「新反動主義」イントロダクション
イントロダクション
新反動主義とは?: 新反動主義者は、民主主義や、自然権論、ケインズ経済学、リアリズム法学、政府の公共的利害関心説 などの古典から現代までの進歩的左派の学説・政策を批判している。 そして同時に、君主制(絶対王政)などの過去の政体を、理論的な観点から再評価し、被治者にとってよりよい統治を提供するだろうと論じる。 新じゃない反動主義については (メンシウスも評価する) ウィーン体制などを参照。 メンシウスは民主主義の批判・君主制の擁護のため、政府と民間企業の組織構造の比較、組織の意思決定構造に伴うインセンティブの歪みの考察などをやっている。だから、政府の経済学 とか 政府の経営学 とでもいうような体を為している。
ネオカメラリズム: 政府組織の意思決定構造に伴うインセンティブの考察から、メンシウスは、政府を主権株式会社にするという、ネオカメラリズム(主権株式会社)のアイデアを提唱する。 絶対王政と主権株式会社、いずれにおいても政府は私的に所有される。
問題意識: 元々リバタリアンである彼の議論の多くは、「政府の事業や介入、人員が時代を経て(19世紀と21世紀とを比べたら)、どんどん拡大してきたのはなぜか?(いわゆる"政治的進歩"と呼ばれる現象) 」「どうすれば直せるか?」――これは大雑把に言って、リバタリアニズム あるいは 小さな政府論 の問題意識だ――という問いに答えるためにあるようだ。 フォーマリズム: 彼は、現在の政治権力の問題点を、政治権力が「(理想的な)所有権ではないこと」だと考え、政治権力の所有権化を提案していると思われる。政治権力の所有権化という考えは、彼が提唱するフォーマリズムの政治哲学に基づくものだ。個人的にはこのフォーマリズムが彼のアイデアの中で一番興味深かった。
政治権力っぽいものを所有権化すれば、法、治安維持、公共サービス、統治みたいな自由市場で供給できなそうなものも自由市場で供給できるよねって発想がある (自由市場と言っていいかはともかく)。
新ホッブズ主義?: メンシウスのフォーマリズム理論は、ホッブズ の国家理論を、政府内部の闘争 (権力闘争) などにまで包括するように一般化したものとも思える (それだけでなく、メンシウスの淡白な理論的・実用主義的傾向と、対照的な絶対君主への評価からは、全体的にホッブズを連想する)。
自由、治安、科学: 彼の現代民主主義への批判では、政府の大きさや(パレート)効率性、個人の自由の侵害、治安といった狭義の政治哲学上の評価基準に関わるものだけでなく、(彼が考えるところの)嘘や誤りが拡散するインセンティブ構造、科学知識への悪影響といったような、知識や真理という評価基準での批判もとても重視される。