自発的な契約に基づくパターナリズムの案
2018/10/13作成記事
自分で誓約して(「禁酒する」「朝、散歩に行く」とか)、破ったときには予め契約した人に罰してもらう。
目覚まし時計みたいなパターナリズム機構。(罰は罰金はちょっと微妙か?)〔追記: お金がなくなってもそれで困る事自体が未来に発生するから、先延ばしが食い止められない可能性があるね。まあお金がなくなると現在にも悲しい感情が発生するから十分な気もするけど。〕 民営化されたパターナリズム。
(追記2024/07/16:
Richard Hananiaが同じこと言ってる。
私がいつも信じているのは、減量や禁煙など、あなたが達成したいことをしなければ、企業や他の誰かがあなたを殺す法的権利を持つ契約を結ぶことができるべきだということだ。もしそのような契約が合法的で強制力があれば、友人や家族のために有効であることを人々が知るようになり、すべての社会的病理が解決されるかもしれない。しかし、人々が契約の自由の利点を深刻に過小評価しているため、このようなことは明らかにできない。私がリバタリアンであるのは、良いものを手に入れ、人類の多くの問題を解決できると信じているからだ。しかし、そのためには、すべての人を救えるとか、あらゆる潜在的な被害を防げるという妄想を捨てる必要がある。
リバタリアン以外の哲学はほとんどすべて、最も無責任な人間を守るために自由を制限し、究極的にはすべての人の生活を悪化させる必要があるという信念に基づいている。だから、「痩せなければ撃つ」という契約は結べないのだ。罰則は殺す必要はなく、足を折るとか、公衆の面前で恥をかかせるとかで十分だろう。人生の他のあらゆる分野でそうであるように、市場はさまざまな考慮事項のバランスをとるための最良の取り決めを見つけるだろう。
人が意思の弱さに打ち勝つには、自由を制限する以外にも、逆に幇助殺人の自由を認めるという方法もある!
契約の自由が未来の自分の自由を制限すること (殺されるかどうかを未来の自分は選べなくする) である以上、これは不思議なことではないけれど。
「痩せなければ自分の恥ずかしい話を公開する」とSNSで宣言するのはできるし、じっさいにそういうことをやっている人も見たことがある。ただし、それをするためには SNSというそれ自体中毒性のあるものに接続しなければならない。
さらにパターナリズムについて考えたこと:
国家は全国民に札を配り、札を持っている人だけギャンブルできるというふうにすればいいのでは?
もし自分の意志の弱さを理由にギャンブルをやめたいと思うのであれば、その札を捨てればいい。
これに違反しているギャンブル運営者を検知するのはかんたんでしょう。つまり、じっさいに札なしで入れるかおとり捜査すればいい。
麻薬は転売できるのでこの方法がうまく応用できないのが残念だけれど。中で吸えるけどお持ち帰りNG、とでもすればいいかも。
これは上の企業が国家になった以外は同じ。罰を与える主体は企業でも国家でもいい。
)
民間企業には、特に顧客の長期的利益だけを優先するインセンティブは無いが、こういったことも商売として成立しないわけではないだろう。手数料は取れるし。
よりニュートラルなパターナリズム、意志の弱さの克服、を実現することを目指す。
貯蓄のため、銀行と契約して、一定時間のあいだ一部のお金を持ち主にも取り出せない状態にしておく、とかもあるか(一年単位で少しずつ取れるようにする、もしくは老後までとっとくとか)?〔追記: 個人年金にもそのような機能がありそう〕
目覚まし時計は自分に対する強制力としての自由を提供可能
(追記2024-7-16: 以下の話はあやしい。)
一般には民間企業に顧客の長期的利益を優先するインセンティブは無いが、後払い、長期契約、自己奴隷化契約(*1)などの場合にはそのようなインセンティブを持つことになるだろう〔追記2024/7/16: 借金とかなら返せるように導いてやるインセンティブはあるけど、後払い程度では払えなくなるわけではないのであんま意味ない気がする。さらに金銭面の利益以外に考慮するインセンティブがない〕
(*1 何かが自分の物になれば、それに対する行動の結果も、自分の責任になるから(つまり意志の弱さから生じる外部性っぽいものが、内部化され、そいつの短期的な利益関心を誘惑して搾取しても、汚染者負担になる?))
(厳密には外部性ではないだろうが、ちゃんとした条件が成り立った市場取引無しで損失が発生している)
"I do believe that people with IQ 120+ tend to forget about their conjugates with IQ 80- when it comes to estimating the real-world effects of policy"
If there is anyone who would rather have $100 worth of free services than $100, he’s a retard.
意志の弱さの普遍的な存在は国家干渉の必要性ではなく自己奴隷化契約の有用性を示す可能性もあるという謎回答思いついた (追記: これはヤーヴィンの上の記事の内容)
いや奴隷である必要は無いけど
(ヒースの記事はすごいタイトルだが、特に関係はない)
森村が援用しているパーフィット流の還元主義的な人格同一性論に基づくならば、自己の法的人格を他者に譲渡する「自己奴隷化契約」は、人格的同一性が失われた後の将来の自分(=他者)の基本権行使可能性を不可逆的に奪うものである。したがってそれが禁止されるのは、同じ主体の福利を根拠とするパターナリズムとしてではなく、異なった主体についての危害原理の問題としてである。つまり、心理的な同一化ができないほどに遠い将来(または過去)の自分は人格の連続性(パーフィットの言葉を用いればR関係)が途切れている以上、端的に他者なのである。したがって、人格の連続性が途切れた後の自分への危害は、もはや自分ではなく他者への危害として禁止される。http://tkira26.hateblo.jp/entry/2015/12/09/045957 "森村進「還元主義的人格観とリバタリアニズム――吉良貴之会員への応答」への応答" 逆の回答だ
還元的人格観を前提にすることで、個人内(intrapersonal)での時点間囚人のジレンマ、つまり自然状態が予想されるから(cf. 誘惑される意志)、ゆえに自己奴隷化契約によって、(民間の)リヴァイアサンに服するべきという逆の議論はできないか (といっても、未来の自分に対する害として自己奴隷化契約などを禁ずることも、自分についての意思決定の一部を法機関という別の管理者に譲渡することになるのである意味 政府による奴隷化であるから、民間リヴァイアサンと公的リヴァイアサンが入れ替わっただけとも言えるし、単純に逆だとも言えないかもしれないが。)
時点間囚人のジレンマ (= 意志の弱さ) を解決するためには、――人々の間の囚人のジレンマを解決するのに強制的な国家が有効なのと全く同様に――強制的なパターナリズムが有効である。 禁酒クラブなどの民間セクターによる解決を志向したい
問題は、自己奴隷化契約時の主体が、長期的利益に基づいて行う場合が多いのか、短期的利益に基づいて行う場合が多いのか、ということにある。マゾヒスティックな衝動に基づいて自己奴隷化契約するのでない限りは、前者なのではないか?
Joseph Heath & Joel Anderson "Procrastination and the Extended Will"
伊藤賀一氏がパターナリズムの説明 (たしか、スタディサプリの冬期講習だったと思う) で言っていたことだが (例証は彼が挙げたものをそのまま使った) : 主治医は患者の側から簡単にチェンジすることができない。
しかしたとえば通信講座の講師は生徒の側からチェンジすることが非常に容易(競争が働くため)。
その場合、合意なしで決まられた人が被る害が無いため、むしろやることをカチッと決める利益の方が大きい。
ゆえに逐一のコンセントなしに「あれをやれ、これをやれ」とパターナリズムするのはむしろメリットが大きい――
ということがあり、これはパターナリズム(というか強制や命令一般)についての意義深い考えだと思う
→
→これは、公共選択理論の言葉で言えば:
意思決定に関わらない人が被る外部費用を下げるのには、全員が参加し逐一の合意を取る、民主的方式 (外部コストを下げることに特化) が良い。
しかし、競争が働くことによって、意思決定に関わらないことで被る外部費用が既に低いか無い場合がある。
このような場合には、意思決定に複数の人が関わることで生じる指揮系統の混乱などの意思決定費用を下げることを可能にする、権威的方式 (意思決定コストを下げることに特化) が、むしろ有効である――
ということになるだろう。
(意志の弱さを認めたがらない人も多いと思われる、それは私は搾取できますよと公言するようなことだから)
ネットのフィルタリングも民営パターナリズム機構である。(i-フィルターは営利企業ではなくPTAが作っているが…)
〔追記2024/07/16: いくら民営でも親がパターナリズムするのはぜんぜん "自発的" とは言えない。実はこの点は私が考えを変えた部分だ。この記事を書いたときは自由より分権主義を重視していたから、親の権力を国家にくらべ問題視していなかった。〕
先行研究
本サービスは、自己管理を支援するためのサービスです。世間では様々な自己管理ツールが存在しますが、大半は、その気になれば自分自身で解除できてしまいます。そこで本サービスは、「生身の人間に見張られている」状態を作り出すことで、社会的な緊張感を生み出すことにいたしました。それは、弊社が試行錯誤する過程で、「人に見られているかもしれない」という緊張感が、自分を律するのに強い助けになることが分かったからです。これは例えば、自宅ではなくて、わざわざカフェに仕事や勉強をしにいくのと同じです。 https://www.jailer.jp/faq.html (そうか単なる監視でいいのか)
社名 株式会社デジタルデトックス
事業内容 デジタル生活矯正事業
企業が所有により他人の長期的インセンティブを配慮する可能性については:
神を信じているなら、神と契約するのも良いかも。
ジョージ・エインズリー『誘惑される意志』にも、そんな神の話があったっけ。