欠けたものの力
人は無限なるものに心を引かれる。限界や上限や有限性は、劣ったもの・足りないものとして扱われる。無いものを求める心理や、プラトン・トラップ、あるいは自我の出発点において発生する傷のせいかもしれない。
無限は人の心を引きつけるが、反面行動は促さない。大きすぎる画面が、最初の一筆をためらわせるように、無限の扉が選択を拒絶するように、まだ書かれていない万能の物語が原稿を拒むように、無限の可能性は行為を妨げる。欠けたものは、その逆だ。有限性は、行為を促す。限られているからこそ、取りかかることができる。上限や終わりがなければ、認知にとっては耐え難い重みとなってしまう。
欠けたものを受け入れること。それは実は全体を信じることとイコールでもある。
#断片からの創造
初出:2017.Jan.11