部のAIクラウドに入力することへの抵抗は大きいです。実際、機密情報を誤ってChatGPTに入力してしまった例は民間企業でも問題になりました。自治体は個人情報や機密保持に非常に神経質であり、**「生成AIの利用ガイドライン」**を策定する自治体も増えています[124]。多くは「個人情報や機密は入力しない」など禁止事項が書かれており、総合計画案のドラフト段階では内容自体が公表前ですから、基本的に外部AIへの投入はNGということになりかねません[126]。このため、オンプレミス型(自治体内部サーバ型)AI環境の用意や、学習データ・生成結果の取扱いに関する厳格な契約が必要になるでしょう。そうした整備が進まないうちは、安易にクラウドAIを使えず導入が遅れる要因となります。 組織風土・人員への影響:AI導入は「人減らし」とセットで語られることも多く、職員労組などが敏感になる可能性があります。現に「AIは職員の負担軽減になり得るが、同時に人員削減につながるかもしれない」との指摘があります[127]。計画策定業務にAIを使うことで、例えばコンサル委託費が減るのは良いとして、ひょっとすると「職員の企画力が不要になる」と見做され人件費抑制圧力につながるかも、と不安視する向きもあるでしょう。また、自治体は前例踏襲を好む組織文化があり、新しい手法を導入するには上層部の理解と決断が欠かせません。AIについて理解の浅い首長・部長がトップだと、導入に二の足を踏むことになります。 これらの障壁をどう乗り越えるかが、AIの参入におけるカギです。考えられる克服策・促進策をいくつか挙げます。
実証実験と成功事例の共有:自治体は横並び意識が強く、他がうまくいけば追随しやすいです。まずは数自治体でパイロット的にAI活用策定を行い、成功事例として発信することが重要です。「○○市ではAIが要約した住民意見を用いて計画を策定、住民からも分かりやすいと好評だった」等の実績が出れば、他自治体も安心して検討できます。国の補助事業などでこうした実証を支援すると効果的です。また先行自治体の担当者同士が情報交換する場(勉強会やセミナー)を設け、具体的メリット・課題を共有することもリテラシー向上につながります。「大量の資料要約にAIを使ったら職員○百時間の節約になった」等の数字を示せれば説得力があります[108]。 ガイドライン策定と職員研修:多くの自治体で生成AI利用ガイドラインが作られ始めています[124]。これをブラッシュアップし、「何を目的にどう使うか」「してはいけないこと」「チェック体制」等を明確に定めることが必要です[123]。総合計画のような重要文書の場合、例えば「AI生成案を用いる場合は必ず複数職員で内容検証し、AI使用を文書に明記する」「最終責任は担当課長が負う」といったルール設定が考えられます[128][116]。同時に、職員への研修でAIの仕組み・注意点を教育し、リテラシーを底上げします[123]。民間の生成AI講座やオンライン教材などを活用して、自ら試してみる機会を増やすことが大切です。リテラシーの高い職員が増えれば、むやみに禁止するのではなく**「積極的に使いこなす」**発想に転換できるでしょう[123]。 セキュアな環境整備:自治体専用AI環境(国内クラウドやオンプレミス)を提供し、機密データでも安心して使える場を用意することが必須です[126]。現在、「行政専用AIマサルくん」のように全国の自治体職員が安心して使えるGPTシステムも登場しています[129][130]。2023年時点で626自治体が導入登録し、月27万回以上利用されているという報告もあり[129][130]、こうした信頼できるプラットフォームを活用するのが良いでしょう。総合計画もそれらに学習させて庁内限定でAI活用すれば、情報漏洩の心配は減ります[121]。マサルくんPRO版では自治体ごとの公開情報を取り込んで精度向上させる試みも行われており[121]、今後は総合計画ドラフトの社内利用なども可能になるかもしれません。 人間とAIの役割分担の明確化:AI活用によるメリットは享受しつつ、最終判断・責任は人間が持つという原則を貫くことが重要です[116]。AIが素晴らしい文章を出しても「自分の言葉でないと思えば採用しない」勇気や、逆に拙い叩き台でも人間が磨いて完成させる姿勢が求められます[116]。つまり**「AIは補助、決定権は自分」**というマインドセットです[116]。これを組織的にも共有し、AI生成文でも必ず職員が納得し修正してから公表する、AIを使用した事自体も必要に応じ公開し透明性を確保する、といった運用を定めます[128][131]。そうすることで倫理的懸念も和らげ、「AIに全部任せているわけではない」という理解を住民にも与えられます。 国の支援・指針:最後に、総務省やデジタル庁といった国の関与も大きいです。現在もデジタル田園都市国家構想の一環で自治体DXやAI活用は推進されています[52]。国がモデル事業として総合計画策定AI活用プロジェクトを立ち上げ、成功パターン・注意点をナビゲーションガイド化することが有用でしょう。実際2023年に閣議決定されたガイドでは「計画策定手続き見直し」「国が計画形式を定めない」等が盛り込まれました[52]。ここに「先端技術活用も検討すべき」といった方向性が示されれば、自治体も安心して取り組めます。加えて補助金(例えばAI活用による効率化で浮いた人件費分を地方交付税措置する等)で後押しするのも効果的です。 総じて、自治体におけるAI導入のカギは**「正しく怖がり、正しく使う」ことです。懸念ばかりでは前に進みませんし、かといって無防備な利用は危険です[132]。適切なガバナンスの下でAIを内部業務の準備・整理段階で役立てるのが現時点では妥当との見解もあります[133]。例えば文書下書きや資料要約といった内部補助**ならリスクは比較的低く、効果は大きいです[134]。この範囲から始め、リテラシーが上がったら徐々に対外業務にも広げる段階的アプローチが推奨されています[133]。実際、「生成AI活用は不可避なので、規制ではなく成長のためにどう使うか焦点を当てよ」との指摘があり[132]、今後は前向きにリスクと付き合いながら活用を模索するムードにシフトすると考えられます。 以上、AI技術の総合計画策定プロセスへの参入可能性について述べました。まとめれば、AIは情報処理力と生成力で計画策定の効率と質を飛躍させる可能性を持ちます。しかし自治体組織に受け入れられて初めて実装可能であり、そのためにはリテラシー向上・ルール整備・パイロット実績が欠かせません。既存の総合計画コンサル事業者にとってもAIは脅威であると同時に武器になり得る両刃の剣です。新規参入者がAI活用で頭角を現す可能性も十分あります。最終的には、人間の知恵とAIの力を組み合わせることで、より持続可能で実効性ある総合計画を素早く作り、絶えずアップデートしていくという方向に進むのではないでしょうか。自治体行政が直面する人口減少・財政制約という厳しい環境下、限られた人員で高い成果を出すためにはAI活用は避けて通れません[132]。総合計画策定という伝統的分野にもその波は押し寄せており、本報告で述べた視点が今後の計画策定改革の一助となれば幸いです。 参考文献・資料出典(一部):
地方自治法改正後の総合計画策定に関する解説(コラバド)[135][54] 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「自治体経営改革に関する実態調査報告」(2024)[19][47][31] 市町村アカデミー等資料「基礎的自治体の総合計画実態調査」(2016)[18][20] 行政専用AIサービス「マサルくん」紹介サイト(日本DX地域創生応援団)[129][121]